第238話 こいつもユニークだなー
俺はナナポンを連れて、リビングに戻った。
「あ、ナナカちゃん。いらっしゃーい」
カエデちゃんがナナポンに声をかける。
「こんにちは、朝倉さん。お邪魔します」
本当にお邪魔。
「ナナカさん、朝倉さんはやめなさい。彼女は沖田さんなの」
「うぜっ……そうでしたね。でも、どっちも沖田さんになっちゃいました」
ちょっとブラックナナポンが出てた。
「どっちでもいいよー」
「うーん、まあ、沖田さんでいいか。もう沖田さんのことを呼ばなければいいわけだし」
なんでやねん。
「冷蔵庫にお茶があるから自分で淹れなさい」
そう言いながら座る。
「すぐに怒る……だって、沖田さんと冒険に行くことないですもん」
ナナポンはぶつぶつ言いながらキッチンに向かった。
そして、お茶を淹れたコップを持って戻ってくる。
「冒険者はどう?」
ナナポンは冒険者を辞めたがっていたが、当然のようにサツキさんに捕まり、今はヨシノさんとパーティーを組んでいる。
「エレノアさんとの冒険が恋しいです。ヨシノさん、口を開けば、金、金、金ですもん」
さすがはミス・ユニーク。
まだ欲しいか……
「ロクなもんじゃないわね」
「本当ですよ。どういう人生を送ったらあんなんになるんでしょうか」
わかる、わかる。
「ユニークスキル持ちって、頑なに自分のことを棚に上げますよね……」
カエデちゃんがボソッとつぶやく。
「沖田さん、ひどい……」
「なんで俺がひどいんだよ」
カエデちゃんだろ。
「この人、本当に鳥頭だな……めんどくせ……朝倉さんです」
あ、そうか。
「ハジメさんと呼べばいいんじゃない?」
「ハジメ?」
あ、こいつ、俺の名前を覚えてない……
「もういいわ。冷蔵にある袋があなたのお土産だからそれを持って帰りなさい」
「お土産? テーブルの上じゃなくて、冷蔵庫ですか?」
「特別。信頼の証よ」
「へー……」
ナナポンが冷蔵庫をじっと見る。
多分、透視だろう。
「まさかあの気持ち悪い豚の顔じゃないですよね?」
「チラガーって言うのよ? 知らない?」
なお、沖縄に行った時には食べなかった。
居酒屋で頼もうとした時のあのカエデちゃんの顔が忘れられない。
「結構です。ギルマスさんにあげてください。あの人は普通に食べそうです」
確かに食べそう……
「透視持ちはサプライズができなくて悲しいわ。じゃあ、テーブルの上のものを持って帰りなさい」
「はーい」
ナナポンがテーブルの上のお菓子を選別しだす。
「好きなものを持って帰っていいからね」
「あのー、偏りがありません? ほとんど西日本なんですけど……日本一周旅行じゃなかったですっけ?」
「ヒント、賞味期限」
「あ、なるほど……」
最初に行った北海道土産は北陸くらいで食べた。
「お金もあるし、アイテム袋があるから荷物にもならないから買いまくったのよ」
「なるほどー……あ、これにしよ」
ナナポンは何かのお菓子に決めたらしく、その場で封を開け、食べだす。
「普通、持って帰らない?」
「1人ですもん。全部は食べられないです。余ったらアルクちゃんかリディアちゃんにあげてください」
「そうするわ」
あいつらは甘かったら何でも食うし。
「エレノアさん、新婚生活はどうです?」
「沖田君に聞いて」
「じゃあ、沖田さんでいいです」
「楽しいぞ。ねー?」
カエデちゃんに振る。
「楽しいですね。食っちゃ寝生活です」
実際、ほぼそれしかしてない。
「大学生の私より怠惰ですね。暇じゃないです?」
「暇か暇じゃないかと言われたら暇ね」
「暇ですね。まあ、私はもう少しでギルドに復帰しますけど」
カエデちゃんは長期休み中なのだ。
まあ、復帰してもほぼ非常勤らしい。
「人生長いと思いますけど、大丈夫ですか?」
お義父さんと同じ心配をされた。
しかし、なんで学生に人生を心配されているんだろう?
「でも、働きたくもないしね。そのうち、フロンティアに遊びに行こうかと思ってる」
「大丈夫なんです? アルクちゃんが頑なに拒否してましたけど」
「あの子はバカだし、どうとでもなるわよ。リディアちゃんは完全にこっちの味方だし」
師匠、師匠とかわいいもんだ。
やはり挑発持ちの性別不詳より、真の女の子の方がかわいい。
たまにゲームをしてて、負けると瞳のハイライトがなくなるのが怖いけど。
「私も行きたいです」
「まあ、リディアちゃんに頼んでもいいけど、透視持ちはどうかしら?」
さすがになー……
「有能すぎる能力が足かせに……」
まだ言うか、覗き魔。
「一応、聞いてはみるけど、期待はしないでね。大学の方はどう?」
「問題ありませんし、ちゃんと通ってますよ。私ももう2年生です」
見えないなー。
「あなた、全然、大きくならないわね」
「セクハラです!」
いや、身長……
「本当にごめんなさい。あなたのそこには一切興味がないの」
「沖田さん、最低! セクハラだ! 離婚しろ!」
「あん? 腕を折ってやろうか?」
「怖っ! 朝倉さーん!」
ナナポンはカエデちゃんに助けを求める。
「今、ちょっと良いところだから後でね」
カエデちゃんは昨夜、見逃したドラマを見ているのだ。
「味方がいない……」
人の家でいると思ったんか?
「もう帰りなさいよ」
「あ、そうそう。タコ焼きパーティーしましょうよ。通称、タコパです」
急だな、おい。
「タコ焼き? 機械を持ってるの?」
「はい。春休みに実家に帰ったんですけど、一回使ってしまっていたやつが出てきたんです」
へー……
まあ、そんなに使いはしないわな。
ナナポンって一人っ子の母子家庭だし。
「カエデちゃん、どうする?」
「楽しそうだし、良いんじゃないですか?」
カエデちゃんが良いって言ってるならいいか。
「じゃあ、そうしましょう。ナナカさん、材料は?」
「買ってませんよ。これからです」
「じゃあ、カエデちゃんは……ドラマか」
ずっと見てる。
「今、良いところなんです」
俺とナナポンで行くか。
「行きますか?」
「そうね。ちょっと待ってなさい。沖田君に戻ってくるから」
「えー……そのままでいいじゃないですかー」
行方不明になった黄金の魔女が町中にいたら大騒ぎになるわい!
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