第27話「廃洋館」

…キーンコーンカーンコーン


何度聞いたかこのチャイム。これから部活動をする時間帯となった。もちろん、元気に行くつもりよ


この前渚ちゃんを救ってお礼に私に通販サイト金券をもらってしまった。そんなこと、しなくてもいいのにと言った


でも、渚ちゃんは2度も救ってくれたのがとても嬉しいらしく、何度もすいませんみたいな気持ちだったらしい


じゃあそうなら…ということでその金券を貰う。だったら後で通販サイトをひらこうっと


それにしても、私たちは妙子ちゃんを入れてずいぶんと色々なところに向かったものだ。もちろんこれからもオカルト部は続くけど


さあて行こう。そう思ってオカルト部へ行こうとした


「愛子…」


ドアの向こう側に誰かいた。そこにいたのは私の恋人だった


「妙子ちゃん!来てくれたんだね!」


「当然…。さ、行こう…?」


ゆったりと。たまに力強く。そんな口調をしっかり分ける妙子ちゃんがとても好きに思える


私と妙子ちゃんは手を繋いで歩く。これはもう当たり前な風景だ。これからもずっといてね。妙子ちゃん



「…よーし。みんな集まったわね」


オカルト部。私、妙子ちゃん、雅先輩、桃子先輩。この4人で活動することになる


むしろ、誰か新しい部員がいてもいいんじゃないの?とは思うけど、これ以上いてもなあとは思う


今日はどこに行くんだろ?


