第25話「辰子の経歴」
…私はずっと霊感はあった
その霊感はそのまま上手く扱えないかと思って私はその道へ行こうとした
最初に会った先輩、いや師匠の除霊師は厳しくも温かい目で見てくれる、とてもいい師匠だった
私は高校を卒業してからその道へ行き、除霊師になろうと思った
師匠の元で初仕事をしたり、私が除霊の仕方を教わってそして一人前になった除霊師になった
私はその師匠の元で順風満帆に頑張っていた。しかし、別れというのはすぐに来てしまう
…師匠の死去。師匠は老齢のお方だったから私は一人前になってすぐに亡くなってしまったのだ
残された私。でも、悲しんでなんていられなかった。私は師匠の思いと熱きまなざしを受け継いで除霊師となった
そんな私があちこちで除霊をすると色々な人から私のことを褒め称える評価が多かった。それは純粋に嬉しいけどね
例えば、『令和の安倍晴明!』と『今世紀最強の除霊師!』と『この人の除霊はパーフェクト!』と『胸でか除霊師!』とかね
…まあ、色々なこといわれているけど胸でかは少し蛇足かしら…
~
「へえ。じゃあ妙子ちゃんその胸で育ったんだ…」
「何か言ったかしら?」
「いえ、別に」
~
やがて私も今の旦那と付き合い始める。でも旦那は私のこの除霊師というものを決して嫌には思ってなかったの
それはとてもありがたい気持ちだった。そして今の旦那と結婚。極秘でね。私はその後、妙子を生んだの
妙子を育てるためにしばらくの間、除霊師としての仕事は止めていた。当然よ。妙子を育てないと意味はないから
だから旦那は仕事が趣味ってなってしまったのかもしれないわね…。本当ならもうあまり苦労しなくていいのに
妙子が中学校に入るあたりから私は再び除霊師としての仕事を再開した。突然のことだったからみんな驚いていたわ
妙子には色々な除霊の仕方をアメとムチで教えてあげたわ。でも妙子は決して私を嫌がるような感情は見せなかった
私の子供だもの。霊感は強くて当たり前だし、何よりも上手くできている。その時点で嬉しいのよ
妙子と貴女。あちこちで色々な除霊、してるんでしょ?その時点で私の子供なんだなって嬉しく思うわ
でもね。本当に危険な場所には行かないでほしいの。それは私の出番。危険と感じたらすぐに逃げなさい
~
「はい。わかりました」
「…ウチも気をつけるわ」
私、愛子はこの人の言う事をきちんとうなずいた
「でも貴女たちは色々な場所に行ってるのは妙子から聞いてる。オカルト部として十分にやっているわ」
そう言うと辰子さんは笑顔になる。美人なこの人。笑顔になると凄いかわいい
「妙子ちゃんがいないときでも私たち、色々なとこ行ってましたから」
「例えばどんなところ?」
私は記憶を思い出して言う
「学校にあるトイレにいた霊はいましたね…その子、わかるとすぐに消えてしまいました」
「なるほど。きっと悪意のない子だったのかもしれないわね。襲ってこないなら、きっと成仏したんでしょう」
私は次に言う
「銅像の前に死んだであろうわんこがいました。そのわんこ、私を見て軽く挨拶をしたら玉になって上に行きました」
「そうなの。襲う気持ちはなかったのね。可愛がられて育って、やがて死んだ。それなら何もしてこないはずよ」
私は更に言う
「学校の近くに廃神社があったのですが、私が夢にその神社の子が出てきて、消えて、廃神社も無くなりました」
「多分その子はとても良い子よ。挨拶をしたかったのでしょう。霊感があり、優しい貴女に。成仏したんだわ」
あとは…
「これも学校に近くの散歩道に亡霊がいました。何もされず、ただランニングしてるだけの亡霊でした」
「ふふん。きっと未練を残している霊ね。でもそれは成仏せずただ現世に残っているだけ。ほっていてもいいでしょう」
まだあるな…私は覚えている限りの心霊を言う
