第5話「銅像の犬」

「…で、次は銅像のほうですよね」


私たちは一旦外に出る。すっかり夜に近い時間帯となりあたりは暗闇に包まれている


さっきの幽霊は可哀想だったが、犬が出るとはどういうことだろう?狂犬じゃなきゃいいが


登校口から外に出る。銅像は学校の敷地内にある場所だ。そこに行けばわかるのだろう


「でも先輩。その幽霊の犬に噛まれたり襲われたなんていう事件はありますか?」


そう言うと雅先輩は言う


「ううん。ないわ。だからこそ不気味ってやつなのよ」


なるほどなあ…会ってみないとわからないやつだろう


私たちは銅像のほうへ行く



銅像の近くに着いた。やはり静寂である。銅像には初代校長の銅像があり、その周りにはきれいな花があった


きっと宿直の人が育てているに違いない。あまり荒らされた様子もなく、普通にきれいな花壇があった


周りを見渡す。どこに犬がいるんだろうか?


「…どこにもいないなー?」


どこ見渡してもいない。やっぱり出る出ないの差があるのだろうか?


「多分いるはずよ」


雅先輩は決まったかのように言う。しかしどこに…


「わおーん」


…ん!?今わんこの声がした!どこかにいるのか!


「いますね…!間違いなく!」


桃子先輩は大きい声で言った。そして次の瞬間、私は下から出てきた犬を見た


「あっ…!」


襲われる!?…とおもいきや、ただ地面から出てきて私を見つめる、中型犬がいた。中型犬は地面から這い寄って全体が出てきた


しかし、その姿はあまりにも怖い。肌はただれて、血が付着している。これは犬嫌いが見たら速攻で逃げそうだ


だが不思議だ。その犬を冷静に見ても私と先輩たちを襲おうだなんてしない


存在をわかってくれたことが嬉しいのか、それともこの人間は大丈夫だと犬の感なのか。それはわからない


むしろよく見たらしっぽ振ってるじゃない。人懐っこい犬なのだろう


安全だとわかった私はゆっくりとしゃがんで犬と目線を合わせた


「…わんこ。私はあなたが見えるの。もしかしてそれが嬉しいのかな?」


「わん!」


元気のいい返事をいただいた。私はゆっくりと犬の頭を触った。どこか嬉しい気持ちなのか、しっぽをまた振った


「もう、遠吠えとかして迷惑かけちゃだめよ?」


「わん!わん!」


幽霊になってもきっと元気なのだろう。後ろにいる雅先輩も、桃子先輩も、決して逃げようとはしなかった


「わおーん」


一回遠吠えをしたら、その体は静かに光になっていった。やがて全部の体が光となり、上空へと上がっていった


もしかして成仏したのか?私は見えなくなるまで光を見ていた。きっと飼い主のもとに行ったのだろう


「…行っちゃった…」


もう、この付近で幽霊の犬を見ることは無い。成仏したのだから


「愛子ちゃん。大丈夫?」


後ろで雅先輩が来てくれた。全然大丈夫だ。何もされていない


「ええ、人懐っこい、とてもかわいいわんこでした」


「幽霊を可愛いだなんていうのはあなたぐらいしかいないわ…」


雅先輩先輩が言うとその隣にいた桃子先輩は銅像の前まで行く


「どうしました?」


「…実は、これは話で聞いたんですが、初代校長はとても犬好きでした。何匹も飼っていて全部の犬を愛してました。

きっと、この犬はここで埋められたのはわかりませんが、きっと愛されて育てたから誰も襲わなかったんだと思います」


そうだったのか。きっと幽霊になっても飼い主を探していたとなるとちょっと悲しいことだった


「じゃあ幽霊の犬は飼い主のもとへ行ったんですね」


「そうでしょう。わんちゃん、良かったですね」


決して成仏せず、ここへ立ち止まっていたのか…私はまた不思議な刺激を味わった


「さあ、もう帰りましょう。屋上は鍵閉まってるからいけないし」


「はい。わかりました」


「今日はあなたが来てくれたことが嬉しい気持ちです。どうぞよろしくお願いしますね」


雅先輩と桃子先輩は笑顔で言ってくれた。よかった。このオカルト部、うまくやって行けそう。そう思った私だ


夜になった校舎。これ以上の不思議はあるのだろうか?私たちは門まで行き、そして帰った



明日もどんな刺激が待ってるだろうか?


早く寝て登校しようっと



続く



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