第13話 出口を目指して
「は?何?」
モンスタールームを出ると、そこは溶岩地帯だった。
「暑いだよ~」
天井まで約100メートル、見渡す限り岩場でそこここに剥き出しの溶岩池がある。天井と岩場の間には翼竜が飛んでおり、巨大な亀が遠くに見える。天井から、斜めに線が地上に向かって見えるが、多分あれが、上の階と繋がる階段だろう。あの線と地上の付け根を目指して歩けば上の階に行けるはずだ。一般的に、10階までは洞窟型か、迷宮型で、20階までは草原や、森林が加わり、それ以降は何でもありと言われる。各クランは迷宮の攻略中は、常にマッピングし、マッピングデータを冒険者ギルドに提供し、共有するルールになっている。今回は当然地図を持ってきていないため、階段だけが頼りだ。
「ここ何階なんだよ。」
そうぼやきながらも、合う敵合う敵、ホネ吉と、ゴブ吉が倒しながら、ロッシをうし吉の背に乗せ進んでいった。僕は警戒しつつ、実際は歩いているだけだが、暑さと疲労で、ふらつく程になっていた。
「あっ、」
ふらついた足がもつれ、溶岩に突っ込んでいく、
さっ
ゴブ吉が、僕の首元を掴み、助けてくれた。
「ありがとう。」
ゴブ吉に、感謝すると。満面の笑みで返してくれた。幾ら体力を強化し、体力を回復しながら来ていても、人の身で有れば腹も減れば、心も削られていく。
「流石に休むか。」
飲み物は、飲んできたが、何も食べていなかったので、狼を取り出し、溶岩で焼いて食べた。召喚獣は、腹が減らないので、周りで、モンスター討伐に励んでいる。
「それにしても、このパーティーって、僕要らなくない?」
と率直に感じていた。残りの肉をバックにしまい、みんなを集めて再出発した。とにかく上に登る階段を目指し、多分深夜になる頃に階段に着いた。各階の出入りは、門になっており、スタンピートが起きない限り、原則モンスター達は門の出入りは出来ない。この階の階段は自動的に上がり下がりする階段になっていた為。僕は上の階に着くまでに寝てしまっていた。
「はっ」
時間の感覚がおかしくなったが、多分3時間位寝ていただろう。召喚獣達は、うし吉とウサ吉を残して、周辺のモンスターを狩りに行っている。
「いくか」
と、起きて、周りを見ると、単なる岩場で、階段は遥か先だった。僕は、うし吉と一緒に歩いていくのがやっとで、召喚獣達は、元気に狩りに勤しんでいる。出来るだけ早く、ロッシの安全を守りつつ階段に・・・・。僕は、食事休憩のみで、この階をこえ、次の丘陵地、谷間を約1日でこなしていった。谷の階段を上がるとそこには巨大な扉があった・・・。
「ボス部屋・・・。」
僕は、ストレッチをし、準備を整え、気合を入れて、ボス部屋の扉を開いた。中には8つの赤い光が見えた。うっすらと姿が見えてくる、黒い肌のミノタウロス、赤い鬼、王冠を被ったオーク、緑のドラゴン。
「は?」
彼らはいきなり襲ってきたので、反射的に火の属性魔石を4つ投げつけた。
ドーン
一瞬で、4体のモンスターは吹き飛びクリアした。迷宮のボス部屋で初めて攻略するとそれぞれ攻略時間に応じてボーナスドロップが手に入るが、今は見ている余裕がないので、とりあえず切り抜けて、ボス部屋前のモンスターのいないエリアで仮眠をとった。
起きてから、上に上がると(多分)19階は、森林だった、今までより一回り小さい感じで、階段まえの距離は短くなったみたいだし、森林にはそれなりに整備された歩道があった。左右から、猿やら、鳥やらが急襲してくるが、スラ吉が悉く防いで、ゴブ吉とホネ吉が殲滅してくれるので、僕は次の階に急ぐのに専念出来た。(多分)18階の竹林、(多分)17階の海岸を越え、(多分)16階のなだらかな岩場についた、当然の如く階段に進んでいくと
「やったぜ。」
「やっぱりここのホークリザードは倒しやすいし、沢山出るから金になるな・・。」
「私の魔法が有ればね。」
「姉さんありがとうです。」
とそんな会話が聞こえた。
「やった人だ、助かる・・・・。」
基本的に、冒険者達は助け合い、あとでお金は請求されるものの、迷宮で死にかけている冒険者を見つければ、助けて入口まで連れてってくれる。これで助かる。そう思って近づいていくと、
「やっぱり、ブラックタイガー入って良かったです。」
「ハンソン、そうだろ。ボスは怖いけどな。下部組織だと、あいつらの様に扱き使われて死ぬまで働かされるけど、実力があって、本体に入れば、倒すのに専念出来て、楽チンだからな・・・。」
「お前達も、実力をつけて上がってくれば、こんなドロッパーにならずに、ちゃんとした冒険者出来るからな、いひひひひ」
「まぁ、入るときにブラックタイガーと聞かされるんだろうが、下部組織の名前をこっそり入れた契約書を見ずに入ったのが運の尽きだよ。一度クランに入れば、明らかな暴力を振るわれたりしない限り、5年は辞められないルールだからな。」
「とりあえず、生きてけるだけの金はやっているんだ、頑張って生きて修行しろ・・。そんな余裕があればな。アハハは。」
「あ?」
「どうした?」
「そこに人影が」
「いるかよ・・・。居たとしても害はねぇよ。」
「そうだな次行くか、おめえら荷物持ってシャッキリついて来いよ。イヒャヒャヒャヒャ」
僕は咄嗟に岩陰に隠れた。岩場で良かった。あいつらはブラックタイガー。僕達をこんな感じにした奴の仲間だ。僕は息を抑えながら、
「危なかった、ブラックタイガーか、僕達下手すれば、後ろについてきたポーター達の様に荷物持ちながら、ドロップを稼ぐことをやり続けさせられたんだろうな・・・。」
僕は、ブラックタイガーの人達が居なくなるのを待って、次の階を目指した。(多分)15階の全面桜並木で一旦仮眠をとり、(多分)14階の向日葵畑、(多分)13階の丘陵、(多分)12階の草原、(多分)11階の平原を順調に進み、10階のボス部屋にたどり着いた。これまで、2組のパーティーを見たが、いずれもブラックタイガー系らしいパーティーだった。
10階ボス部屋に入ると、そこには、ミノタウロスと、オーガが2体づつだった。
「僕にやらせてくれ。」
そう言って、召喚獣達を止めると、僕は駆け出して、ミノタウロスに剣を切りつけた。
ポキッ
剣が折れた・・。格好つけて、何とか倒せると思って行ったのに、剣が折れるとは・・・。落ち込んでいる暇はないが、その一瞬を見逃さず、オーガが僕を殴りつけようとふりかぶり、僕に届く瞬間。
グザッ
ゴブ吉が格好よくオーガを瞬殺した。ホネ吉も、スラ吉も、ミノタウロス一体ずつを一撃で倒し、ウサ吉も一差しで、オーガを倒した。やっぱぼくは要らない子みたいだった。
悲しい気持ちもあり、9階に上り、安全そうなエリアで、ウサ吉以外をしまって、ウサ吉を抱き抱え仮眠をとることにした。モフモフ
「おい、大丈夫か?」
僕を起こす声が聞こえた。
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