パリの幼稚園
ずーっと赤ちゃんの時から、さよりんといっしょだった。
いつも家に遊びに来てくれていた。
ボクに会いに来てくれてた。
だからお姉ちゃんみたいだ。
いつでもボクのことをギュッと優しく抱きしめてくれている。
ボクの前で、さよりんは、いつも歌ったり踊ったりしてくれている。
ボクは、そんなさよりんのことをず~っと見ているの、めっちゃ好きだっ。
ボクもさよりんの真似をして、いっしょに歌ったり踊ったりしている。
家に泊まって、いつでもボクのそばにいてくれてるように思う。
夜も、さよりんの子守唄を聞きながら、ボクは毎日、眠りについているみたい。
朝、起きて、いつも最初に見るのは、さよりんの顔。
さよりんは、いつも
「わーっ!あやめっち起きたんやねーっ!」
って言っている。
それから
「はいっ!ミルク」
ってボクに渡してくれる。そして
「幼稚園に行ってくるわーっ!」
って言って、さよりんは毎日、幼稚園に行ってる。
そして、お昼過ぎには
「ただいまーっ!あやめっちーっ!」
って言って帰ってくる。
ボクも幼稚園に入るくらいの頃。
もう少ししたら、ボクは、幼稚園に入る。
「やっと、あやめっちも幼稚園だーっ!やったあああ!あやめっちといっしょに幼稚園に行けるわ~」
って、さよりんは喜んでいた。
でも、そのかわり、さよりんは小学生になるから
「うーわっ!あやめっちといっしょに幼稚園に行けないやんかーっ。いっしょに行きたいんだよーうっ」
って、さよりんは言っていた。
ボクといっしょに行きたかったみたい。
「あやめっち、小学生になったら、その時は、さよりんといっしょに小学校に通えるからねーっ」
ってママはさよりんに言ってた。
「はやく小学生になってよーっ!あやめっちーっ!」
「まだ3年かかるよっ!さよりんは4年生だねっ」
でも幼稚園に入る時になって、ボクは、ママとパパのお仕事の関係で、ロンドンからパリに引っ越すことになった。
さよりんにも、引っ越しの話をした。
さよりんは、ボクの家に来て、ボクをギュッと抱きしめてくれた。
「あやめっち~!ロンドンにもまた遊びに来てね~!ぜったいやで~!」
「さよりんもパリに来てね~!」
「うんっ!行く~!」
なんか、ポタポタ、頭の上に、落ちてきてた。
さよりんの涙だった。
ママは、そんなさよりんに
「ロンドンとパリは近いんやから!いつでも、また会えるんやからね!」
って言っている。
さよりんは、ボクのことをギュッと抱きしめて、なかやか離れようとしなかった。
だから、しばらく2人で、ずっとギュッと抱き合っていた。
「あやめっち、テムズ川の散歩に行こう~」
さよりんに言われて、2人で手をつないで、テムズ川のほとりをブラブラ歩いていた。
さよりんは、ボクのほっぺにチュッてしてくれた。
「あやめっち、パリに行っても、さよりんのこと忘れんといてね~!忘れたらあかんで~」
「うんっ!さよりんのことは、ずっと忘れないよ~」
って、さよりんに言ったら、また
「うわ~ん、あやめっち~」
って言って、さよりんは泣き出した。
またボクのことをギュッと抱きしめてくれた。
それから手をつないで、いっしょに歩いた。
しばらく、いっしょにテムズ川沿いを歩いてて、ちょっと行ったら、さよりんはボクのことをギュッと優しく抱きしめて、それから、ほっぺにチュッてする。
そして、また手をつないで歩きだす。
何日間か、ずっと、そんな感じで、さよりんと過ごしていた。
さよりんは毎日、家に来て、そしてボクのことをギュッと優しく抱きしめてくれている。
パリへ行く日のことは、さよりんには話さなかった。
さよりんに話さずに、その日の朝に、空港へと向かっていた。
「なんでなん?」
ってママに聞いたら
「さよりんに言うと、あやめっちのこと、1日中、ギューッと抱きしめて、ぜったいに離さないやろから!」
でも、さよりんに言わないで、パリに行っちゃうのも、それはそれで、なんか、めっちゃさびしい。
「あやめっちの2倍以上は、さよりん、さびしいんだよ、きっと...」
ってママに言われた。
「さよりんの、あやめっちのことを好きな気持ちは、あやめっちの、さよりんを好きな気持ちよりも、たぶん、ずーっと、はるかに2倍以上は大きいからねー」
ボクもそんな気もした...
