第2話 俺のステータス

 俺はギルド長のマーマンに、自分のステータス画面を見せた。




名前:ゼイグランド・オルゼ

 

職業:魔法剣士


LV:133


体力:5340


腕力:13300


防御:250


知力:15600


速さ:5400




 マーマンは眉を寄せる。


「凄いな。腕力と知力が1万越えか。ギルドの平均数値は1000だからな。お前に敵う奴はいないだろう。まさか、冒険者を辞めてもこれほど高いステータスを維持しているとはな……流石だ」


「俺は合格か?」


「……防御力が低いな。これは意外だったぞ」


「攻撃が当たらなければいいだけさ」


「なるほど。高い殲滅力で敵を寄せ付けないわけか」


「攻撃は最大の防御だな」


「うむ。これほどの能力なら、教育係として申し分ない。合格だ」


「そうか。良かった」


 よし。

 これで職は見つかった。


 そういえば、彼女の力はどれくらいなのだろうか?

 俺に向けて放った短剣には、その羽先に反発魔法が加えられていた。俺の体に触れる瞬間に止まる仕組みだったんだ。つまり、彼女は俺が回避を失敗しても怪我をしないようにしてくれた。さりげなくしているが、相当な手だれなのは言うまでもない。


 一体どれほどの力なのだろうか?

 少し、見てやるか。


 鑑定。


 俺は鑑定スキルを持っている。

 この力を使えば、相手のステータスを見ることができる。

 しかし、



 *エラー。

 妨害魔法が発動しています。

 ステータスを表示できません。



 なるほど、さてはあの眼帯だな。よく見れば妨害魔法の魔法陣が描かれている。あれが鑑定スキルを弾くんだ。


 やれやれ。

 流石はギルド長になる者だな。短剣の反発魔法や眼帯の妨害魔法。さりげなくやっているが、明らかに上級者のやり口だ。

 そういえば、1階の酒場は以前より繁盛していたな。経営の腕もあるらしい。


「どうした? 私の顔に何かついているか?」


「……いや。別に」


「では早速、彼女たちを連れて来よう」


 マーマンがパチンと指を鳴らすと、彼女の部下が動いた。しばらくすると、1人の女の子がやって来た。


「わ、私はサラノア・アージュと申します!」


 ブルーサファイアのように輝く髪。丸く大きな瞳は優しさを感じさせる。白い肌に細い体。随分と可愛い子だな。それに、


ポヨヨン。


 大きな胸は視線に困る。


「ゼイグランデ様に教えていただけるなんて夢のようです!」


 おかしな言い回しだな。


「俺のことを知っているのか?」


「あ、いえ。その……。し、失礼しました」


 そう言って赤くなる。


 まぁ、よくはわからんが、


「様付けはやめてくれ。みんなからはゼイと呼ばれているんだ。気軽にそう呼んでくれていい」


「あ! ではゼイ様と呼ばせていただきますね!」


 やれやれ。


「随分と礼儀正しいんだな?」


「実家はアークザード商会を営んでおります」


「へぇ」


 アークザードといえば王家御用達の大手の何でも屋だな。アイテム、武具、なんでも揃う。つまり、彼女は金持ちの娘ってことだ。そんな子がどうして冒険者になりたいのだろう?


 彼女は真っ赤な顔で俺の方をチラチラと見ていた。そして「ふはぁ〜〜」と感嘆のため息をつく。


 まるで、俺に会いたかったみたいな空気だな。謎すぎる。


 そうこうしているうちに、2人目が来た。


「ゼイ君!? どうして君がここにいるの!?」


 事務所に来たのはフォナだった。彼女とは幼馴染なのだが、俺が16歳の成人の義を受けてから、中々会う機会がなくなっていた。

 彼女と会うのは4年振りになるだろうか……。


「久しぶりだな。フォナだってどうしてここに来たんだよ?」


「あ、あたしはS級冒険者になりたくてここに来たのよ」


「じゃあ、俺が教える子はお前か?」


「君が教育係なの!?」


 マーマンは眉を上げる。


「なんだ2人は知り合いなのか。なら話は早いが、ゼイが教育係では不満か?」


 フォナは全身を赤らめた。


「あ、いえ。不満ではないです。ただ、驚いてしまっただけです」


 それにしても、しばらく見ない内に随分と大人っぽくなったな。

 

 髪は黒に近い赤毛で、僅かな風でもサラサラと靡く。

 大きな瞳はガーネットのように輝いている。

 細くしなやかな体は、幼なさを感じさせながらも、確かな色気があった。


 かなりの美少女だな。

 王都でもこれほどの美貌の持ち主はいないだろう。

 まさか、あのフォナがこんなにも可愛くなるなんて意外だった。

 それに久しぶりに会うとなんだか照れ臭いな。


 どうやら、彼女も同じらしい。俺をマジマジと見つめて顔を赤らめる。


「背……。随分、伸びたね」


「お前だって、成長してるじゃないか」


 俺の視線は一点で止まった。


ポヨン。


 まったく、どこを見ているんだ俺は。

 小さい頃は一緒にお風呂に入ったりしたな。あの時はまな板だった。しかし、今は本当に大人になっている。


「2人が面識があるとは知らなかったな」


「俺とフォナは幼馴染なんだ。母は彼女の屋敷で従者をしていた」


「なるほどな」


 彼女の家は侯爵だった。一方、俺の家は貧民だ。

 しかし、そんな身分差を感じさせないくらい、俺たちは仲が良かった。

 フォナは大人しい性格で放っておけない妹みたいな感じなんだ。いつも俺にくっついて離れなかったな。ふふふ。


 それにしても、まさか、彼女が冒険者を希望するなんて思わなかった。

 危険な職種を選ぶなんて、何か理由があるのだろう。

 幼馴染の身としてはあまり喜ばしいことではないがな。


 とはいえ、俺は仕事を引き受けてしまった。事情はさておき教育しなければならない。


「まずは2人のステータスが見たい。成人の義は受けているんだろ?」


「はい」

「うん。あたしは1年前にね」


 王都の人間は16歳になると、神殿にて成人の義を受ける。そこでステータスを付与されるんだ。


 マーマンはニヤリと笑う。


「彼女たちは天才だからな。驚くぞ」


「へぇ。それは楽しみだ」


 鑑定!

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