第7話 現実その4
「炭丸、これは本当に凄い話だよ」
「どこがだ?」
「森の鳥達が自分達で力を合わることができたなんて本当に凄い話だよ」
「ん?そうなのか?翔次」
炭丸は驚いている翔次を前にキョトンとした様子を見せた。「凄いも何も、日常的にあるべきことだろ?」
「うん。でも人間の世界じゃ、そういうのは奇跡に近いことだね。とても感動したよ。それに、炭丸の苦悩も凄く伝わる話だったな……。でも、僕はこの苦悩が炭丸の傷だとは思えないし、僕が炭丸だったらこれを傷とは言わないよ?」
「その通りだ。お前こそ俺への理解が早いじゃないか」
と、炭丸は言うと何か思い詰めた様子で人造湖を見つめる。「ああ、本当の地獄はここからだったんだ……」
春一番が吹き、岸辺に止まっていた蝶が慌てて飛んで行った。
ふと見ると炭丸は体を小刻みに震わせていた。先ほどまであった鋼の如き凄まじさは風に吹かれる蝋燭の火のように消えかけている。
翔次は初めて炭丸に寄り添い、彼の頭を撫でながら問いかける。「傷の良いところはさ、互いに分け合えることだと思うんだ。だから、是非聞かせてよ。僕と炭丸は似ている気がするから……」
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