第254話 おめ
アルクに転移で家まで送ってもらうと、カエデちゃんとリディアちゃんがピザのチラシを眺めていた。
「あ、先輩! 無事だったんですか!? 刺客が来たって聞いてびっくりしたんですよ」
カエデちゃんがチラシを置いて、ソファーから立ち上がる。
「まあね。たいした敵じゃなかったわ。以前もだったけど、姿を消す奴はダメね。油断しまくり」
もっとも、油断しなくても俺の敵じゃないけどな。
わははー!
「じゃあ、僕は陛下のところに行くけど、僕が帰るまでにピザを頼むなよ」
アルクはそう言って転移を使い、消えた。
「そう言われると、頼みたくなるわね」
「よしましょうよ。可哀想ですよ」
「まあ、それもそうか」
俺がソファーに座ると、ナナポンとヨシノさんがテーブルにつき、いまだに残っているおみやげの煎餅を食べだす。
「リディアちゃん、ステータスは見た?」
「はい。剣術と暗殺術のレベルが共に3ありました。間違いなく、その道の人間かと」
なるほどね。
まあ、あれくらいなら3だろうな。
「動機はわからないけど、王族が地下に住んでいるのも頷けるわね」
「そうですね。でも、もうこちらに住むから安心です」
それもそうだ。
「ん? リディア、こっちの世界に住むのか?」
ヨシノさんがリディアちゃんに聞く。
「はい。師匠とカエデ様が引っ越すらしいので一緒に住まわせてもらおうと思っています」
「え? そうなの?」
ヨシノさんが俺を見てきた。
「ずっと入り浸ってるし、もう少し広い家に住もうと思ってね。しかも、リディアちゃんとアルクが来れば有能なメイドさんが家事を全部やってくれるのよ」
「あー……それでか。もう場所は決まったの?」
「今考え中。まあ、住むとしても都内だからあまり影響はないわ」
なんだかんだで都内が良い。
「田舎でゆっくりするとかは?」
「ないない。そのうちアルクに無人島をもらって別荘を建てる予定。アルクも要らないエリアならくれるって言ってたし」
「それはいいね」
「あなたも呼んであげるわ。ビーチに華を咲かせなさい」
ヨシノさんが活躍する時だ。
「沖田さん、さいてーです」
ナナポンがジト目で見てくる。
「ふっ……ごめんなさいね」
ナナポンへの配慮がなかったわ。
「おい、今、どこ見た?」
「いいからあなたもピザを選びなさい。余っても明日の朝食になるだけから好きなのを頼んでいいわよ」
「私、クリスピーのやつが良いです」
マジ?
普通、パン生地じゃね?
「やっぱりクリスピーが良いよね」
「ですねー」
あれ?
皆、クリスピー派なの?
◆◇◆
その後、話をしたり、ゲームをしながら待っていると、夕方になり、アルクがミーアと共に戻ってきた。
俺達は2人を交えて、再度話し合い、ピザを頼む。
そして、ピザを食べ終えると、ヨシノさんとナナポンが帰ったのでゆっくりと過ごすことにした。
俺とカエデちゃんはお酒を飲みながらゲームに夢中なチビ夫妻を見る。
「ケガがなくて良かったですね」
「そうだね。あいつら、これから大変だろうけど、頑張ってほしいわ」
「先輩、いまだにエレノアさんなんですね?」
「もうすぐで風呂に入るからその時にかっこいい方に戻るよ」
もちろん沖田君ね。
「戻る前に渡したら? リディアちゃんには渡したようですけど、アルクちゃんはまだでしょ」
あ、忘れてた。
「アルク、来なさい」
「なーに? 今外すと、リディアに追い抜かれるんだけど……」
今日も平和にレースゲームか。
でも、アルク……
リディアちゃんが赤い甲羅を持っているのが見えんのか?
「一時停止して来なさい。大事な話」
「わかったー」
アルクはゲームを中断し、こちらにやってくる。
「何か用? というか、君ら飲みすぎじゃない? 特にクソ魔女は昼間もガバガバ飲んでたじゃん」
「明日は休みだからいいの」
「ひどいボケ……」
ボケ言うな。
「ほら、アルク。あげる」
俺は小箱を取り出すと、アルクに渡す。
「何これ?」
「昼に言ったでしょ。私とカエデちゃんの仲良しラブラブ夫婦から結婚祝いよ」
「女同士で何を言ってんだか……」
アルクはそう言いながら包装紙を剥ぎ、箱を開けた。
「あ、腕時計だ!」
リディアちゃんのネックレスでアルクは腕時計にした。
2つ合わせると、エレノアさんの剣より高い。
「ちゃーんと男物にしてあげたわよ」
「そりゃ男物でしょうよ」
アルクはそう言いながら汗を垂らし、目を泳がせている。
もしかして、まだ誤魔化せていると思っているんだろうか?
「とにかく感謝しなさい」
「なんか悪いなー。僕、君達の結婚祝いに何もあげてないよ?」
ガキが何を言っているんだ。
「あなた達から何かをもらう気はないわよ。弟子のくせに……そう思うなら私のためにきりきり働きなさい。まずは引っ越しね」
「わかったよー……うん、ありがとうね」
アルクは腕を時計を着けると、満足そうに頷いた。
「ほら、戻ってゲームでもしてなさい。リディアちゃんが赤甲羅を構えて待ってるわよ」
「くっ……バナナの恐ろしさを教えてやる」
アルクはテレビの前に戻り、ゲームを再開した。
「さて、風呂に入る前にもう一杯飲むか……ミーア」
「あ、ミーアちゃん、私のも」
俺とカエデちゃんがソファーにちょこんと座って何かの雑誌を読んでいるミーアに頼む。
「かしこまりました」
ミーアがすぐにおかわりを持ってくれたのでカエデちゃんと乾杯する。
その後、お風呂に入ると、この日も夜遅くまで飲み、就寝した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます