第20話「貴女へ」

…ワイワイ


朝、私は登校する。でも、胸はドキドキしている。その原因はわかっていた。あの先輩のことである


…妙子先輩。あの人がとても優しく、何やっても強く、そして美しい。そんな先輩を気に入っている


これは刺激?ああ、刺激なんだろう。私は刺激を求めてオカルト部に入ったけど、今度は人間に対して刺激があるんだなと


私はどうすればいいのかわからない。小中学校と無かった刺激なのだから。こんなに彼女のことを気に入ってしまったのだから


私は?妙子先輩は?彼女のことを、好きでいるのか?好き。その言葉は今までに無かったことだった


でも彼女は私のことをどう思っているんだろう?強さと優しさで私はただ、心の涙を流している


妙子先輩…妙子、ちゃん。でも先輩だしそんなことは言えない。妙子ちゃん。私は貴女がいてくれたからこんな嬉しい気持ちなんだよ


登校しているのに、授業もあるし、オカルト部もあるのに妙子ちゃんのことを真面目な顔で見えない


ああ。恐らくこれは気持ちの整理がついていない感情だ。私は妙子先輩のことをこんなに好きでいるなんて…


私は女。仮にも彼女も女。それでいいのだろうか?雅先輩と桃子先輩も怪しい。きっとあの2人は恋人同士なんだろう


はぁ…彼女のことを思うと胸の動悸は止まらないし、また彼女の優しい香りを味わいたい。においふぇちではない


「おっす!愛子!」


突然声をかけられて少し驚いた私。そこにいたのは美憂ちゃんだった


「美憂ちゃん!」


「よう!どうした愛子。なんだか顔色悪いじゃねえか」


ギャルである彼女は私の心配をしてくれた


「う、ううんなんでもないよ」


「そうか?」


門の前まで来た。相変わらず美優ちゃんってお気楽な人だなあ


「愛子。今度またオカルトな話があったら愛子に言うよ」


「ありがとう。もしあったらお願いね。オカルトは噂や奇妙な話がないとネタ切れになっちゃうからね」


「任せろって!」


…私より身長のでかい美優ちゃんって声も大きいや。身長何センチなんだ?


下駄箱で靴を履き替えて教室へ。すると美優ちゃんは誰かがいたのを発見する


「お!先輩たち~!」


階段のところに美優ちゃんの…恐らくバレー部の先輩だろう


「あ、美優ちゃん」


「やっほ」


美優ちゃんは先輩達の前まで来る。私もつられて来た


「何してんすか先輩?アタシも混ぜてっす!」


…先輩の前になるとそういう口調になるのか…


「ああ、ちょっとね。ここって割とカップルいるなって話」


「カップル?」


そう言うと先輩達は言う


「ほら、雅と桃子って同じ学年にいるでしょ?あの2人付き合ってんだって!凄いよね女の子同士だよ!」


「へえ!そうなんですか!」


…雅先輩と桃子先輩は…付き合ってる?


「いやあねえ。私達は結構許せると思うんだ。薔薇だと気持ち悪く感じるけど、百合なら全然オッケー!って思うよ」


「なるほど~!これはビッグニュースっすね!」


…付き合う。その言葉でまたどくんと鼓動が鳴った。私と、妙子先輩と…


「ご、ごめん美優ちゃん、先行くね」


私は耐えきれず階段を登っていった


「あ!どうした?」


どうしたと言われても私はさっさと教室へ行ってしまった



ぼー…


教室で授業してもちっとも頭に入ってこない。ただ、妙子先輩のことを思ってしまう


本当にどうなってんだろ私…あのきれいな顔。きれいな声。きれいそうな体格。そして強さ…


何してもパーフェクトな人である。正直この思いはきっと消えないだろう。彼女にマイナスなところってあるだろうか?


彼女に会いたい。でも、会うと胸の鼓動が止まらない。妙子ちゃん…妙子ちゃん…


私はもう彼女に対してタメ口になっている。そこまでの人だ。先輩なんてどうでもいい。彼女がいるんだから


「…愛子ちゃん!」


昼休みの食事。花乃ちゃんが言う


「あ、ごめん」


その隣の美優ちゃんが言う


「大丈夫か愛子?全然箸進んでないし、何か熱でもあんの?」


「い、いやそういうわけじゃないわ…」


同じ一緒に食事をしている美香ちゃん、花乃ちゃん、美優ちゃんは心配している


「もし熱でもあったらすぐに保健室へ行ったほうがいいよ?」


「だ、大丈夫だから」


私は忘れていたお弁当を食べる



…キーンコーンカーンコーン


ふう、ようやく授業が終わった。オカルト部へ…行くか…


私の気持ち、彼女の気持ち。一体どうすればいいのだろうか?


「…愛子」


声が聞こえた。はっきりと聞こえたのだ。教室のドアに私の人である妙子先輩がいた。妙子ちゃん…会いたかった


「…妙子先輩」


私は立ち上がっていた。そして、彼女は私の前まで来た


「…ねえ、愛子。さっき…同じクラスの人に聞いたけど、雅と桃子が付き合ってるってこと、知ったのね?」


「は、はい…」


妙子先輩は少しうつむいて、少し笑った


「…ウチはね。貴女のことをとても良いと思ったの。先輩として、オカルト部の先輩として、そして…除霊師の端くれとして」


更に妙子先輩は言う


「…ウチ、愛子のことをママに言ったらとても喜んでくれたわ。もういっそ、パートナーになりなさいって」


…パートナー?


「先輩…?」


「ウチはこれからも除霊師として存在するけど、ウチは、この思いと感情を嬉しいし喜ばしいと思うわ」


そう言うと妙子先輩はすっと私の手をつかんだ。優しい体温が伝った


「ねえ、愛子。ウチと一緒にならない?貴女がいてくればきっと、これからの学校生活や今後のことも、きっと上手くいくと思う」


…これは…告白!?私はびっくりしつつ、涙が溢れてきた


「…妙子ちゃん!私、ずっと!貴女に出会わなければ!これほど満足する刺激は無かったわ!だから…だから…うわあああん!!」


「…ようやくウチに本当のこと、伝えられたのね…」


私は泣いた。片思いでは無かったのだ。両思い…それは妙子ちゃんにとって嬉しい気持ちでもあったのだろう


「妙子ちゃん…!妙子、ちゃん…!ううう…ぐすっ…」


目を閉じて泣く。でも、妙子ちゃんは私を笑顔で見てくれた。そのことはわかる。だって目を閉じても貴女がいてくれるから


「同じ女性同士だから色々あると思うけど…でも、大丈夫。ウチのことがそんなに好きだったのね…」


妙子ちゃんは私の頭をなでた。髪から伝わる優しい人の手


「これからよろしくね。先輩として、私の好きな人として、そして…未来の人として」


「妙子ちゃん…!大好きよ…!」


私は泣きながら、妙子ちゃんに抱きついた。急に抱いても妙子ちゃんは決して拒否反応しなかった


妙子ちゃんも私の体をぎゅっと抱きしめていた。部活動がそろそろ始まる時間帯に、私達は一緒になれた



私と妙子ちゃん


きっとこれからも一緒になれるだろう



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