さよりんの声
ある日の夜。部屋で寝てたら
「こんばんは~」
っていう声、聞こえてきた。
夢かな?って思って、そのまま寝ていたら、また
「こんばんは~!あやめっち」
って言ってる声、聞こえてきた。
なんか聞いたことある声だな~って思ってたけど
「うわっ!もしかして、さよりんの声?」
「そうだよ~!あやめっち~」
「えーーっ?さよりんなのー?」
「そうだよ~!」
「ほんとに、さよりん~?」
「ほんとだよーっ!」
うわっ!
めっちゃびっくりして飛び起きた!
「えーーーっ?さよりん、もしかして、今、本当は沖縄にいるのー?」
「えっと...そうだけど、今は、あやめっちのこと見えてるよーっ!」
「うわっ!すごいっ!本当にさよりんなんや!」
「あははは、しゃべれるようになれて、めっちゃ嬉しいよーっ!」
「いや、まさか、しゃべれるなんて...」
「あはははは...」
「いつも、夜になると抱きしめてくれてたの、あれ、さよりんなの?」
「そうだよ~!」
「えーっ?ほんとにーっ?」
「抱きしめてたの、わかってくれてて、めっちゃ嬉しかったよっ!」
「それは、わかってたよーっ!あと顔にキスしてくれてたのも、なんか、そんな感じしてた...」
「えへへへ、キスしてたのも、わかっちゃってたのね~」
「でも、しゃべれるようになるなんて、なんか、めっちゃすごいねっ!」
「そうでしょ!かなりの技術やから...」
「相当、練習したの?」
「そりゃそうだよーっ!急にはできないよっ」
「えーっ!でも、さよりんと話できて、めっちゃ嬉しい!」
「わたしもよっ!あっ、でも、もう今日はこれくらいみたい...」
「えっ?もう行っちゃうの?」
「そうだね~!今日はこれで、いっぱいいっぱいみたい...」
「うわーっ!そんなーっ!」
「じゃあね!...あやめっちのことは、ずっと見えてるかもしれない...」
「えーっ?...そしたら、へんなこと、できないねっ!」
「へんなことって?」
「えっちなこととか...」
「あははは、そういう時は、いつも見てないよっ!」
「ほんと~?」
「ほんとだよっ!」
「見てもいいよっ!」
「いいの?じゃあ、これからは見てるねっ!...あっ!じゃあね~...」
「うわっ!またねーっ!」
その日は、もう、声も聞こえてこなかったし、存在感も感じなくなった。
翌朝、朝食を食べながら、マーリアちゃん、おばあちゃま、おじいちゃまに
「きのうの夜ねっ!今、沖縄に住んでるお姉ちゃんみたいな人と、しゃべれたんだよーっ!」
って言ったら
「まあ、そういうこともあるよねっ!」
って言って、わかってくれてるみたいやった。
マーリアちゃんは朝食を食べながらピクッと反応してたけど、何も聞いてこなかったから、ボクもあえて、マーリアちゃんにも、それ以上は何も言わなかった。
それから、また、夜、寝てたら、優しく体をギュッと抱きしめてくれてるのを感じたし、顔にもチュッてしてくれてるのを感じた。
「あっ!さよりん、来てくれているーっ!」
って思えた。
毎晩、寝てると、抱きしめてくれてるのを感じるけど、声は聞こえてこない。
声はやっぱりちょっとむずかしいのかなあ~。そんなに、たびたびできるもんでもないのかもしれへん...
