第15話「山道の井戸」

…キーンコーンカーンコーン


今日も一日、終わったけど終わってはいない。なにせ部活があるからだ。それは嬉しいことだ


前に妙子先輩と一緒に行った雑居ビルがまさか崩壊するとは思わなかった。朝食食べているときにそのニュース見たけど


怪我人がいないのは幸いだったけど、きっと悪い霊が消えて崩れ去ったんだろう。そう思いたい


やれやれ…色々とあるなあ。まだ私なんか高校生なのにもういろんなことを体験している


学校の幽霊だったり散歩道の幽霊、廃神社のことや前に行った雑居ビルの怪奇。結構経験してるわね?


まあ楽しいからいいんだけど。楽しくなかったらすでにあのオカルト部は辞めていると思うし


次はどこに行くのだろう?私はワクワクしながら行こうと思っている。きっとまた楽しいことだ


私の黒い髪さらりとなびかせながら進もうと思う。楽しみでたまらない、オカルト部へ



部室に着いた。もちろん、ここに入る。すでに先輩達がいるだろう


私は意気揚々と扉を開く!もう何度もこの思いっきりドアを開くっていう行動をしている


開いたら今日は雅先輩と桃子先輩がいて、当然ながら妙子先輩もいた。私を見て笑顔になっていた


「やあ愛子ちゃん」


「お疲れ様です愛子さん」


「…愛子。来てくれて嬉しいわ」


この人数で、この集まりをしていること自体嬉しいのだから


私は早速妙子先輩の隣に座る。妙子先輩、とてもきれいだし優しいし私はこんな先輩持って良かったと思うわ


「さてさて。愛子ちゃんが来たから今日の行くところを紹介しましょう」


そう言って雅先輩はバサッと地図を広げた。前に見せたオカルトのある場所に◯を付けた地図だ


「ここどうかしら?井戸がある場所。処刑場になっていて、もしかしたら人魂があるかもしれないってところ。ここに行くわ」


ああそんなところ言ってたわね。でもここは遠いのではないだろうか?


「愛子さん大丈夫です。ここはそこまで遠くはありません。バスですぐにいけます。まあ山道はありますが」


「…心配しないでね愛子。ウチ除霊のグッズあるから。万が一があっても大丈夫よ」


頼れる妙子先輩がいれば安心だ。…あれ?私は結構妙子先輩に対して安心できる先輩って思うようになっている


「わかりました!ではいきましょう!」


「よし。そうとなれば早速行動よ」


私達はすぐに準備してその場所へと移動することになる



ゴトゴト…


私達はバスに揺られてその場所へと向かった。もうあまり人がいない時間帯のバス。客は私達ぐらいだった


雅先輩と桃子先輩は隣同士に。妙子先輩と私は隣同士だった。妙子先輩の優しい気持ちが私はいつの間にか気に入っていた


「そういえば雅先輩」


「ん?何かしら?」


私は雅先輩に質問をした


「雅先輩って私と妙子先輩がいたとき、いなかったですよね?何かあったのですか?」


私が言うと2人は顔をあわせる。…この2人って妙に顔をあわせることが多いなあ


「うん。実はね。私ちょっと勉強があまりできなくて桃子と勉強してたのよ。桃子、優秀だから私へ教わったの」


…雅先輩が勉強できないなんてそれは初耳なことを聞いてしまった


「すいません愛子さん。この人結構勉学が苦手なので…わたくしがアドバイスしないと本当に赤点ばかり出すのですよ」


「そうだったんですか。わかりました」


そんなことなら仕方ない。もちろんこの学校にも定期テストはあるからね


「今度赤点取ったらガチでやばいことになるからね…。例えばこの部活に行けなくなるとか…」


そう言うと雅先輩は頭をかかえた


私も勉学は得意ではないが、ある程度は点数は取れているため大丈夫だと信じておこう


そう思いながら私達は目的地へと向かった


(…この2人。実は付き合っているって話をいつしたらいいかしら。ウチにはバレているのよ…)



「…到着。しましたね」


バス停から降りて目的地のある場所に。果たしてここにあるのだろうか?


