第242話 加齢って怖いわー……


 昼になり、3人で昼食のうどんを食べ、準備を終えると、約束の時間になった。


「行ける?」

「大丈夫」

「おっけー」


 俺とカエデちゃんは同時に頷く。


「じゃあ、まずは食堂に飛ぶね……はい」


 アルクがそう言うと、あっという間に何度か来たことがある食堂にやってきた。

 食堂には王様が席についていており、すぐそばにもいたミーアがゆっくりと頭を下げる。


「どうも」

「こんにちはー」


 俺とカエデちゃんは軽く挨拶をする。


「うむ。よく来てくれた。それとよくわからんが、結婚したそうだな。おめでとう」


 王様は頷くと、祝ってくれた。


「ありがとう、でも、よくわからないとは?」


 俺がエレノアさんだから?

 でも、沖田君も知っているだろうに。


「いや、すまん。元々、結婚しているのかと思っていた。奥さんと紹介されたし」


 あー……そうだったかも。


「時間の問題だったのよ」

「父上、こいつの頭はおかしいのでスルーしてください」

「うむ……あ、いや、失礼だぞ、アルク」


 てめーもじゃい!

 今、すげー頷いただろ。


「で? 王様、話とは?」

「うむ。すまんが、来てもらえるか?」

「いいわよ」


 どうせあの狭い書斎だろう。


「アルク、客人を頼むぞ」

「はーい」


 アルクが頷くと、ミーアがお茶の準備をしだす。


「では、飛ぶぞ」

「いいわよ」


 頷くと、またもや一瞬にして視界が変わり、予想通り、以前も来た狭い書斎にやってきた。


「転移は便利ねー。私も欲しいわ」

「じゃあ、教えてやるが、錬金術師はそういうアイテムも作れるようになるらしいぞ」


 え? そうなの?


「レベルは?」

「そこまでは知らない」


 じゃあいいや。


「やめとく。レベル上げが怖いし」

「まあ、それが良いだろう」


 賢者の石はなー。

 絶対にいらない。


「それで? 話って?」

「実は最近、体調が優れなくてな」

「そうなの? 回復ポーションやキュアポーションを使いなさいよ」


 あんなにいっぱいあげたし、王様なんだから使えばいいのに。


「いや、病気とかそういうのではないんだ。単純に加齢だな。私ももう60歳になる」


 え?


「あなたって思ったより、年がいってるのね……全然、若く見えるわ」


 40代ぐらいに見える。

 というか、アルクってかなり遅くに生まれた子なんだな。


「若作りに必死さ。とにかく、私ももう歳だ。そろそろ後継を考えないといけない」

「アルクでしょ」


 あいつしかいないじゃん。

 だからTSポーションまであげた。


「それはわかっているし、君のおかげで次の王はアルクで決定だ。だからこそ、正式にアルクを次の王に指名し、リディアと結婚させる」

「あの子達、まだ子供でしょ」


 アルクもリディアちゃんも13歳のはずだ。


「私が妻と結婚したのは15歳だ。けっして早いということはない」


 すごいな……

 中学生なのに結婚か。

 まあ、王族はそんなものなのかもしれない。


「でも、そんな歳で妊娠は危なくない? リディアちゃん、まだ身体ができてないじゃないの」


 全体的に細いし、小さい。


「それはさすがにわかっている。それにあれらはそういう関係になるのは遅いだろう」


 王様はアルクの性別のことを言っているだろう。

 以前、アルクにそういう知識を教えてやったが、微妙な表情をしていた。

 だけどなー……

 リディアちゃんが……


「まあ、その辺は突っ込まないわ。でも、結婚ねー」

「民を安心させたいとい思いもあるんだよ。こんな状況で私みたいな爺がトップに立つよりもこれからの若い世代が引っ張っていく方が良い」

「若すぎでは?」


 逆に不安になるわ。


「もちろん、すぐに王位を継がせるわけではない。これから少しずつ仕事を任せていくのだ」

「なるほどねー」


 王族って大変だ。


「それで頼みがあるんだが、実は今度、お披露目会をするんだ」

「そうなの? アルクからは何も聞いてないけど」

「まだ言ってないからな。その時にリディアとの結婚と共にアルクを正式な次の王に指名するんだ」


 へー……


「パーティー的な?」

「そうだ」

「何? 私に出席でもしろっての?」

「そうだ」


 冗談だったのに……


「マジで言ってる? 魔女よ、魔女。しかも、悪しき錬金術師よ?」

「正式には君じゃない人物を借りたいんだ」

「カエデちゃんは貸さないぞ」


 ダメー。


「違う。君の弟子に透視持ちがいるだろ」


 そういうことか……


「ナナカさんね」

「ああ。以前、エメラルダス山脈の説明会でリディア、アルク、そして、そのナナカという人物を使って、敵の武器やらを見抜いただろ?」


 見抜いたねー。

 リディアちゃんがステータスをチェックし、ナナポンが武器を探る。

 そして、アウトなお客様はアルクの転移でさようなら。

 俺の弟子3人の最強コンボだ。


「3人のコンボを使いたいと?」

「そうなる。王族というのは敵も多い。そして、後継者がアルクしかいない以上、あの子を失うのはフロンティアが滅ぶのと同義だ」


 王族のユニークスキルである転移がないと、地球から支援物資が途切れてしまうからか。


「ねえ、他に子供を作ったら? ミーアはダメだけど、適当な人に生ませなさいよ」


 こうなったら予備を作っておくのも手だろう。


「もう勃たない」


 あ、そうですか……

 60歳だもんね。

 体調が優れないってそれのことじゃないだろうな……

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