第21話「トンネルのシミ」

…私達は希望に満ちたまま、妙子ちゃんと一緒に歩いていた。もちろん、オカルト部だ


妙子ちゃん自身の告白。そしてそれを受け取った私。こんな嬉しいことはない


お兄ちゃんが言ったけどそういうのはゆっくりと仲良くしろとは言ってくれた。でもそれ以上の仲良しになったのだ


私と妙子ちゃんは手を繋いで歩いていた。今日は恋人同士になった記念日だ。とても嬉しい気持ちでいっぱいだった


…そうだ。後で雅先輩と桃子先輩に伝えてみよう。私達は恋人同士になりましたって


私と妙子ちゃん。そして雅先輩と桃子先輩。私達はこれからも仲良くできそうな予感がした


手を繋いで歩く。そして着いた。私は早速ドアを開く


「お疲れ様です先輩!」


そこにはやはりいた雅先輩と桃子先輩。私達を見ると良い笑顔で見てくれた


「やっほ愛子ちゃん」


「こんにちは」


私と妙子ちゃんは早速隣同士に座る


「あ、そうだ愛子ちゃん、私達のこと、知ってる?」


「なんですか?」


恐らく付き合ってるってことかもしれない


「実はね。私と桃子…付き合っているのよ」


やっぱりそうだった。でもそれはもう聞いた。私達もそうだって言いたい


「…ウチもね。愛子と一緒に付き合うことにしたのよ」


おっと?妙子ちゃんが先に言ってくれた


「え!?そうなの!?」


「まあ…びっくりですね」


雅先輩と桃子先輩はさすがにびっくりしたらしい。当然だわね


「じゃあ…私達オカルト部は恋人同士で結成されたってことね。これはなかなか盛り上がるわね~」


「おめでとうございます。わたくしも喜ばしいことです」


雅先輩も桃子先輩も嬉しそうな顔をする。嬉しい…か


妙子ちゃんは少々恥ずかしい顔になっていた。まあまだ告白してから時間も経ってないしね


「妙子ちゃん、ずっと一緒にいようね」


「…うん。愛子となら。どこまでも」


改めて告白するとあの時はとても大きいことだったんだってわかるわ


「じゃあ!そんな2人の門出と!私達のことで!早速スポットにいきましょう!」


そう言って雅先輩は地図を広げる。もっと何か喜ばしいこと言えないのか…


「ここ、行ってみない?道に幽霊が出てくるって話。学園からそう遠くない場所よ」


「霊が突然出てくるってやつですよね?」


私が言うと妙子ちゃんはうーんと言う顔になった


「…どうしたの妙子ちゃん?」


「…そもそも道に幽霊が出るって不思議な話ね。後で聞いたけど散歩道の道に幽霊出たっていうのはあれは思いが残っているからそうであって…」


散歩道の幽霊。そう言えばあの人は特に無害だったからほったらかしにしてたんだ


「…悪い霊ならウチの出番よ。行ってみないとわからない」


妙子ちゃんは自信ありげに言う。さすが妙子ちゃん。そういうところが私は好きなのよ


「では、早速行ってみましょう」


桃子先輩の言う通りにして私達は行くことにした



その道は学園からすぐだった


海にも近いし散歩道にも近く、そして問題の道も近い。色々とあるなあこの学園の地域って


歩道を歩き、その場所へ。私と妙子ちゃんはまた手を繋いで歩いていた。あまりにも可愛い彼女


前に雅先輩と桃子先輩がいたが、あまりこの2人ってイチャイチャするシーンがないなあ?


