第6話 ゼイの視点
さて、ステータスの低い少女をS級冒険者にすることになったが、まずは基礎数値を上げることが目標だな。
彼女たちのステータスをおさらいしてみよう。
名前:フォナ・デインブルグ・ラッケンジー
職業:無職
LV:1
体力:13
腕力:1260
防御:2
知力:20
速さ:5
ゼイ:♡♡♡♡
名前:サラノア・アージュ
職業:無職
LV:1
体力:10
腕力:5
防御:5
知力:2550
速さ:2
ゼイ:♡♡♡
まずはDランク冒険者になる必要がある。職業が無職ではギルドに登録ができないからな。
モンスターを倒せばレベルが上がって全体の数値が上昇する。しかし、それでは基礎数値が変わらないから効率が悪いんだ。命の危険もあるしな。
だから、まずは基礎数値を上げて職業試験に合格するのが目標だ。
今は運動前のストレッチをやってもらっている。
2人が前屈みになる度に胸の谷間が俺の視界に飛び込んできた。
やれやれ。
随分と刺激的だ。
開脚の柔軟となると、ミニスカートの隙間から下着が見えそうになる。
見てられん。
俺は空を見上げていた。
そんな時。
ファナが崩れる。
「きゃああ。ダメだぁあ」
背中をくっつけてサラノアを持ち上げるストレッチ。
1回目はすんなりできていたのに、2回目でなぜか崩れた。
フォナとは子供の時からよく遊んでいたからな。体を動かすのが得意なのは知っている。
「お前、運動神経が悪くなったのか?」
と言うと、彼女は直ぐに立ち上がり、
「余裕よ」
と、サラノアを持ち上げて止まっていた。
その時、サラノアのスカートは捲れ上がり、下着は丸見え。
フォナの胸の谷間はパックリと開いて、今にも溢れ出しそうだった。
「……お、おう」
余裕かどうかは知らんが、目に毒だ。
今後、ストレッチは俺のいない所でやってもらおう。
さて、
「双方の希望職をもう一度、確認しておこうかな」
「
「私は剣士です」
ふむ。
そうなると、腕力の高いフォナは座学。
腕力の低いサラノアは基礎筋力作りだな。
あと、2人の体力数値も上げたいから、並行して走り込みもしようか。
「今後、ストレッチが終わり次第、各自には俺が立てたカリキュラムに沿って行動してもらう」
こうして、俺の教育係の仕事は始まった。
机には魔法関連の書物が積まれる。
その高さで彼女の顔は見えなくなっていた。
「え? これ全部覚えるの?」
「計算式もあるからな。基本からみっちりいこう」
「そうね! よぉし、がんばるぞ!」
1ページ目の1行目を読み始めると、彼女はゆっくり目を閉じた。
「ぐぼぉおおーー」
は?
「寝るな、起きろ!」
「ふが! スパゲッティ!」
「寝るのが早すぎる!」
「あれ、スパゲッティは?」
「夢まで見てたのか? 今は座学だよ」
「あ、そうだった! よしやるぞーー! ぶぼぉおおZ Z Z……」
「寝るなーー!」
「ふがッ! ビーフストロガノフ!」
やれやれだ。
これは時間がかかりそうだぞ。
やる気はあるんだが、いかんせん座学は苦手そうだな。
続いてサラノアの修行。
「お前は筋力をつける必要があるんだ。まずは腕立て伏せからだな」
「はい!」
慣れれば片手の腕立て伏せ、人差し指だけでやる指立て伏せ、なんかもいいかもしれん。
「ぎゃああ!」
「どうした?」
「指がぁああ。グニャッてなりまじだぁああ!」
「もう指立て伏せに挑戦したのか? それは早すぎるんだ。初めは腕立て伏せからで良いよ」
「いえ。普通の腕立て伏せをやろうとしただけなんです」
「それでどうして指を痛めるんだ」
「不思議ですね?」
「俺のセリフだよ」
「じゃあ、腕立てやってみますね」
「うん」
ボキ!
