第14話「雑居ビル」

…キーンコーンカーンコーン


今日も一日終わった。いや、終わったわけではない。授業だけが終わったのだ


私、愛子はいつもオカルト部のことを楽しみにしていた。だってホント面白いことだらけだもん


嬉しい?というか色々あるし霊感を持つ私としてはこういうのはオカルトしかできないことなのよ


だからこそこの部活は嬉しい。雅先輩…というより妙子先輩に感謝しないといけない。そう思ったわ


みんな先輩だけど息苦しさは感じない。誰か同年代が入ってくればいいけど、そんな必要もないとは思う


しかし前の呪いの切り株に関しては驚きだったなあ。私はしらなかったし雅先輩もマークはしてなかったとは


さあさあもう行こう。私は軽い足取りで部活のある部屋へと行こうとした



というわけで部室まで来た。さあ、今日はどんなことするのかな


私は気合を入れて思いっきり部室のドアを開いた!ガラッ!相変わらずの薄暗い部室に誰かいた


…妙子先輩だった。部長がいてくれて嬉しい限りだわ。私は元気よく挨拶をする


「妙子先輩お疲れ様です!」


「…やあ愛子。貴女が来てくれて嬉しい限りよ」


私は早速妙子先輩の隣に座った


「先輩がいてくれて嬉しいですよ」


私はとびっきりの笑顔で言う。妙子先輩はそれを聞くとなんだか照れる仕草をした


「…そう?照れるわね…。あと、今日ね、雅と桃子はいないの」


「え?あの2人がいないんですか?」


確かに今日は2人の気配がしない


「じゃあ、どうします?今日は止めておきますか?」


「ううん…。2人でもできるわ…。今日は雑居ビルに行ってみましょう」


お?いきなり妙子先輩からの提案。もちろんだ私は断る理由なんてないだろう


「わかりました。いきましょう」


「…ふふ。貴女はとても聞き分けの良い子ね」


褒められた。部長に褒めてもらえるなんてとても嬉しい気持ちになる


「その前に…ここの雑居ビルは何かわかるかしら?」


「はい、墓地の上にビルが建てられたって話を聞きました」


私と妙子先輩、見つめ合って話をしていた


「そして、そこにはなにか亡霊がいるとのこと…この事をママに言ったら一応…魔除けの札を用意してくれたわ」


そう言って妙子先輩はガサゴソとカバンから札を取り出した


「…一応貴女も持っていなさい」


「ありがとうございます」


札を渡された。妙子先輩は早速立ち上がり、向かうことになった


「…いきましょう」


「はい!」


元気よく私は返事をした



私の通っている学園からちょっと離れて駅前近い場所にそのビルはあった


もともと大きいビルはこの駅前にはないが、それでもあることはある


私と妙子先輩はまるで仲良しのように喋りながら歩いていた


「…へえそうなの。お兄さんがいてその人も霊感の強い人なのね」


「そうです。色々と頼りがいのある、良い兄なんですよ」


お兄ちゃんに関しては私は嘘偽りを言わずに言った


「…いいわね。私、一人っ子だからそういう兄妹は羨ましいとは思っているの」


そうだったんだ。一人っ子は珍しいことではないが、そういえば雅先輩と桃子先輩は誰か姉妹兄弟いるのだろうか


そう思ったらいつの間にか問題の雑居ビルへと到着した


「…ここね」


その雑居ビルはどうも古臭いというイメージがあった。辺りを見渡すとヒビが入っていたり窓もちょっとヒビがあった


こんなところに霊はいるのだろうか?疑問に思っていた


「…愛子。ウチが先頭に立つから後ろを着いてきなさい」


妙子先輩が先頭に立ってそのビルへ入ろうとする


「あ、でも何もないビルって施錠されているんじゃ…」


そう思ったらビルの入口が何事も無く開いた。あら、案外簡単ね


「…ある意味管理が整ってない場所」


妙子先輩はぽつりと言うと私も着いていく


入口に入るとその雑居ビルはすでにテナントがないのか散乱としたものが多かった


まだ日差しがあるため中は明るかった。何があるのだろう?


「先輩。ここは…」


「…異常は見当たらない。上に行けばわかるかも…」


もう一階のフロアは異常がないため次へ行こうとした


ここは妙子先輩を信じて着いていこう。そう思った私だった



2、3階と調べたが、異常は特に無かった。なんだ、大したことないじゃない


いよいよ最後の階、4階の扉を開こうとした。すると妙子先輩はドアを開ける前にピタッと止まった


「…妙子先輩?」


「…怪しい雰囲気してるわね。札を持って愛子」


やはり怪しかったのはここだったか。そう言われてカバンから札を持った。緊張感が走る


ドアを開いたら何もない場所だった。しかし思う。ここはなにかある、と


ドアから入ってすぐのところになにかあった。まるで墓地のようなものが、そして私は見えていた


「誰かいる」


「…この世のものじゃないかもしれない」


私と妙子先輩は近寄る。きっと危ないものだと思う


近寄ったらその誰かがいた。黒く、嫌な雰囲気をした『者』が


「ねえ妙子先輩…」


「せやっ…!」


なんと先輩は私の言葉を聞かず札をバシッとその『者』に当てた。するとその『者』は気付いたのか知らないが、興奮するような声を上げる


「がああああ…!!」


効いているのか効いてないのか知らないがきっと苦しい声であった


「愛子…!勇気を出してもう一つの札をこいつにバシッと付けなさい…!」


「は、はい!」


そう言われて私は狙ってその『者』に札をバシッと付けた。その『者』は更に大きい声を出していた


「が、がああああ!!ああああ…!!」


その『者』は倒れた。そして成仏した。しかし妙子先輩はまだ終わってないのか、次に墓地っぽいものまで行く


カバンからガサゴソ取り出して、粉状のものを墓地に思いっきり振りまいた。なんだこれ


「先輩!これは!?」


「清めの塩ってやつよ…!これでこのビルに悪は消えたわ…!」


確かに墓地っぽいものがヒビが割れて崩壊した。清めの塩ってこんな効果があったなんて


「…さ、逃げましょう愛子」


「え?逃げるんですか?」


キョトンとする私に妙子先輩は言う


「地主が崩壊したからここも崩壊するわ…!さっさと行くわよ…!」


妙子先輩は私の手を持って下へと下っていった


3、2、1階と進み出口へ。出れないんじゃないかと思ったら、そうでもなかった


私達はようやく外に出れた。夕方過ぎの時間になっていた


「はぁ…はぁ…」


あまりにも駆け足だったもんだからちょっとだけ息切れしてしまった。しかし、妙子先輩は平気な顔をしていた


あれ、妙子先輩って退院したばかりだから体力は…あるのかもしれない


「…お疲れ様愛子。ここはもう、建物としては霊のある場所じゃないわ」


「ここは一体…!?」


一呼吸置いて、先輩は言う


「…前に言ったけど、この雑居ビルは霊の集まる場所。人がいないからすでに霊がどこか行ったか、無くなっているのかもしれない。

あの霊もきっとここにいてもし何かあったら襲おうとした『者』だったのよ。…でももう安心ね」


そう言ってもう一度先輩は雑居ビルを見た


「…いずれ崩壊するでしょう。さ、もう帰りましょう」


「は、はい」


私は妙子先輩と一緒に帰ることにした。とても、怖い思いをしながら…



「…続いてのニュースです。白坂街のある雑居ビルが崩れ落ちたという知らせがありました。ここは何も使われていないビルでした

なぜ崩壊したのかは不明ですが、おそらく老朽化が原因で崩れ落ちたのではないかと思われます。怪我人はいませんでした」



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