第4話「自殺した少女」

「この学校にも、きちんと怪談話があるの」


そう言うと雅先輩は真面目な顔をした。良かった。怪談話があるなんて嬉しい気持ちよ


今は夕暮れ時。そろそろおばけたちが動く時間となった。きっとホラーの時刻となったね


私はワクワクしながら雅先輩の顔を見た。相変わらず真面目な顔をしている。どういう感じなんだろう?


「先輩!ぜひとも聞いてみたいです!」


私が言うと雅先輩と桃子先輩はまた顔を合わせて再び私の方に顔を向けた。よくアイコンタクトするわね?


「この学校には数か所、あるの」


雅先輩が一言言うとまた口を開く


「まずはトイレ。そこには首を吊って自殺した女の子がいるらしいわ。そしてあまり使われないとされる3階の部屋…そこにいるの。

次に初代校長の銅像には犬が眠っているとのことよ。夜な夜な遠吠えを発してまるで犬がいるかのような声があるの。

そして屋上には引き裂かれた恋人同士がいて、そこに行くと飛び降り自殺をしそうになる、そんな逸話があるのよ」


ふーん…なかなか面白い…むしろそういう話があるとは知らなかった


「ありがとうございます先輩。私、実は霊感が強いほうで普通に幽霊なども見えてしまうんです」


私は霊感があると告白をした。口が開いたのは桃子先輩のほうだった


「なるほど。では私たちも一緒ですね。私と雅は霊感が強いほう。でもあなたみたいな恐らく霊感はもっと強そうな人だと思います」


なんと。雅先輩も桃子先輩も霊感が強いほうだったか。これは非常に面白くなってきた


「なら、行きません?まずはトイレのほうから」


私が言うと2人は再び顔を合わせていた。アイコンタクト、多いわね?


「わかったわ。じゃあ早速行きましょう」


霊感の強いとされる私と先輩たちは早速曰く付きの場所へ行く



すでに夕暮れも終わりそうな時間帯だ。私と先輩たちは3階のトイレへと向かった


ん?待てよ。トイレとは言うがどっちだ?男子?女子?


「先輩。トイレと言ってもどっちですか?」


そう言うと雅先輩はすぐに答える


「女子トイレよ。大丈夫、デリカシーの無い場所じゃないから安心して」


そっか女子トイレか。既に人のいない廊下に私たちは歩いていた。でも雰囲気あってとても良いわ


「ここよ」


学校の隅に近い場所にトイレはあった。何が出るんだ?でも私は恐怖なんてものは一切なく、ワクワクするしかなかった


「じゃあ入りますね」


がらがら…女子トイレのドアを開けた


女子トイレだからと言って別に変わったものは無い。個室が3つあり、洗面台もある。そういうトイレだった


私はあたりを見渡す。うーん。別になんか変わったとこはないなあ


…びびびっ


私は一瞬ぞくっと背筋に刺激が走った。間違いなく何かいる。この感覚は…幽霊だ


「先輩。私にまかせてください」


「えっ、どうしたの?」


私はその刺激の通りに個室トイレのドアを開けた。ちょうど個室トイレ3か所目か


個室トイレの場所にいると私はドアを開いた。ぎぃぃという音を発してその場所を見た


ぶらーん…ぶらーん…


そこにはトイレの上から首を吊った人間がいた。これは…!だが生気は存在しない、普通の幽霊だろう


もし生身の人間なら生気はあるだろう。この子は一切そういうのを感じない


私は慌てなかった。これは幽霊。まるで待ち構えたかのように存在した、既に死んでる幽霊だ


…首吊りロープを切るべきだろう。しかしどうしてこのままだったのだろうか?


私はポケットからポーチを取り出して小さいはさみを用意した。これで切れるだろうか?


だがそんなこと思ってなくても、首吊りロープは切れた。ぷつん。と


その幽霊は一瞬だけ倒れる。だが、すぐに立ち上がった


「何かいたの!?」


雅先輩が声を大きくして言う


「大丈夫です先輩!幽霊でした!」


「まあなんと…噂は本当だったんですね」


桃子先輩の声を聞くともういっかい幽霊のほうを見た


幽霊は立ち上がってゆっくりと前を見る。とても美人の顔をした幽霊だった


「…あなた、私のこと…見えるの?」


幽霊はゆっくりと声を出して言った。私は何事もなく言う


「うん、見えるわ。どうしてこんなことに?」


まず事情を伺うことになった。幽霊はゆっくりと説明をする


「…私ね、いじめられてたの。ひどいいじめがあって…それで人生が嫌になってここで死んだの。でも死ねなかったの」


「…死んでそのいじめっこに復讐しようとは思わなかったの?」


幽霊は髪をさらっとして言う


「…ううん。死んでしまったほうがましと思って、魂だけここへ残ってるの。でも嬉しい。あなたのような優しくしてくれるの」


美人の幽霊に薄っすら涙が溢れていた


「だったらもう、天国に行ったらどうかしら?ここへいても意味ないなら、どんどん悪くなっていくよ」


「…窓を開けてくれないかしら?」


幽霊は窓のほうへ指を指した。なんだろう?私は黙って窓を開けた


すると幽霊は窓の方向に吸い寄せられて消えそうになった


「あっ!」


「ありがとう。さようなら」


そう言うと幽霊は窓に吸い込まれ、やがて消えた


…一瞬の出来事だった。私はぼんやりと窓を見ていた。そして後ろから声をかけられる


「愛子ちゃん!」


私は先輩の声がしたので先輩のほうに向ける


「大丈夫!?何も怪我してない!?」


先輩は心配そうに私を見た。私は至ってシンプルに言う


「平気でした。あの幽霊、きっと天国へ行ったんだと思います」


私はもう一度幽霊が出た窓を見た。もう開けなくていいだろう。窓をしっかりと閉めた


「さっき幽霊から聞いたけど、いじめがどうたらって言ってたわね?」


「はい。きっといじめで自殺して、魂がここへ残っていたんでしょう」


しかし自殺したなら大きなニュースになってたはずなのにどうしてそんなニュースが流れなかったのだろうか?


あまりにも可哀想な幽霊だった。私は思った


「さ…次に行きましょう」


「…そうね。次は銅像ね」


私と先輩たちは女子トイレのドアを閉めた。もう二度と、こんな悲惨なことが無いように願って…



続く



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