第16話「亡霊の海還り」
…キーンコーンカーンコーン
さあ終わった。私はまたオカルト部に行こうとする。楽しみで仕方ないわ
この前なんか山道の井戸で赤い血のようなものが組み上げてびっくりしちゃった。当然妙子先輩はすぐに除霊っぽいことをした
帰りは暗い中を歩いて帰ってきた。暗い中って実際お化けとか余裕で出てくるらしいから…
でも思ったけどこの部の部費?はどこから出てくるのだろうか?それは思っていた
まあ部費なんて必要無さそうなオカルト部だからこの白坂街は多分色々とある場所なのだろう
一言で言えばたくさんの場所がある。悪いこと言えば呪われてそうな街である
…おっと、ここでぼーっとしても意味はない。さっさと部室へ行こう。信頼できる先輩達がいるからだ
~
「お疲れ様です!皆さん!」
私は元気よく部室のドアを開いた。今日も同じく雅先輩、桃子先輩、そして妙子先輩がいた
全員、私の顔を見ると笑顔になってくれた。きっと私のような人が来るととても嬉しいのだろうと思う
「…愛子。今日も来てくれてありがとう」
「当然ですよ!だって楽しいんですから!」
私は嘘混じりのない本当のことを言う
「さあさあ座って。今日の行くところ、話すわよ」
雅先輩が言うと私は妙子先輩の隣に座る
「私と桃子でね。もう一度この街のオカルトを調べていたの。もちろん確認もとってね」
そう言うと雅先輩は机の上にバサッと地図を広げる。ある意味アナログな地図だ
「まず…ここは呪いの切り株があったとこ。現在柵があって触れないらしいわ。ここはもう見たからOKとして…。
ここの公園、どうも怪しい雰囲気のする場所なの。自殺者があるとの噂よ。除霊グッズ用意したほうがいいと思うの」
「あら…ウチが必要ってことね?」
妙子先輩は雅先輩の目を見て言う
「ごめんね妙子。いつも貴女に任せっぱなしで」
「…気にしなくていいわ。それがウチの仕事だから」
妙子先輩は笑顔で言う
「ありがとう妙子。で、ここ…道なんだけど道なのに幽霊が出てくるって噂のある場所なの。ここも学園からそう遠くないわ」
幽霊が出る道かあ…そんなのがあるんだね
「色々とあるんですねここ」
「もう少し遠いとこ行けばオカルトな場所もあると思いますよ」
だろうなあ。でも今はここの街を中心に行くのがいいだろう
「で、今日行くところは?」
「海の場所。ここでたくさんの亡霊が出てくるって言うけど…でもその亡霊に取り憑かれたなんて情報が一切ないのよ」
なんだそれ
「夕方過ぎにそれは見える…一応除霊グッズは用意しておいたほうが良さそうね」
雅先輩が言うと一旦地図を閉まった
「…妙子先輩?」
私は一応妙子先輩に確認してみた
「…そうね。襲ってこないなら何かあるはずよ。…それを確認しつつ行ってみましょう」
私達は部室を後にしてその海岸へと行ってみる
~
学園から海まではそこまで時間はかからない
元々海に近い場所なのか徒歩で約30分。それで海に近づけた。徒歩で歩きつつ私達はゆっくりと行った
海沿いの道は当然車道だ。でも車道とは言えど歩道もある。私達はあまり苦労もせず海へと行ける
「今日は風つよいですね」
桃子先輩が言った。確かに今日は風が強い。まあ海沿いだから風が強くて当然だろう
そうしたら突然強風が来た。びゅごー!ってね。私より妙子先輩がふらっとしてしまった
「…きゃ…!」
「大丈夫ですか先輩?」
私は自分と同じ身長であろう妙子先輩の体を受け止めた。人間特有の優しい体温が感じた
「…ありがと愛子。ちょっとふらついてしまったわ…」
「いいんですよ先輩」
でも、何かドキッとした。私は今まで感じたことがなかった心の動きがあった。これは一体なんだろう?