「ぎゃああ! 今度は腕がぁあああ!」
やれやれ。
極端に腕力がなさすぎて腕立てもままならんようだな。
「
「わは! ありがとうございます」
腕立て伏せで回復魔法を使ったのは初めてだな。
修行屋敷には修行道具がたくさん完備してあるから、それを使おう。
「よし。じゃあ、まずは5キロのダンベルから始めようか」
「はい」
「片手でこうやって動かすんだ」
「先生!」
「なんだ?」
「重くて持てません!」
「じゃあ、1個のダンベルを両手で持つしかないな」
「は、はい……。な、なんとか……、も、持てました」
やれやれ。
これは先が……。
「ぎゃああ! 今、ボキっていいましたぁあ!」
思いやられるな。
夕方。
2人はクタクタだった。
「あ、頭が痛いわ。でも目は冴えているのよね」
「十分寝てたからな」
「私は腕の骨を何回かやりました!」
「俺がいなかったら死んでいたかもな」
仕方ない、食事は俺が作ってやろうか。
2人は疲れて動けないだろうからな。
できるだけ、体力数値の上昇が高くなる料理にしようか。
夜。
テーブルには豪華な食事が並ぶ。
食材に関してはサラノアの家、アークザード商会が協力してくれて、なんでも揃う好条件だった。
俺はその食材を使って料理を作ったのである。
ファナは眉を上げた。
「ガーリックステーキ、鱒のパイ包み焼き、サラダ、コーンスープ……。これ全部、ゼイ君が作ったの?」
「ああ。冒険者をしていると野営をするからな。自ずと料理の腕が上がるんだ」
「パイ包み焼きなんて野営でできるの?」
「料理は工夫さ」
「すごいわね」
「ふはああ! ゼイ様の手料理が食べれるなんて! サラノアは幸せですぅ♡」
「ははは。じゃあ食べようか」
「はい♡」
「うん♡」
2人の食欲は凄かった。
「ハグモグモグ! んーーーー♡」
「ガツガツガツ! んーーーー♡」
えーーと。
「口に合うか?」
「「 おかわり! 」」
「お、おう」
「こんな美味しい料理を食べたのは初めてよ!」
「私もこんなにおいしい食事は初めてです! 一流シェフでもこの味付けはできませんよ!」
「ははは……大袈裟だな」
まぁ、気に入ってくれてるみたいでよかった。
食事の後は風呂に入る。
修行屋敷の風呂は大きい。
5人は余裕で入れる広さだ。
彼女たちに入ってもらった後、俺は1人で湯船に浸かる。
うむ。
「なんだかんだで快適だな」
無茶な仕事を引き受けたと思ったが、やってみると楽しいかもしれん。
扉の向こうからサラノアの声がする。
「ゼイ様よろしいでしょうか?」
「どうかしたのか?」
「入らせていただきます」
と、扉を開ける。
「おい!」
彼女はバスタオルを体に巻いていた。
「お背中を流しに参りました」
参るなよ。
「あのなぁ……」
「遠慮しないでください。料理まで作っていただいているのです。何かお礼をしませんと、バチが当たります」
「気にするな。お前には修行屋敷まで用意してもらっているんだ。十分だよ」
「しかし……」
「それに、これは俺の仕事なんだ。ギルドに登録して昇級してくれれば報酬が貰えることになっている。だから、本当に気にしなくていい」
「あ、ありがとうございます。わ、私は……。ゼイ様が教育係になってくれて本当に嬉しいです」
「そうか。そう言ってくれると俺もやり甲斐があるよ」
「えへへ……」
彼女は俺の上半身を凝視していた。
「……あの。そろそろ出たいのだが?」
「ジュルリ! あ! これは失礼しました!」
やれやれ。
彼女は気を遣いすぎる節があるな。
風呂の後は、今後の進め方を計画する。
俺は1人で机に向かっていた。
「カレンダーを作ろうか。計画進行表だ」
黙々と書き進める。
そんな時、
コンコン!
と、扉をノックする音。
「ゼイ君。ちょっといいかな?」
就寝服に着替えたフォナが顔を出す。
その服は薄手で、蝋録の灯りでうっすらと体のラインが見えていた。
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