学校で楓ちゃんに
「部屋に来てた女の子はね...」
って言いかけたら
楓ちゃんは
「ええーっ!もしかして、あやめっち、その女の子だれだか、わかったのー?」
ってめっちゃ聞いてきた。
マーリアちゃんは
「ついに、あやめっちと接触することできたってことなんだよ...良かったなーっ」
って楓ちゃんに言っている。
楓ちゃんは
「3人の知ってる女の子なの~?」
って聞いてきたから
「3人とも、その女の子のことは、知ってると思うよ...」
って答えた。
「ええーっ!歴史上の人物なん?時空を超えて、あやめっちに会いに来てくれたん?」
「まあ、空間を超えて会いに来てくれたんは、たしかやなあ」
「ええーっ!やっぱり、あやめっちの芸術的なお師匠さんなん?」
「どっちかというと、お姉ちゃんみたいやなあ」
「何時代の女の子なん?平安時代とか?」
「もしかしたら前世では、2人はそうだったのかもしれへん...」
「ええーっ!ほんまに芸術家の女の子なん?女流作家とか女流画家みたいな女の子?」
「そやな!たまごかな?」
「ええーっ!たまごの芸術家の女の子なんや!」
「えっ?たまごの芸術家?」
「あっ!芸術家の女の子のたまご?」
「女の子のたまご?」
「あっ!芸術家のたまごの女の子?」
「そうやな~!」
「どれでも、いっしょやんっ!」
「なんでやねんなっ!いっしょちゃうわーっ!...もう活動はしてるけど、これから本格的に芸術家にも、なっていくようや女の子...」
「ええーっ!百人一首とかにも、これから載りそうな女の子なん?」
「百人一首とかに?」
「うんっ!いずれ載る子なんちゃう?今はまだ、たまごの女の子やけど」
「楓ちゃんは、だれやと思てんの?」
「伊勢さんちゃうかなーって...」
「伊勢さん?」
「なにはがた~の」
「ええーっ!ほんまにー?」
「聞いてんのは、わたしやんっ!」
「伊勢さんではないと思うで...」
「ええーっ!なんやあ...伊勢寺も近いから、もしかして伊勢さんなんかなあ~って思ってたわ」
「ちょっとちがうなあ...」
「あっ!わかったっ!それやったら、もしかして紫式部さんなんちゃうの?」
「ええーっ!紫式部さんなん?」
「聞いてんのは、わたしやんっ!」
「紫式部さんでもないと思うで...」
「ええーっ!ちがうのー?紫式部さんでもないのー?...紫式部さんも伊勢さんに憧れて慕ってたらしいから、てっきりそうなんやと思ってたわ...」
「伊勢さんを慕ってんのは楓ちゃんなんちゃうの?」
「わたしも、そうやけども...えーっ!だれな~ん?マーリアちゃんは知ってるの?」
って楓ちゃんは、こんどはマーリアちゃんに聞いている。
「うんっ!あやめっちの部屋に行った時に、わかってた...」
「見えてたん?マーリアちゃんには...」
「うんっ!見えてた...」
「マーリアちゃんにとっても、お姉ちゃんか、お師匠さんみたいな女の子なん?」
「うーんとね...わたしにも、お姉ちゃんみたいな女の子かなあ~」
「えっ?...なんとなく、わかってきたような気するで...」
「ええーっ!ついに楓ちゃんにも、わかってしまったか...」
「うんっ!まちがいない...ええの?当ててしまっても...」
「ええよ~っ!いいかげんに、はよ当ててほしいわっ!」
「よしっ!ほな当てにいくで~!...その女の子はズバリ...空里ちゃんやろっ!」
「なんでやねんなーっ!空里ちゃんは妹やんかあーっ!」
「ええーっ!空里ちゃんは、いつも水泳でドヤ顔を見せてたから、お師匠さんみたいなんかなあ~って思って」
「まあ、たしかに水泳では、そうやったりもするけど...」
「空里ちゃんは、あやめっちに、毎晩、抱きついてきてチュッチュッして甘えながら『芸術的な泳ぎをせなあかんよっ』って、あやめっちに説いていたのかなあ~って、てっきり思てもうたわ...」
「う~ん...芸術的な泳ぎねぇ...でも楓ちゃんにしたら、だんだん近付いてきたんちゃう?」
「ええーっ!空里ちゃんで近付いてきたん?」
「うんっ!その女の子に『空里ちゃんも、こんど、いっしょに連れて来てね~』って言いたいくらいだから...」
「うわっ!ええのー?そんなヒント言ってもうて...」
「そやから、はよ当てて~やって言ってるやんかっ!」
マーリアちゃんも、大阪にいて、だんだん大阪弁になってきている。
「アイティヤンやろ?」
「だれ、それ?」
「楓ちゃんの推してるアイドルの子やで」
「楓ちゃんはアイティヤンってアイドルの子を連れて来てほしいだけやないのっ!」
「そうやで~」
「だれを連れて来てほしいかっていう質問やったっけ?」
「ちがったっけ?...『空里ちゃんを連れて来てね~』ってマーリアちゃん言うから...」
「そうやけども、空里ちゃんって言ってたのは楓ちゃんやからねっ!」
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