第245話 二日連続の集合


 俺達はアルクの転移で家に戻ってくると、お茶会を再開した。

 しかし、そのお茶会は5分で終わり、アルクとリディアちゃんは友情破壊ゲームをし始める。


「よしなさいってのに……」

「リディアがやりたいって言うんだもん」


 えー……


「リディアちゃん、やめた方がいいよ?」

「いえ、昨日の4人のプレイを横で見てましたが、仲が良さそうでした」


 そうか?


「暴言が飛び交ってたよね?」


 隣に座っているカエデちゃんを見る。


「飛び交ってましたねー。悪口のオンパレードでした」


 アルク、ナナポン、ヨシノさんとロクなのがいなかったからね。


「ああいうのも愛情だと思います。何を言い合っても絆が壊れないという信頼関係でしょう」


 違うと思うな……

 皆、無神経なだけだよ……


「え? つまり僕はこれからリディアに暴言を吐かれるわけ?」


 そうなっちゃうね。


「あんたも吐けば?」

「リディアに? 何て?」

「あなたが思っていることを言いなさいよ」

「例えば?」


 なんで俺に聞くんだよ。


「目のハイライトを取り戻せ、S女」

「おい! 君、そんなことを思ってたのか!」


 お前が怒るんかい。


「あんたが聞いてきたんでしょうが」

「リディア、あのクソ魔女に言い返しなよ」


 アルクがリディアちゃんの肩を揺する。


「女装ロリコン野郎」


 即答……


「あの……なんで私がロリコンなの?」

「子供好きって言ってましたし」


 いや、そういう意味じゃなくて……


「アルク、やっぱりよしなさい。もっとハッピーなゲームにしなさい」

「そうする……リディア、こっちの謎解きゲームをしようよ」

「謎解き? 面白そう」


 うんうん。

 そうしな。


「あー、心臓が痛い。やっぱりユニークスキル持ちはロクなのがいないわ」


 チビ2人が違うゲームを始めたので目線を切り、ミーアが淹れてくれたお茶を飲む。


「でしょうねー……」


 カエデちゃんもちょっと引いていた。


「俺、ロリコンじゃないよ?」

「いや、知ってますよ」


 まあ、夫婦だもんね。


「あのー、あれはなんですか?」


 ソファーにちょこんと座っているミーアがテレビを見ながら聞いてくる。


「説明が難しいけど、ゲームね」

「そ、そうですか……フィーレに初めて来ましたけど、色々とすごいですね」


 アルクやリディアちゃんはすぐに馴染んだけど、まともな人間のミーアは時間がかかりそうだな。


「まあ、そういう世界なのよ。あなたも早く慣れるのよ」

「無理な気がしますね……ん? 何の音です?」


 ミーアが苦笑いを浮かべたところでチャイムが鳴った。


「あ、ナナカちゃんとヨシノさんですかね?」

「そうじゃないかな?」


 俺はあの2人を家に戻ってすぐに呼び出した。

 そしたらヨシノさんがナナポンを迎えに行ってくれたのだ。


「出てきます」


 カエデちゃんが玄関の方に行くと、すぐにナナポンとヨシノさんを連れて戻ってくる。


「まさか昼前に帰ったのにまた呼び出されるとは思いませんでしたよ」

「まったくだ」


 2人はぶつぶつ言いながらもソファーに座る。


「まあ、いいじゃないの。どうせ暇なんでしょ」

「まあね……ほら、アルク、リディア。ケーキを買ってきたぞ」


 ヨシノさんが頼んでいたケーキをテーブルに置く。


「やった」

「ありがとうございます」


 アルクとリディアちゃんはゲームをやめ、こちらにやってきた。


「あのー、そちらのメイドさんはどなたです?」


 ナナポンがミーアを見て、首を傾げる。

 そういえば、フロンティアに行っていないナナポンはミーアを知らない。


「言われて気付いたが、ミーアがいるな……ケーキを6個買ってこいって言われたから6個買ってきたけど、足らないよ?」


 ケーキは買いに行くのが面倒だからヨシノさんに頼んだのだ。


「私がいらないのよ。ナナカさん、こちらはミーアと言って、アルクの専属のメイドさんなの」

「へー……メイドさんかー」

「そうそう。アルク、リディアちゃん、好きなの選んでいいわよ」


 そう言うと、アルクが箱を開ける。


「これ」

「は?」


 アルクがタルトを指差したらリディアちゃんがどす黒いオーラを出した。


「やっぱりこれ……」


 アルクはすぐにモンブランに変える。


「……仲良くしなさい」


 大丈夫か、この夫婦?

 将来がすごく不安な2人だ。


「カエデちゃん、ミーア、お願い」

「はーい」

「かしこまりました」


 2人に頼むと、カエデちゃんがケーキを分け、ミーアがお茶を淹れてくれたので一息つく。


「それでなんで呼んだんだい? 君ら、あっちでお茶会をするんじゃなかったの?」


 ヨシノさんがコーヒーを飲みながら聞いてきた。


「それがねー、ほら、王様が話があるみたいなことを言ってたじゃない?」

「言ってたね。何かあったの?」

「あった。まずだけど、この子達は正式に結婚するそうよ」


 アルクとリディアちゃんを指差す。


「へー……早くない?」

「まだ13歳では?」


 ヨシノさんとナナポンがちょっと引いている。


「王族はそんなものらしいわ。まあ、この2人に付き合うとかそういう概念もないだろうし、遅かれ早かれでしょう」


 というか、もう付き合ってる感じだ。


「まあ、日本も昔は早かったらしいしな……とにかく、おめでとう」

「あ、おめでとう」


 2人が祝福する。

 なお、俺はこいつらに祝福されていない。

 2人共、カエデちゃんに『大丈夫?』って聞いていた。


「ありがとー」

「ありがとうございます」


 アルクとリディアちゃんもお礼を言う。


「それでね、アルクが次の王様になることの発表と2人の結婚報告を兼ねたパーティーをするらしいのよ」

「めでたいな」

「まあね。それで王様がナナカさんの透視を借りたいって言ってるのよ」

「え? 私?」


 ナナポンが自分の顔を指差した。


「そう、あなた。ほら、前にあなたとアルクとリディアちゃんでエメラルダス山脈の説明会で違反者を追い出したでしょ? あの感じをパーティーでやってほしいみたい」

「あー、あれですか。でも、私が行ってもいいんですか?」


 透視ね。


「いいってさ。それよりもアルクの身が大事なんだって。この子が死んだらフロンティアは終わりだし」

「なるほどー……私はいいですけど、一人です?」


 ナナポンはオッケーと。


「私とヨシノさんもアルクとリディアちゃんの護衛につくわ。あなたは透明化ポーションで隠れながら隠し持っている武器の有無を教えてくれればいい」

「そのくらいだったらお安い御用です」


 よしよし。


「そういうわけだからヨシノさんもお願いね」

「ああ。私も構わない。そういう仕事も慣れっこだしな」


 さすがは経験豊富のAランクさんだ。


「アルク、王様にオッケーって伝えて」

「わかった。3人共、ありがとうね」


 アルクが珍しく素直に礼を言ってくる。


「いいわよ。暇だし」

「やることないですもんね」

「すでにとんでもない大金を得たしなー。暇つぶしにはちょうどいいな」


 ホント、ホント。


「……なんでこいつらはこんなんなんだろう?」


 それはお互い様だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る