第248話 アルクとお出かけ


 リディアちゃんとお出かけした翌日、俺はアルクと共にとあるラーメン屋にやってきた。

 俺達はテーブルにつき、顔を向かい合わせながら注文したラーメンを見る。


「多くね?」


 アルクが目の前に置かれたもやしたっぷりのラーメンを見て、引いていた。

 なお、俺は店に飾られているハリーの写真を見て、引いている。


「だから言っただろ。吐いても食え」

「た、食べるけどさ」


 俺達はラーメンを食べだした。

 見た目のインパクトはすごかったが、さすがに味は美味い。


「うん、美味いな」

「そうだね……ところでさ、ちょっと聞いてもいい?」


 早々に水を飲みだしたアルクが聞いてくる。


「なんだ?」

「昨日の夜、君らがリディアとスマホを見て、騒いでたのは何?」


 俺達が部屋探しをしている間、こいつは一人でRPGをやっていた。


「ちょっと引っ越そうと思ってな。今のマンションより広いマンションに引っ越すんだよ」

「へー、ようやくか。あそこ、狭いもんね」


 狭くはない。

 これだから地下住みは……


「まあ、そういうわけで部屋を見てたんだよ。あ、それでさ、引っ越しの際には転移で手伝ってくんない?」

「それくらいなら楽なもんだよ。どうせ遊びに行くし」


 遊びにね……


「悪いな。煮卵いるか?」

「いらない……もやしいる? 麺が見えないんだけど……」

「いらない」


 多いわー。


「ハジメとカエデが引っ越すのはわかるんだけどさ、なんでリディアまで一緒になって騒いでたの?」

「リディアちゃんはもうフロンティアの生活には戻れないんだとよ。エアコンがいるんだと、ふかふかベッドで寝たいんだと、ついでにあの地下生活は嫌だってさ」

「そういうことね…………ミーア欲しさにリディアを買収したんだ」


 賢い子だ。

 よくそこまでわかったな。


「嫌か?」

「リディアが君と一緒に住むのはなー」

「俺はお前がカエデちゃんと住んでも気にせんぞ」


 もう気にしない。


「僕、女じゃん」

「私も女」

「「…………この話はやめようか」」


 不毛だ。


「お前もエアコンの方が良いだろ。俺達もミーアのご飯が食べたいし、掃除も洗濯もしたくない」

「いやまあ、そうだけどさ……君ら、いつも暇、暇言っているんだからやれば?」

「あのな? 暇だけど、そういうのはやりたくないわけ」


 当たり前だろ。


「わがままだなー」

「俺は苦労してきたんだ。今さら苦労したくない」

「ブラック企業に務めてたんだっけ?」

「そうそう。だからもう働きたくない。でも、冒険者を辞めるのはもったいなかったわ。斬りてー」


 身体を動かすのは楽しかったし、ナナポンに剣術を自慢できるのも良かった。


「怖いっての……そんなに斬りたいならどっかのエリアでもあげようか?」

「くれるの?」

「どっかのどうでもいいところならあげる」


 簡単にくれるな。

 まあ、エメラルダス山脈も水と小麦粉との交換だけど。


「うーん、考えておく。レベルのことがあるからな」

「まあね。君が賢者の石を作れるようになったらさすがに考えないといけない」


 殺すことかな?


「あんなもんいらんわ。というか、材料がヤバそうだ」

「その辺の情報がないんだよなー。師匠、半分あげる」


 アルクがついにもやしを俺の器に移してきた。


「絶対にパフェの方が良かっただろ」

「焼肉にすれば良かった」


 こいつ、エンジョイしすぎだな。


「多いなー……こんなにもやしを食ったのは学生以来だわ。パーティーはどうなったん?」

「それは来週になりそうだね」


 来週か。

 まあ、空いてるな。

 いつも空いてるけど。


「俺、どっちで行った方が良い?」

「好きな方でいいよ。あー、でも、エレノアでいいんじゃないかな?」


 エレノアさんね。


「あんた、私のことが好きねー」

「気持ち悪いからハジメの姿でそれやめて」


 うん、俺も気持ち悪い。


「お前やリディアちゃん、あと王様を襲ってきたら斬っていいか?」

「斬って。本当は生かしてほしいけど、斬って」

「得意だわ」

「知ってる。たまに刀を眺めている君が怖い」


 あれ、刃引きしてあるから大丈夫だけどな。


「俺やヨシノさんが斬っても問題は起きないだろうな?」

「そこは大丈夫」

「格好は? エージェントスタイルでいくか?」


 ナナポンがたまに着ている上下黒のスーツにサングラス。


「普通でいいよ。護衛だからそういうマナーはない」


 じゃあ、黒ローブの魔女スタイルでいいか。


「ナナポンとヨシノさんにも伝えておくわ。詳細な日時が決まったら教えてくれ」

「わかった……師匠、あげる」


 アルクがついに器を俺の前に置く。


「ほら、言った通りじゃん」

「お腹痛い……晩御飯いらない」

「お前なー……食えるかな?」

「頑張れ。たまにはハジメのかっこいいところを見てみたい」


 たまには?

 というか、ラーメンを食ってかっこいいか?


 俺は仕方がないのでギアを上げて自分のラーメンを完食すると、アルクの分を食べだす。

 正直、お腹いっぱいだが、残すのもあれなので頑張って食べた。

 そして、食べ終えると、重いお腹に苦しみながらも店を出る。


「なあ、一つ聞いていいか?」

「なーに? 太った?」


 太ったらお前のせいだな。


「お前、今、女?」

「見りゃわかるでしょ。女の子」


 お前はわからないんだよなー……


「リディアちゃんと一緒に来る時は?」

「男。ダンディーでしょ」


 マジでわからん……





――――――――――――


本日より新作も投稿しております。

読んでもらえると幸いです。


https://kakuyomu.jp/works/16818093075798434907


よろしくお願いいたします。

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