本当に付き合っているのだろうか…へんな疑問も出てくるようになる


「雅先輩、桃子先輩」


そう言うと2人がこちらを見る


「何かしら?」


「お2人ってあまりイチャイチャしませんね?」


「そうねえ…まあもう桃子とは結構長い付き合いだからいて当然みたいなところ、あるのよ」


「いわば熟年夫婦って感じです。雅の言うことはわかるし、わたくしのこともわかるのですよ」


へえいいなあ。妙子ちゃんともそのぐらいの長さで付き合いたいものだ


そんな雑談をしたらトンネルがあった。そこで雅先輩はピタッと止まる


「ここね」


「ここですか?」


そのトンネルというのもまあまあ長い距離のトンネルだった。明るいし、まるで幽霊なんて出ないような雰囲気をしている


横に歩道があり、横に車道がある。車は走っている。ここが?


私と妙子ちゃんは手をつなぐのを止める。そして妙子ちゃんは除霊グッズを準備した


「…こういうところこそ、怪しい雰囲気はするのよ。ウチ1人で行くわ」


「え?妙子ちゃん1人で?」


妙子ちゃんは雅先輩達の前まで行く


「大丈夫?妙子?」


「…霊って、大人数だと出てこない場合があるのよ。よく聞くじゃない?繁華街のキャッチは大人数だとキャッチされないって」


そ、そうなのか?その話は初耳だし本当かどうかはわからない


「気を付けて妙子ちゃん…!」


その声に妙子ちゃんはこくりと頷くと彼女はトンネルに入っていった


私は視力がいいのか妙子ちゃんの行動がよく見えた。そして明るいのでその姿もはっきりとわかる


一歩ずつ歩いている。もちろん霊感の強い3人なので霊なんて見えるだろう


妙子ちゃんは右手におなじみの御札を。左手に水晶玉を持っていた。これで何かあったら対抗するのね


一歩ずつ歩いて、上を見たり下を見たり、横に向いたり…結構慎重にやってると思うわ


ちょっと経つと妙子ちゃんはピタッと止まる。おや?何かあったのだろうか?


水晶玉を壁に向けて何かの確認をしていた。何か…の?


「…3人。ちょっと来てもらえるかしら?」


妙子ちゃんは手招きをする。私達は妙子ちゃんのもとへと向かった


「どうしたの?何か霊はあったの?」


雅先輩が言うと軽く私達のほうを向いて、壁を見る


「…もしかしたらこれが霊が出るって原因じゃないかしら?」


壁に霊が?妙子ちゃんの水晶玉を見たらたしかに光っていた。これは霊があるということだ


その壁は黒いシミで出来きていた。人の形をしていて、まるで水をかけたようなシミ。これが霊なのかしら?


「…多分だけど、このシミが霊であり、そして人を脅かす『者』だとすると…除霊しないといけない」


その言葉を言った瞬間、妙子ちゃんはシミにバシッと!御札を貼り付けた。特別何も起きない


「…これで大丈夫でしょう。これならもうここはオカルトスポットでは無くなるわ。ただのトンネルの歩道。それだけね」


私も雅先輩も桃子先輩もどこかほっとした様子だった。確かにわかるが、霊のような雰囲気が消えた


「妙子ちゃん。清めの塩、じゃだめなんだね?」


「…ええ。これは御札のほうがいいと思ったわ」


良かった。元通りの歩道になったのだろう。やっぱり私の妙子ちゃんはとても頼りになるわね


そのタイミングで誰か向こうから来た。背の小さい、小学生の子だった。私を見るなり近寄ってきた


「あれ?お姉ちゃん達何してるの?」


「…ちょっとね。ここの幽霊さんにおまじないしたのよ。あまり脅かすことは止めてねって」


妙子ちゃんははっきりと霊のことを言った


「そうなんだ!じゃあもう安心だね!」


…聞き分けの良い子で助かるわね


「…そうよ。安心して通ってね」


「うん!ありがとうお姉ちゃん!」


元気に挨拶すると小学生は去って行く


「…御札はこのままにしましょう。もう終わったわ。帰りましょう」


「うん。妙子ちゃん」


私達はこのトンネルから去る。特別な刺激は無かった。でも、妙子ちゃんを改めて凄い人ってことがわかった



今度はどこ行こうか?


妙子ちゃんとならどこでも行けるわ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る