「私ね。ここに行きたいの。ここは廃墟…廃洋館になっていて…何か出るって話なの」


地図を広げて印をつけた場所に指差しをする。これまた学校に近い場所だ


この学校に近いオカルトな場所って意外とあるんだねえ…。そのことにまた驚くばかりだ


「でもそこって施錠、されてません?」


私が質問すると雅先輩は言う


「大丈夫。ここは何も鍵かけられてなくて普通に入れるわ」


なるほど。なら行けると思うね


「…後は朽ちてないか心配ね。もし何か出るのなら逃げるのも視野に入れておかないと」


それもそうだ。もしどうしようもない霊が出たら逃げることも考えないといけない


「ま!大丈夫よ!そろそろ行きましょう」


雅先輩は相変わらず明るく振る舞うなあ。桃子先輩はニコニコしてるだけだし



学校を出て森林に向かうところ


その廃洋館というのは学校を出て奥の林にあるとのこと徒歩でも十分に行ける距離だった


正直、もう慣れているのだろう。元々強い妙子ちゃんはそうだが、私、雅先輩、桃子先輩はすっかり慣れているのだろう


だが、こういうのは油断大敵とも言う。とても悪い霊が出たらそれは妙子ちゃんでも無理なのかもしれない


道路と通り、横に外れて森林へと行く。森林の通路には舗装されていたのか何も土も踏まずに済んだ


歩くこと数十分。森林が広がりその廃洋館へとたどり着いた。案外早く着くものね


その廃洋館を見ると2階建てだった。まあまあ大きく、規模としては中ぐらいだ


周りをよく見る。それでもこの屋敷しかない。きっと住んでた人は外もそうだが中も片付けているのだろう


雅先輩が一歩出る


「…ここは肝試しにはうってつけの場所。中に行こう」


雅先輩を先頭に私たちは中に入ろうとする。横で確認したが、妙子ちゃんが一応水晶玉を持っていた


廃洋館の玄関に着いて、施錠されていないドアへと入る。ギイイイという音をして扉が開いた


まず玄関。二階に上がれる階段がすぐにあり、その横にそれぞれの部屋に行ける場所があった


「そこまで広い…ってわけではなさそうですね」


「でも、何かあるかもしれませんよ?」


本当にここで何か出てくるのだろうか?私たちは早速この屋敷を調べてみることにした



まずは1階の探索だが、何もないに等しいものだった


リビング、誰かが使っていただろう部屋。浴槽、洗面所、トイレ。全部見たが特別何もないと言って良かった


とりあえず一安心した。妙子ちゃんも水晶玉を持って確認したが、霊はいなかった


「…ここには霊はいない。なら2階。行きましょう」


私たちは玄関に戻り、2階へと行く。ギシギシ痛む音が聞こえたが、穴が開くことはなかった


階段を上がると2階はシンプルだ。真っ直ぐな道にドアがあるだけ。まず手始めに階段近くのドアを開く


「…空っぽ」


きっと客室なのだろう。何も物は置いてなかった。私は閉める


他にもドアはあったが決して何もなかった。残るものは真っ直ぐにあるドアのみ


「いいですか先輩、妙子ちゃん。開けますよ」


なんでだろう。胸がやたらドキドキする。私の感だがこのドアの先に何かありそうである


がちゃ…


その部屋はとても広かった。まるでこの屋敷の何%利用しているかのように


廃洋館だから当然壁や床がボロボロになっているが、決して抜けるなんてことはなさそうだ


そして私たちがすぐに目をやってものがあった。それとそれがあったから


「…ピアノと鏡」


そう。ピアノと鏡があった。ピアノと言っても安物のピアノではなくグランドピアノ…高級なピアノのであった


鏡もピアノのすぐ側にあり一体どういうことだろうと思うほど不自然に置いてあった


「これ…なんでこんなところに置いてあるんだろ…」


私はピアノの触ろうとした。すると妙子ちゃんが言った


「待って!…そのピアノ、怪しいわ。触らないで」


「ど、どうして?」


妙子ちゃんが水晶玉を持ち、ピアノに指を指す


「…このグランドピアノはカバーがあるの。万が一触るとカバーが閉まって…後はわかるわね?」


う…!指が大変なことになるのか。確かに迂闊に触ろうとしようとした私が馬鹿だった


「でも…なぜここにグランドピアノが?前の持ち主が持っていかなかったのは?」


雅先輩が言う。だが、妙子ちゃんの表情は真面目だった


「いるわここに…霊、『者』がね」


な!ここにいるのか!どこだ!?もしかしてグランドピアノが怪しい!?


妙子ちゃんが言い、私が思うと突然ピアノから演奏するような音が鳴った


こ、これは…!?その音楽はあまりにも不気味であまりにも恐怖を煽るような音楽だった。しかも鍵盤は伴奏している


私、雅先輩、桃子先輩は冷や汗が出るような気分になり、妙子ちゃんはピアノを睨みつける


「みょ、妙子ちゃん…これって…!」


「…みんな、鏡を見てみなさい」


鏡?私たちは鏡を見た。すると鏡に写ったピアノの椅子から黒い人影があった


「これは…!『者』!」


「そうよ。でもね。これは襲ってこないと思う。ただ、ここにいるだけ。それだけの『者』よ」


「…」


なるほど。では、ただ演奏してるだけの『者』なのか…


「どうしよう?」


雅先輩が妙子ちゃんに向けて言う


「何もしないならそれでいいわ…ほっていても構わないでしょう…」


妙子ちゃんは水晶玉をしまった。もう意味がないのだろう


「…もう解決したわ。さあ暗くならないうちに帰りましょう」


「うん…」


あの『者』は私たちが来ても驚くこともせずただ演奏をしてるだけの『者』だった


怖かったけど、どこか悲しい気持ちにもなった。成仏しきれず、ずっと演奏してるんだなって…



「今日も妙子ちゃんといて嬉しかったわ」


「ううん…みんなが、そして貴女がいたから嬉しいのよ」


私と妙子ちゃんが歩く。すっかり夕方過ぎになってしまった


「これからもウチはいるわ…。だから、ずっといてね」


「うん。当然よ」


こんな嬉しい気持ちはない。ずっと一緒にいようね。妙子ちゃん



でも…あの廃洋館…


不思議なことってあるんだなあ…




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る