「妙子ちゃんと先輩たちで駅前に行ったら呪いの切り株とかいうのを発見して怖かった記憶がありました」
「ほう。何かの呪物は何もしないのが鉄則。下手に触ったら呪いがかかるわ。今後も気をつけてね」
えーと次は…そうだ雑居ビルだ
「妙子ちゃんと2人で雑居ビルに行ったら『者』がいて除霊しました。後でその雑居ビル、崩壊したらしいです」
「危ないことしてるわねー。でも崩壊したらもうその場所は心霊スポットでは無くなった。それだけね」
で、次は…
「山道に行って井戸を調べました。処刑場だったらしい場所に行ってみたことがあります」
「そういうとこは行くのはあまりオススメしないわ。妙子がいなかったらいざというときに除霊できないし」
後は…
「これも学校近くなんですけど、海沿いの場所に行ってたくさんの『者』が海還りしてました」
「何もなかった?そういう行動を持つ霊は何もしてこない。成仏しきれてない霊に近いわね」
まだあるなあ
「Vチューバーの友達に呪術をかけてくるのがいたんですけど、妙子ちゃんが呪術で返してそのまま終わりました」
「まあ呪術使ったの?でもあれはいわゆる正当防衛のような使い方なら別に心配いらないわ」
そして…
「トンネルにシミがあったのですが、それは妙子ちゃんが御札を貼って終わりました」
「基本的に御札の効果は強力。それだけならもう悪い霊は消えたことね」
最後に…
「公園の森林に行って『者』がいました。4人でその『者』を倒し、成仏させました」
「まあ、そんなことしたの。でも貴女たちなら簡単にできそうね。良い仕事をしているわ」
…こんなものかな
「以上です。でも、ここまでの経験ができたのは先輩と妙子ちゃんのおかげです」
「…いえいえ…だってウチは除霊師の端くれだから…」
妙子ちゃんが言うと辰子さんはウンウンとうなずいていた
「貴女の話、長く聞いたわ。これからも無理せず、安全第一でオカルト部を続けなさい。除霊師の私からのお願いよ」
「はい!」
私は元気に返事をした。きっとこのお母さんも頼りになる人だろう。なんだか嬉しく思えちゃう
「あ、そうだ…」
その言葉を言うと辰子さんはすっと立ち上がり、その部屋にある棚を探った。一体なんだろうか
何かを見つけたらしく、手に持っていた瓶みたいなものがあった。これは?
「まあ別に愛子ならこれを持たせてもいいと思うわ」
「辰子さん、これは?」
そう言うと辰子さんは瓶をテーブルに置く
「清めの塩の液体の物。清めの水よ」
清めの塩の液体?
「…愛子。聖水ってわかるかしら?つまりそれよ」
あ、聖水…そういわれると納得した私
その聖水と呼ばれる清めの水。当然水なのだから何も不純物の無い透明な液体であった
「これをね。例えば『者』とかに振りかけると大ダメージっていうのかしら。一瞬で浄化されるのよ」
すごい効果だ
「それと万が一の場合。この清めの水を相手に投げてもいいわ。瓶が割れてそのとおりの効果が発揮されるから」
投げるかあ…もしものときに投擲なんてしないことを願いたいものね
「わかりました。ありがとうございます。大切に持ちますね」
「…でもこれ清めの塩を水に混ぜただけのも…」
「妙子。あまりそういうことをいわないの」
…妙子ちゃんの口からなんかえらいものを聞いてしまったが
「まあとりあえずそういうこと!でもこれは人間にも効くから安心してね」
人間にも、かあ。効き目としてはかなりの強さなんだろう
「…ウチのママ。全然悪意ないのに人間にも清めの塩ふって退治したことあるからね」
「妙子!それ以上いわない!」
…除霊師とは違う変な武勇伝を聞いてしまった
辰子さんと妙子ちゃん
ふたりは除霊師で凄い人って思ったわ
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