前は道路。後ろは山。ここにそんなものがあったなんて思わなかった


「ここから山道に入るんですよね?」


「ええそうよ。いきましょう」


雅先輩が先頭になって進む。山道かあ。キツイのは辛いなあ


山に入り、道へ。しかし、山道に行くとあまり辛くはなかった


理由は山道にはすでにコンクリートで舗装された道があった。てっきり砂利道を歩くのかと思ったからだ


夕日を浴びながら、私達は進む。前に雅先輩と桃子先輩。後ろに私と妙子先輩がいた


こういうときは妙子先輩が前だと思うけど、違うのかな?


山道を歩いて十数分。目的地が見えたみたいだ。その目的地は舗装はされておらず、草が生えている


「あったわ…ここよ」


ここはあまりにもシンプルな場所だった


広い敷地内に井戸と休憩場所であろう東屋があり、地蔵があった。きっとこの地蔵は処刑を成仏させるためにあるのだろうか?


井戸があることは確認できた。その井戸も今でも使えそうだ。しかしそんな気にはならないだろう


私達は回りを見渡して井戸に近寄った。すると妙子先輩は言う


「待って…。ウチが回りを見てくるわ…」


妙子先輩は言いながらウロウロし始める。きっと霊的なものを確認するのだろう


彼女はカバンから何かを取り出した。おや?これは初めて見るものね?


水晶玉であった。誰が見てもそういう表現になるだろう。これでどうするのだろうか?


「霊的なもの…あるかも…」


妙子先輩は玉を手に取り、あちこちに玉を捧げて確認する。きっと光ったら何かあるに違いない


「妙子先輩…」


「一旦彼女に任せたほうがいいわ。何かあるといけないから」


少しの間、彼女に任せると私達のほうに戻った


「…安全が確認できたわ。色々調べてみましょう…」


私達は妙子先輩の許可を取ると色々と見て回った。しかし見て回るというより井戸のほうが気になってそちらに行くことになる


「この井戸が…処刑場のやつですか?」


私はちょっと日本語っぽくないことを言う


「そうよ。でも妙子が安全を確認できたってことはここ、あまり心霊スポットではないのかな?」


私達4人は井戸のほうを見る。奥には何もない。当然暗いままだ


「…ちょっと水、くんでみましょうか」


雅先輩がそう言うと妙子先輩はゴソゴソと取り出したものがあった。前雑居ビルで使った清めの塩だ


まだ使える井戸をゆっくりとバケツから汲み出していた。チャポと言う音があるから水はあるのだろう


ゆっくりと。ゆっくりと。汲み出す。そして私達が見える範囲で井戸のバケツが現れた


「まあでもただの水だからあまり興味はないけど…」


…何かあった。そのバケツの水は真っ赤に染まっていてまるで鮮血のような色だった


私達4人はびっくりする。雅先輩はそれを見ると絶叫した


「きゃあああ!?」


「…ふん!」


妙子先輩はすかさず清めの塩を投げていた。清めの塩が効いたのかわからないが、みるみるうちに赤色から透明の色になった


「こ、これは一体なんですか!?」


「…もしかしたら霊的なものがこの井戸に残された可能性があるわ。水晶玉で確認できたのは回りのみ。井戸に何かがあったに違いないわ…」


やっぱりここは処刑場のたぐいだったとは…一瞬のことで理解できなかったが、あまりにも怖かった


「さて、もう止めましょう。暗くなると何が飛び出てくるかわからない。きっと、亡霊のようなものが…」


確かにその通りだろう。おそらく夜、ここから霊が出てくるのだろう。そうしたら妙子先輩でも無理な範囲かもしれない


「わ、わかったわ!もういきましょう!」


時刻は夕暮れすぎ。夜も近くなった。私達はさっさと帰ることにした


「最後にひとつ。札を持って…はっ!」


妙子先輩は帰るときに井戸に札を貼った。これで霊は落ち着くのかもしれない


「夜が近いわ…。さっさといきましょう」


私達は井戸から離れて、帰ることになった。無論、夜道は危ない感じでもあったが…



今日も刺激的で良かったなあ


次はどうなるんだろ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る