でも、ボクだって、さよりんのこと大好き。
だけど、たぶん、さよりんは、もっとボクのことを好きなのかもなあ。
うわーっ!やっぱり、さよりんといっしょに空港まで行きたかったかもしれないーっ!
さよりんといっしょに空港に行くべきやったのかもしれへんーっ!
さよりん、お昼頃に、家に来たかもっ!
うわーっ!
どうしようーっ!
さよりん、だれもいない家に来ちゃうかもーっ!
ロンドンから飛行機に乗ってパリに着いた。
パリの幼稚園に入ったら、マーリアちゃんっていう、可愛いフランス人の女の子と仲良しになった。
ある時、マーリアちゃんに
「あやめっちのうしろに、いつも女の子いるよ~」
って言われた。
「えっ?女の子?」
って答えたら、マーリアちゃんは、ボクのうしろのほうをしばらく、じっと見つめていて、それから
「さよりんって、その女の子、言ってるよ」
「えーっ!さよりんーっ!」
「知ってる女の子なの?」
「ロンドンにいた時に仲良しの女の子だよ~」
「さよりんって女の子は、あやめっちのことを、ほんとにめっちゃ好きみたい...」
「マーリアちゃん、なんで、そんなこと、わかるの~?」
「霊感強いから...」
「さよりん、何か言ってる?」
「あやめっちの3つくらい年上だから、お姉さんみたいな感じで、あやめっちのことをいつも見ているよ~。あやめっちをよろしくねって、わたしに言ってる...」
「うわ~!...じゃあ、さよりんに、『ありがとう』って言ってくれる~?」
「いいよっ!...てか、もう、さよりんにも、あやめっちの言葉、聞こえたみたい...さよりん、笑って、あやめっちのことを見ているよ」
「うわ~!そうなんや~!さよりん~!」
って、ボクはうしろを向いて手をふった。
マーリアちゃんは
「手をふったの、ちょっと違う方向だったけど、さよりんには、ちゃんと伝わってるみたいだよ」
って言ってくれた。
「マーリアちゃんも、ありがとう!凄い霊感だね~!さよりんのこと、わかるなんて...」
「あははは。あやめっちの役にたてたから、嬉しいよ。霊感強くて...」
マーリアちゃんも喜んでくれてるみたいだ。
マーリアちゃんに
「さよりんに、引っ越しの日のこと言わなくて、ごめんねっ!って言ってくれる?」
ってお願いした。
「いいよーっ!...でも、もう、さよりんにも聞こえてるよっ」
「あっ!そっか!...さよりん、あの日、言わないで行っちゃって、ごめんねーっ!」
って、ボクは、自分の後ろにいる、さよりんに向かって言ってみた。
「さよりんは何て言ってる?」
「もう、いいよーっ!気にしないでーっ!って言ってる」
「うわーっ!ごめんねっ!」
「あやめっちといっしょに行きたい気持ち、その時めっちゃ強くて、それで今、ここに来てるみたいだよーっ!って言ってるょ」
「さよりん、パリの幼稚園に、ボクといっしょに、ついて来てるなんて、すごいなー!」
「さよりんは、あやめっちと結婚するーっ!って言ってるよ」
「えーっ?ほんとー?ボクも、さよりんと結婚するーっ!」
「さよりん、めっちゃ嬉しそうにしてるよーっ!」
「ほんとー?」
「うんっ!めっちゃ喜んでいる...あっ!今、あやめっちのほっぺにチュッてしたよ!」
「あっ!そういえば、今、一瞬そんな感じしたっ!」
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