第4話 公城へ
「アリシア様いらっしゃいますか?」
セイレーンについた後、直ぐに白き薔薇団に報告に向かった。
「あっ、アレックス君。おお帰り、早かったわね、執務室に来て。」
「はぃっ。」
僕は、執務室に入り、盗聴除けの魔導具を発動させた後、アクアの状況を報告した。
「あー、ヤバいわね・・・。下手すると殺されるわよ。」
「えっ、本当ですか。」
「本当よ、状況わかってる?」
「一応、色々な人が色々悪さをしてるかも知れないから、訳分からなくなってますけど、ベルノールド子爵様が関わってるとすると、不味いですかね?」
「うーん。そんなレベルならいい方よ。最悪は、隣国バルザック王国が本気で絡んでいるパターンだから。下手すれば中央貴族が絡んでるわ。セイレーン公爵家に喧嘩を売れるくらいのね。リーハイムに話しておいた方が良さそうね。この後城に着いて来なさいね。」
アリシア様は、妖艶な笑みを浮かべた。
「リーハイム様って、リーハイム・セイレーン次期公爵閣下?」
「うちのお兄ちゃんだから大丈夫よ。お兄ちゃんレベルの人と話せるようになっていかないと、この後持たないわよ。」
「はぁ。」
そう言われ、アリシア様とランチを食べてアリシア様の豪華な馬車に乗り城に向かった。
「こんな格好で良かったですか?」
「大丈夫ですわ、私もドレスでないから。城内は私の三歩後を歩きなさい、それであなたは私の従者と見られ、問題は生じませんから。」
「はぁ。」
城に着くと、いつものように巨大な門に圧倒された。人間族だけで人口1億4千万を有するセイレーン公爵領。その中心部公都セイレーンの中心にある公城セイレーン。別名水精宮殿と呼ばれ、周りを水掘りで囲まれている。大理石を基調とした作りで、急セイレーン公国時代から500年以上続くセイレーン公爵家の居城である。作りは優雅だが、実用性を重んじ、過度な華美を好まない作りとなっている。公都セイレーンを囲む淡水湖セイレーンを含むセイレーン周辺の天候をコントロールしている魔導施設もこの城の中心にあると言われている。その為、いくら騎士爵家の僕でも入れない所だらけで、父も出入りできる所は、極めて限定されていると聞いている。
「いつ来ても、大きいですね。」
僕は、城の停車所で馬車を降り、城を見上げた
「大きすぎて、いつも修繕工事してるのよ。」
「そうなんですか。」
「古いですからね。アレックス君が無闇矢鱈と土属性の魔石を持ってきてくれれば、修復工事はすぐ終わって、セキュリティも強化できるんだけど。」
「わかりました。アリシア様のご指示通りに。」
「よろしいわ。うふふふ。」
「何ですか?」
「アレックス君、その素直でよろしい。はいこれ。」
僕は、アリシア様からのメモを受け取った。
「ご指定の素材の調達先リストよ。レッドドラゴンの肝以外は入手出来そうだわ。手配しといたから。レッドドラゴンは、西のイフリート公爵領イフリートの第1迷宮の35階以下にいるらしいわ。貴方ならなんとか出来るかもしれないわね。」
「アリシア様のご威光のままに。」
「ぷっ、その返答誰に教わったの・・・。」
「サリーさんから・・・。」
「わかったわ。サリーね・・。そんな感じで居れば良いわ。行くわよ。」
「はい。」
僕は、アリシア様について城の中に入っていった。城の入口は入ったことがあるが、直ぐに僕が入ったことのない所に向かっていった。アリシア様が通ると当然の様にみんな道をあけ頭を下げてく。流石、公爵姫って感じだ。どんどん進んでいくと、傷ついた騎士たちが足を引き摺りながら扉から出てきた。
「アレックス・・・。」
「父上。」
父上が、体中に包帯を巻いて出てきて声をかけてきた。
「あら、リバース卿じゃないの。どうしたの、大きなけがで・・・。」
「アリシア様。お恥ずかしい公爵領東部のバザーモン公国と、東ドワーフ自治領のいざこざを治めに行った際に、戦闘になり怪我を負ってしまいまして。最近中級ポーションの供給が少なくなっておりまして、命に支障がない私の傷の治療を後回しにしております。」
「父上、このポーションを。ロードベル様の所で仕入れたものですから。」
「アレックス、ありがとう。お前には苦労を掛けるな・・・・。」
僕が、中級ポーションを差し出すと、父は素直に受け取ってくれた。
「いえ、これもアリシア様とアリア様のご威光のおかげです。」
「言うようになったな・・・。」
「リバース卿、アレックス。よろしいですか。」
「すみません。アリシア様。ポーションの供給が少なくなっているというのは、私の耳には入っていないのですが。」
「そうですね、徐々に供給が減ってきたという感じですね。薬師が減っているのか、原料が減っているのかわかりませんが・・・。」
「アリシア様。父上、その点について、後でご相談があります。父上って騎士団でもある程度偉いんですよね・・・。」
「偉いって・・・。必要があれば、団長室にノンアポで入れるくらいにはな・・・。」
父上は、少し自慢しているようだった。
「では、後で執務室に寄ってよろしいでしょうか。」
「治療が終われば、アリシア様の執務室にこちらから伺おう。」
「良いでしょう。では行きますよ。アレックス。」
「仰せのままに。では、父上後程」
「でわな。」
父と別れた僕達は、リーハイム閣下の執務室に向かった、閣下の部屋は、公爵家専用エリアの3階にあった。
「アリシア様。」
「兄上はおられますか。」
リーハイム閣下の執務室に着くと扉を守る騎士が、訝しげな顔でこちらを見ていた。
「中で執務中です。ご訪問はお聞きしておりませんが。」
「そうですわね。では、アリシアがアレックス君を連れてきたとお伝えください。」
アリシア様がなぜか、大きな声で騎士に話すと。
ドカドカドカ・・・ドーン
と、大きな足音が響き、扉がぐわっと開いた。中から巨人とも思わせるほどの強靭な体を持つ男が出てきた。
「アリシア、アレックスを連れてきたと・・・。」
「はいお兄様、とりあえず入りますね。そこを開けて下さいね。」
「なに。わかった・・・。」
(多分)リーハイム閣下は僕を睨み付けた。アリシア様に続いて入っていくと、アリシア様がソファーにちょこんとすわり、僕にも座るように促した。(多分)リーハイム閣下が睨み続けている中、僕は席についた。(多分)リーハイム閣下も席に着くと
「で、アリシア、何故、悪い虫を連れてきた・・。」
とドスの効いた声で、話しかけてきた。
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