第14話 助かった?

「おい、大丈夫か?」


 僕を起こしたのは、純情そうな美少女でもなく、キリリ二枚目の若い騎士様でもなく、むさいドワーフのおっさんだった。


「いえ、大丈夫じゃないです。」

「そうか、あのお兄ちゃん意識なさそうだものな。」

「ありゃ相当なダメージだな、腕を斬られてる。しかも、モンスター出なく人の手でだ。ポーションかけまくった感じだけど、2日いや3日位経ってるか。どうだい兄ちゃん。」


 30歳位の神官風で無精髭な、咥えタバコのおじさんが、睨みながら僕に聞いてきた。


「ご説明する前に、すみませんが、僕は冒険者学校の生徒ですが、皆さんは」

「私達は、白き薔薇団、第21パーティーで、私はリーダーの魔導士のサリーよろしくね。(キラン)」

「あっしは、戦士兼鍛冶師のパイソン、見た通りのドワーフじゃい。」

「私は戦士、ロドックよ。ウフーン。」

「俺はボルゾーク。神官だ。」


 綺麗なお姉さんと、うさ吉をモフモフしている逞しい「おねえさん」を加えた4人が、白き薔薇団の紋章のペンダントを見せて、自己紹介してくれた。


「白き薔薇団・・・助かったー。」


 そう言って、僕は両手を上げて伸びをした。


「はぁ、どういうことだ。」


 ボルゾークさんが更に凄みをつけて睨んできた。


「僕は、ナイトのアレックスです。そこで死にかけているのはファイターのロッシ。ロドックさんが持っているのは私の召喚獣うさ吉です。」


 僕は、4人を見据えて、深く深呼吸をし説明をはじめた。


「僕達は、ダンジョンアタック研修の期間です。」

「そう言えば、その時期だな、確かうちのクランでも4人程声をかけてるって言ってたな・・。」

「あっ、アレックスとロッシのパーティーってうちのクランで声をかけている」

「そうです。ロッシが白き薔薇団から声をかけて頂いていると聞いています。僕達は、先週末で3位でした。ロッシは、他にも誘いを受けていて、その中でもブラックタイガーと僕も入る方向で話を進めていたらしいです。僕は、何処のクランにも入る気が無くて・・・・。少なくても僕が入るのを断るように言ってくるようにロッシに強く言いました。そうすると、ロッシは、4日前だと思うんですが、一緒に訓練しようと言って、この迷宮に連れてこられました。」

「そこで、揉めてお前は、ロッシを?」

「ボルゾーク君、話の腰を折らないの。アレックス君続けて。(キラッ)」


 短気なボルゾークさんと、優しいサリーさんって感じで、僕の話を真剣に聞いてくれている。


「僕達が、迷宮1階の広い場所に行くと、3人の冒険者がいました。ブラックタイガーのサリークスさんという人と、長髪の中肉中背の男と、小太り髭面の男でした。多分20代後半かと思います。そこで、僕に対し契約しろと脅迫してきました。断ると殴りかかってきたので、僕は盾で防ぐと、今度は骨が折れたから慰謝料寄越せと。明らかにブラックタイガーのクランの人だとしたら弱すぎるし、プライド低すぎるから、ブラックタイガーの下部組織か、別の組織なんでしょう。じゃあ、ブラックタイガー本部で払いますよ言ったら、再度殴ってきたので、手刀で気絶させました。」

「ヒュー。度胸ある。」

「ある人に、勇気を持つように言われて、苦しかったですけど、勇気をもって言ってみました。サリークスさんを気絶させたとき、ロッシは他の2人に捕まって、2人はサリークスさんが死んだと思って混乱して、ロッシの腕を切り裂き、光る石を僕達に投げつけて、僕達は多分24階に飛ばされました。」

「24階って・・・。俺たちでもたどり着くのは辛いぞ。」

「このうさ吉を召喚して、守ってもらいながら、逃げに逃げて4日間でようやくここまで上がってきたんです。まともに戦えば瞬殺でしたよ・・・。」

「よく上がってきたな・・・。」


 ボルゾークさんは、顔が引き攣っている。


「途中、ブラックタイガーの方は見かけたんですが、怖くて声を掛けられなかったです。白き薔薇団の方なら、大丈夫かと・・。上まで連れてってくれませんか。」

「そうか、お前らうちには入らなんだよな・・・。」

「ロッシはこんな状況ですし、多分提携する新クランに入る予定ですので・・。」

「提携する新クラン・・・。アリア様ね、クランをおつくりされる気になられたのね・・・。良いわお金は・・。1万位かかるけど、分割で良いわよ。(キラッ)」

「魔石払いで良いなら、レベル1の魔石10000個相当で、上に上がったら払います。」

「あなた、払えるの?」

「行くぞ」


 パイソンさんが、ロッシを担ぎ上げ、上に向かって進み締めた。


「しゃーねーな」

「いいんじゃない、急いでないし(キラッ)」

「このうさちゃんは私が持っていくからね。ウフッ」


 三者三様の反応だったが、結構なペースでパイソンさんについていった。僕は、後ろをついていったが、上がっていく途中で、色々アドバイスや世間話をしていった。上に着き出口を出た時


「やったー。生き残ったー。」


 と笑顔で大声で叫んだ、そんな僕に受付さんが冷たい声を浴びせた。


「アレックスさん、ロッシさんお戻りですか。えーと、2階以下に降りたらしいので、400減らして664体となります。明日夜までにあと、336体倒さないと、不合格となります。大丈夫ですか。」


僕は、抗弁というか言うか、言い訳をしたが聞き入れて貰えず、サリーさん達がもの悲しい顔をしていた。

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