第230話 おでかけ
リディアちゃんの要望でショッピングモールに行くことになった俺達はタクシーでショッピングモールに向かった。
ショッピングモールに着くと、カエデちゃんがリディアちゃんを連れて、服を見にいったので俺とアルクは適当にショッピングモール内をぶらぶらしていた。
「一緒に見ちゃダメなんかね?」
時間がかかるだろうけど、服を選ぶくらいは付き合うのに。
似合ってるとかわいいを言えばいい。
まあ、実際、リディアちゃんなら何を着てもそうなるだろうし。
「僕や君に見られるのが恥ずかしいんでしょ。リディアにしてみたら未知の世界の服だし」
なるほど。
女心だ。
俺にはわからん。
「お前は?」
「僕は別に……常時、鎧よりかはマシ」
一応、自分でも鎧は変だという自覚はあったんだな。
「まあ、カエデちゃんと店員さんにおだててもらえばいいか。それよりもどうする? ゲーセンでも行くか?」
「ゲームはいいよ。食材の調査をしよう。そういうわけで1階のスーパーだね」
こいつ、そればっかりだな。
「まだ買うのか?」
「陛下が肉系を見てこいってさ」
「ふーん…………じゃあ、行ってみるか」
俺とアルクは1階の精肉コーナーに行き、肉類を見ることにした。
「小分けにして売ってるんだねー……」
精肉コーナーに来ると、アルクが牛肉のパックを手に取りながらつぶやく。
「それは牛の肉だな」
「へー……」
「後は鶏肉と豚肉が主になると思う」
他にもあるけど、ほぼその3種だろう。
「鳥はわかるね」
グレートイーグルがいたしな。
「お前らの所でも食べるのか?」
「捕れればね。難しいんだよ」
飛んでるもんな。
「詳しいことはわからないけど、こっちの世界では飛べないようにして家畜化しているな」
鶏がそうだったような気がする。
「ふーん、調べてみるか……」
「そうしな。お前の方が頭が良いだろうし、ネットで調べろ」
「いっそ、その鳥を持って帰るか……」
生態系とかいいのかね?
まあ、所詮は鶏か。
「王様やリディアちゃんと相談しな」
「そうする。とりあえず、買ってみて、ミーアに送るよ。不味かったらいらないし」
そりゃそうだ。
「そうしな」
アルクは牛肉、鶏肉、豚肉をカゴに入れると、お菓子コーナーに行き、大量のお菓子をカゴに入れていく。
「ハジメも持ってよー」
アルクがお菓子いっぱいになったカゴを渡してくる。
どんだけ買うんだ、こいつ……
「気に入ったやつがあるんだったらネットで大人買いしろよ。家に届けてくれるから」
「そういうシステムまであるのか……じゃあ、そうしよう」
アルクは上機嫌にレジの方に向かって歩いていったのでついていき、商品を購入した。
そして、商品をアイテム袋に入れると、2階にある服屋に行き、カエデちゃんとリディアちゃんと合流する。
なお、リディアちゃんは服は買ったのだろうが、着替えておらず、パーカーのままだった。
「先輩、どっかで休憩しましょうか」
カエデちゃんが提案してくる。
「レストランでも行くか……」
「パフェ食べたい」
アルクって、こういう時に絶対に主張してくるんだよな……
「じゃあ、行きましょうか。リディアちゃんもいい?」
カエデちゃんがリディアちゃんに確認する。
「私はわかりませんので皆様にお任せします」
「じゃあ、行こうー」
アルクは上機嫌になると、以前にも行ったレストランに向かって歩いていった。
「ハァ……師匠、アルクにレディーをエスコートすることを教えていただいてもよろしいですか?」
リディアちゃんが自分の左手を見ながらため息をつく。
エ、エスコート……
俺もカエデちゃんをエスコートした方がいいのだろうか?
俺ら、庶民Aと庶民Bなんだけど……
「う、うん。今度、言っておく………………カエデちゃん、手、いる?」
「いらないです。それよりも追いましょう」
「だよねー」
俺達は歩き出し、アルクに追いつくと、そのままレストランにやってきた。
レストランに着くと、店員さんに案内されたテーブル席に着く。
俺とカエデちゃんが並んで座り、対面にアルクとリディアちゃんが座っている形だ。
俺達はメニューを見終え、店員さんを呼ぶと、各々が食べたいものを注文していく。
というか、全員パフェだ。
正直、俺はコーヒーだけにしようと思ったのだが、3人がパフェを頼んだので俺も食べたくなったのである。
注文をし、しばらくすると、店員さんが人数分のパフェを持ってきたので食べることにした。
「すごいです。芸術品のような見た目でこんなに美味しいとは!」
リディアちゃんが驚いたような顔をしながらスプーンでクリームをすくい、食べていく。
「ねー。すごいよね。僕も感動したもんだよ」
アルクが得意げにうんうんと頷いた。
「良かったなー……俺、何年ぶりに食べたんだろ……?」
子供の頃に親に連れていってもらった記憶はある。
だが、それ以降の記憶がない。
「友達とかと来なかったんですか?」
カエデちゃんが聞いてくる。
「うーん……ラーメン屋と牛丼屋なら…………」
多分、彼女でもいれば違ったんだと思う。
ソースは女3人と一緒にレストランにやってきている俺。
「男の子はそっちかもしれませんね。特に運動部の男子はそんな感じです。ウチの弟もラーメン食べて帰ってきたのに普通に晩御飯を食べてましたもん」
それは俺も一緒。
普通に食える。
というか、食べないと夜中にお腹が空く。
「よくそんなに食べられるね」
いつもお菓子をバカ食いしているアルクが感心したように言う。
「昔の話だわ。今は無理。お前らは2つ食べてもいいぞ」
好きなだけ食べろ。
金ならある。
あるのだー。
「食べられるかなー? ミーアにも食べさせてあげたいけど、さすがに送れないよね?」
「やめといた方がいいな。材料を買ってミーアに作らせろよ。そんなに難しくないだろ」
色んなものを乗せてるだけだし、調理自体は簡単だと思う。
「そうしようかなー…………ん?」
アルクが考え込んでいると、ふと顔を上げた。
理由はわかっている。
俺らのテーブル席を見下ろしている男がいるからだ。
その男はチェック柄のスーツを着ており、さらにサングラスをかけ、髪をオールバックにしている。
どう見てもガラの悪い感じがする。
「何すか?」
俺はその男に目線だけを向ける。
「うーん……剣術をやってたってのはマジらしいな。なんか強そうだわ、お前」
ん?
「あ、お隣さんじゃないですかー。元気にしてました?」
そのガラの悪い男は俺が前に住んでいたアパートの隣に住んでいたやーさんだった。
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