第258話 うーん……何故だ?


「最近、どう? 他国のエージェントとかいる?」

「数は減ったわね。でも、まだいるわ。特に例のゲートを閉じられている連中ね。あんたがまだフロンティアのエリアを保有しているんじゃないかと勘ぐってる」


 しつこい奴らだわ。


「もう売らないわよ。余るぐらいに金を持ってるわ」

「でしょうね。ウチの国と日本政府は大変よ。国内外から猛批判」


 オークションで勝つために手を組んで共同借地だからな。

 卑怯だとかなんだかんだ言われてめちゃくちゃ叩かれている。


「それなのにいまだに解放できてないんだから最悪よね」

「それね。プレジデントもこの国の首相さんも頭を抱えているわ。これ以上の引き伸ばしは政権維持の問題に関わるらしいわよ」


 支持率かねー?

 俺はちゃんと与党に投票してやるのに。


「それで調査の仕事ね……」

「そうそう。以前、地下で活躍したらしいじゃない? パパッと行きましょう」


 サツキさんと同じようなことを言うな……


「ところで、なんであんたらはこの仕事を受けたの?」

「命令よ、命令。私達は冒険者だけど、政府公認の特別なエージェントだからね」


 ふーん……


「あんたら2人?」

「そうね。大人数で行っても仕方がないでしょ。そっちはあんたと弟子のチビ?」

「そうねー……アルク、あんたも行く?」


 キッチンの方に声をかける。


「行かない。僕、忙しいんだ」


 ゲームだろ。


「私とエージェント・セブンね」

「はいはい。あのチビね。じゃあ、4人で行きましょう。いつ行ける?」

「私はいつでも。エージェント・セブン次第ね。今夜話をしてみるからまた連絡する」

「なるべく早めがいいわ。こっちも急かされているのよ」


 だろうなー……


「わかったわ。早めに行けるようにする」

「お願い」

「じゃあ、また連絡するわ……アルク、帰るわよ」

「わかったー」


 アルクが返事をしながらキッチンからラーメンを食べながら出てきた。

 ついでにハリーも出てきた。


「美味しい?」

「美味しい。店のラーメンとはまた違う美味しさがあるね」

「お、わかるか? そうなんだよ。店のラーメン、家で作るラーメン、カップラーメン、全部違う美味さがあるんだよ」


 わからないでもないが、そんなに語ることか?


「あいつ、仕事してんの?」

「してない」


 だろうね。


 俺はラーメンを食べているアルクと共に転移で家に帰った。

 すると、カップラーメンを食べながら戻ってきたアルクをリディアちゃんがジト目で睨んでいたので慌てて近くのコンビニでカップラーメンを買ってあげた。




 ◆◇◆




 夕方になると、カエデちゃんがナナポンを連れて帰ってくる。


「せんぱーい、疲れたー」


 カエデちゃんがソファーに座り、抱きしめてきた。


「よしよし。お疲れ様。お仕事大変だったね」


 カエデちゃんの背中をさすりながら慰める。


「仕事きらーい」


 非常勤で週に1回行くか行かないくらいだが、辛いらしい。

 なお、『産休で休むのはどう?』って言おうと思ったが、多分、周りの連中に引かれるのでやめた。


「明日は休みだし、今日はゆっくりお酒でも飲もうね」

「先輩、やさしー」


 カエデちゃんはかわいいなー。

 今朝、俺の頭を叩いた子とは思えない。


「カエデ様、お風呂を沸かしております。入ってきてはいかがですか?」


 ミーアがカエデちゃんに声をかける。


「わー、ミーアちゃん、超優しい! 入ってくるー」


 カエデちゃんは俺から離れると、リビングから出ていってしまった。


「ミーア?」


 何してんの?

 カエデちゃんが離れていったぞ。

 あと地味に俺は優しい止まりでお前は超優しいか?


「……すみません」


 有能すぎるのも考えものだな。


「まあいいわ。どうせ私じゃ意味ないし……ナナカさん、話は聞いたわね?」

「はい。いつぞやの地下遺跡調査みたいな仕事ですよね?」


 俺とカエデちゃんのやり取りを嫌そうな顔で見ていたナナポンが真面目な顔に戻った。


「そうそう。リディアちゃんが言うには鉱山じゃないかって。あなたの透視が輝く時よ」

「私の出番ですね! このCランクでレベル17の私の出番です!」


 …………こいつ、いつの間にか成長してやがる。

 ヨシノブートキャンプか……


「そう……まあ、頑張りなさい」


 チッ……

 この冒険で抜くか。


「それで私とエレノアさんとアメリカの2人ですか?」

「そうね。4人での調査になるわ、なるべく早く調査に入ってほしいらしいんだけど、あなたの予定は?」

「私はいつでも大丈夫ですよ。大学の方も問題ありません」


 卑劣なカンニングか。


「じゃあ、明後日からにしましょう。それでいい?」

「はい。エレノアさんとの冒険が楽しみです」


 かわいい子だ。

 いつものその素直さを出せばとてもかわいい弟子なのに。


「アルク、そういうわけだから明後日に送っていってちょうだい」

「それはいいけど、帰りはどうするの?」

「帰りはゲートで池袋支部に帰る。電話するから迎えにきて」


 すでにゲート自体は設置されており、行けることはまだできないが、帰ることだけはできる。


「わかった。明後日は家で待機してるよ」


 ゲームね。


「お願いね」


 アルクに頼むと、自分のステータスカードを取り出し、久しぶりに見てみる。




----------------------

名前 エレノア・オーシャン

レベル11

ジョブ 挑発の魔女

スキル

 ≪剣術lv6≫

 ≪話術lv1≫

 ≪挑発lv7≫

 ≪気配察知lv1≫

☆≪錬金術≫

----------------------

レベル11

 回復ポーションlv1、性転換ポーション

 眠り薬、純水

 翻訳ポーション、アイテム袋

 透明化ポーション、鑑定メガネ、鑑定コンタクト

 回復ポーションlv2、強化ポーション(力)

 強化ポーション(速)、強化ポーション(防)

 オートマップ、回復ポーションlv3

 生命の水、キュアポーション

----------------------




 うーん……レベル11かー。

 ナナポンとはずいぶんと離されたな……

 アルクとは並んでしまったけど……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る