第7話

ある日、僕は下校中見知らぬお年寄りの荷物を運ぶのを手伝っていた。

「ありがとうね、坊や。助かったわ」

感謝された。感謝?そう言えば、僕は今まで感謝されたことがあっただろうか。あったとして、それを全く覚えてないのは何か妙だ。思い出せ、あの時の記憶を、、、


「きょうはともだちのけしごむひろってあげたんだ!すごいでしょすごいでしょ?」

すると両親は血相を変える。

「なんてことをしたんだ!?良いことは私たちにだけすればいい!私たちにだけだ!」

「ごめんなさい、、!」

その横で、僕より少し年上の1人の少女が羨ましそうな目でそれを見ていた。


「、、」

「どうしたの、坊や?具合でも悪いの?」

「あ、いえ、大丈夫です」

思い出した景色にいたのは両親と謎の少女。どこかカエデさんに似ている気がした。まさか、彼女は、、っていうか、そもそも僕の両親って、、、

(思い出したみたいだね、烈火。これが嘘偽りのない真実だ)

そ、そんな、、じゃあ、父さんと母さんは、、

(ああ、君の想像する通りだ。これで僕の目的は果たされた。後は頑張ってね、烈火)

そう言い残し、律人と一太は消えて行った。

僕は全てを思い出し、絶望した。僕の両親だと思っていた人は実は幼児をさらい、自分好みに育て、気に入らなければ即殺す、快楽殺人者だったのだ。僕はそんな二水夫婦に誘拐された子供の1人で、偶然にも彼らに気に入られ、実の息子のような待遇を受けた。カエデさんは二水夫婦の実の娘だったのだろう。二水夫婦の愛情は全て僕に流れていた。それが彼女には許せなかったんだ。それであの時、、、

「おい、ダメ息子」

「か、カエデさん、、、」

歩く僕を止めたのはカエデさんだった。

「ごめんなさい、僕は結果としてあなたに孤独を与えてしまった。それを、、、」

「御託は聞かない。手短に言う。乃木鼎を誘拐した。返して欲しかったらこの近くの空き倉庫に1人で来い。警察に漏らしたら人質は殺す。

カエデさんはそう言い残し、風のような速さで消えて行った。

、、、今の僕には頼れる人格がもういない。だけど、過去の因縁にケリをつけるため、そして鼎先輩を助けるため、僕は空き倉庫に向かった。

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