第187話 お前は何を着ようとエロいよ。だってお前自身がエロいもん


 広い風呂を満喫した俺は風呂から上がり、服を着た。

 着替えた服は黒ローブではなく、普通のスカートの私服だ。


 風呂を出た俺は自分の部屋に戻ろうと思ったのだが、俺の部屋の前にはアルクとミーアが待っていた。


「あ、戻ってきた」


 アルクが歩いてきた俺に気付く。


「私の部屋の前でどうしたの?」

「お風呂に入ってたんだね。ほら、水と薬草を持ってきたから渡そうと思って待ってたんだよ」


 そういや、頼んでたわ。


「別に勝手に入って良かったのに」

「そういうわけにはいかないでしょ。ましてや、女性の部屋に勝手に入るなんてできるわけないじゃん」


 あー、確かにそれはマズいね。

 俺は男だし、大事なカバンは持っていっていたから何も思わないが、女性は嫌がるだろう。


「気遣いができて偉いわね」

「ありがとう。僕もそんなに気遣いができる方ではないけど、君達を見て、考えを改めたよ」


 ホンマ、一言多いやっちゃ。


「それは良かった。あなたのために敢えてそういう風にふるまった甲斐があったわね」

「君、息を吐くように嘘をつくね」

「いいから薬草と水を寄こしなさい」

「めんどくさい魔女だなー…………はい、これ」


 アルクはそう言って、俺に2つのカバンを渡してくる。


「これに入ってるの?」

「そうそう。片方が薬草。もう片方が水だね。足りなくなったらまた言ってよ。薬草と水はいっぱいあるからね」


 薬草と水はいっぱいあるらしい。

 水不足ではなさそうだな。

 となると、食糧不足か?


「ふーん、わかったわ。夕食までに時間がありそうだし、早速、作っておくわ」

「ありがと。じゃあ、頼んだよ。またね」


 アルクはそう言うと、お辞儀をするミーアと共に消えていった。


 俺はカバンを持って部屋に戻ると、回復ポーション作りを始める。


「えーっと、まずはキュアポーションだな。レベル2って言ってたし、レベル2の回復ポーションを作っていくかね」


 俺はまず、水を出そうと思い、カバンを手に取る。


「水……え? 大丈夫か?」


 俺はちょっと心配だったが、カバンに手を突っ込んだ。

 すると、カバンの中からはフラスコに入った透明な液体が出てくる。


「良かった。ちゃんと気を使ってる」


 中身が水だけだったら大惨事だった。


 俺はもう片方のカバンから薬草を取り出し、水が入ったフラスコに薬草を2枚入れ、レベル2の回復ポーションを作っていった。

 しばらく作業を続けていると、扉をノックする音が聞こえた。


「はーい?」

「エレノア、私だ」


 この声はヨシノさんだ。


「勝手に入りなさい。鍵はかかってないから」

「失礼する」


 俺が許可を出すと、ヨシノさんが部屋に入ってきた。

 ヨシノさんはパーカーにスウェットだった。


「ん? ポーションを作ってたのか?」

「まあね。これが金塊になると思うと楽しいわよ」

「ふーん、見てていいか? 暇なんだ」


 だろうね。

 テレビもないし、スマホも圏外だ。


「だったら手伝いなさい。薬草をフラスコに入れるだけでいいから」

「ああ、手伝おう」


 ヨシノさんは頷くと、俺のもとにやってきてフラスコに薬草2枚を入れる作業を行っていく。


「それにしても、君、寝巻じゃないんだな」

「私、寝る時はジャージだもん。そんな姿で夕食に行けないでしょ」


 王子様がいるのに。


「ふーん、私は気にしないが、ちょっとラフすぎたかな?」


 ヨシノさんが自分の格好を見る。


「別にいいでしょ。エロいし」

「どこがエロいんだ? 普通だろ」


 そのゆったりとしたパーカーを着ているのに主張しているおっぱい。


「生活感があっていいと思う。カエデちゃんのパジャマもかわいいけど、そういうのもいいと思うわ」

「ふーん。君、守備範囲が広いね」


 男はそんなもんだ。


「どうでもいいでしょ。お風呂はどうだった?」

「広くて良かったな。ちょっと寂しかったけど」

「どう見ても大浴場なのに1人だもんね。私も同じことを思った」

「サツキ姉さんと来たかったよ」


 この人、本当にサツキさんのことが好きなんだな。


「私もカエデちゃんと…………いや、どっちみち、別か…………」


 ナナポンが来ても別だ。

 一緒に入れそうな相手がハリーしか思い浮かばない。

 絶対に嫌だ。


「部屋も広いよね」

「そうね。やっぱり一緒に寝る?」

「寝る時は別にするが、夕食が終わってもポーション作りを手伝うよ」


 怖いのか?


「そうしてちょうだい。私も話しながらの方がいい」


 いつも家で一人で作っている時は動画サイトを見たり、テレビを見ながら作っている。

 さすがにこれを黙々とやるのは厳しい。


 俺とヨシノさんはそのまま話しながら作業を続けていく。

 マジで一人で来なくて良かったと思った


 しばらくそうしていると、またもや部屋にノックの音が響く。


「はーい?」

「エレノア様、食事の用意ができました」


 ミーアの声だ。


「はいはい」


 俺は夕食の時間になったため、手を止めた。


「行くか……」

「そうね。実は食事が一番の楽しみだったりする」

「私もだ」


 俺とヨシノさんはポーション作りを中断すると、部屋を出る。

 外にはミーアの他にも当然だが、アルクもいた。

 アルクはこれから食事だというのに鎧を着たままだ。


「ああ、ヨシノ様もご一緒でしたか。では、参りましょうか。アルク様、お願いします」

「あいよ」


 アルクが頷くと、俺の視界が白く染まった。





――――――――――――


本日より新作も投稿しております。

読んでもらえると幸いです。


よろしくお願いいたします。

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