そんなことありつつ、私達は目的地へと到着した。特別何もない、浜辺へと
きっと夏には海水浴と言って多い人数でここへ来て海で遊ぶ場所かもしれないなあとは思った
「…何もない、普通の浜辺ですね」
「ここに亡霊が出るって話。本当かしら」
夕方過ぎ。放課後に部活動をやるのだから夕方過ぎになるのは当たり前だが、果たして?
「…みんな。一応、清めの塩をふっておくわね」
「そうですか?」
桃子先輩が言うと妙子先輩は清めの塩を用意した」
「…これを体にふりかけておけば万が一、襲われても霊は触ってこない。だからこそ、よ」
妙子先輩は清めの塩を軽く私、雅先輩、桃子先輩にかけた
そして、夕方から夜になりそうな時間になった。私達はただ浜辺でぽつんと待っていた
やがて…。私はビビビッと来た。これは…間違いなく霊の現れる瞬間が来た
「ね、ねえ…何かしら…あれ…」
雅先輩が指差す向こうに人影が見えた。…いや、人とは言えないものだった
前に雑居ビルで会った『者』に近い霊だった。黒く変色しており、顔も無くひょろひょろした人間のような者が
ゆっくりと歩きながら海へと行く。その人数はあまりにも多かった。長い行列を作り、海へと向かっていった
私達は驚愕しながらそれを見ていた。しかし妙子先輩は決して顔色変えずに黙ってそれを見ていた
その『者』達は私達を見てるのか見てないのかはわからない。ただ、危害を加える『者』達ではないことははっきりとわかる
一歩ずつ歩き、そして次々と海へと行く。いや、還って行く。というのが正しいのかしら…
しばらくすると数十人いたその『者』達は静かに海に潜った。そして静寂が訪れる
ざざー…ざざー…私達はその『者』達を見て、びっくりするしか無かった。静寂を破ったのは妙子先輩だった
「…ここは、きっと何かあったに違いないわ…。ウチの予想だけど…昔、日本は第二次世界大戦があったときのことを」
第二次世界大戦…なんだろう
「沖縄本土決戦は関係ないわね」
「広島長崎の原爆投下…」
雅先輩、私が言う。しかし妙子先輩は首を横に振る
「あ…!東京大空襲のことですか?」
ここで桃子先輩ははっとした声で言う。妙子先輩は首を縦に振った
「…そうよ。ここは第二次世界大戦の大空襲にあった場所。恐らく大空襲にあって火から逃れるように海に飛び込んだのかもしれないわ…」
もしかしたら、ある意味、そうなのかもしれない
「じゃあ…あの亡霊さんは海で溺れて亡くなってそれを繰り返すようにここに留まっていたのかしらね…」
なんてことだ。ではあの『者』達はそれを繰り返して海へと還って行ったのか
「どこかに慰霊碑があるかもしれない。探してみましょう」
雅先輩が言うと私達は慰霊碑がないか探してみた。しかし、回りを見ても無かった
「…可哀想な人達ね。慰霊碑が無くて、そのまま死んでしまって、そして繰り返して海に行くなんて…」
「これは…どうしたらいいんでしょうか…」
私が言うと妙子先輩は私の目を見て言う
「仕方ないわ…。こればかりはウチでもどうしようもない。いつか報われるときが来るまで、そうしてるしかないのよ…」
「…可哀想な『者』達…ですね…」
私達はもう一度海のほうを見た。可哀想な『者』達を見ていた。いつの間にか夜になっており、月が明るく照らしていた
「…ここはもう解決したわ。そろそろ帰りましょう…」
「ええ。そうね」
「はい。すっかり遅くなってしまいましたね」
「先輩達、いきましょう」
私達は可哀想な人達を見て、帰ろうとした。風が少し弱まって寒い感じが無くなったのが身にしみて思った
亡霊にもこんなのがあったなんて…
私はまた霊のことを勉強したわ
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