第146話 やっぱり明るい方がいいね
そこそこ長い梯子を下りていくと、地面が見えてきた。
俺は怖かったーと思いながらも地面に足をつける。
そして、上を見上げると、いくつかの光源が見えており、他の4人も順々に降りてきているようだった。
俺はカバンにつけているカンテラを手に持ち、周囲を照らしながら辺りを観察する。
すると、梯子の右側に通路があり、その奥にはわずかに明かりが見えた。
どうやらここは洞窟の一本道であり、地下遺跡に通じる道の様だ。
俺がそのまま待っていると、他の皆も続々と梯子から降りてきた。
最初に柳さんが降りてくると、その次に前田さんが降りてくる。
そして、その後にナナポンが降り、最後にヨシノさんが降りてきた。
「あー、怖かったです」
ナナポンがホッと胸を撫でおろす。
ナナポンの場合は下手に下が見えていたから余計に怖かったのかもしれない。
「大変だったわねー。エレベーターでもつけてほしいもんだわ」
俺はナナポンの頭を撫でながら柳さんを見た。
「無茶言うな。それより、こっちだ」
柳さんはそう言うと、奥のわずかに見える光源の方に歩いていく。
俺達も柳さんに続き、奥に歩いていった。
そのまま歩いていくと、奥に見えている光がどんどんと強くなっていき、徐々に洞窟の先が見えてくる。
そして、洞窟を抜けると、皆が立ち止まった。
洞窟の先は大きな空洞となっており、自衛隊が設置したであろう大型のライトがそこにある建物を照らしていた。
建物はかなり大きく、奥行きはわからないが、高さ10メートル、横幅50メートルはある神殿のようである。
「すごいわねー……」
俺は思わず感嘆の声が漏れた。
「自分も最初にこれを見た時は驚いた。まずなんだが、壁を見てくれ。明らかに地上の遺跡とは異なっている」
柳さんにそう言われて建物の壁を見てみると、薄汚れているものの白い壁は明らかに地上のレンガ作りとは異なっていた。
「コンクリート?」
「わからん。そういうのも含めての調査は地図を作り、建物の中を調査した後だ」
何をするにもまずは地図か。
「ふーん、多分だけど、ここと地上の遺跡は年代が違うわね。先に地下遺跡があって、その後に上の町ができた感じじゃない?」
「専門家の見解もそうだ。おそらくだが、現在のクーナー遺跡の前に何らかの文明があり、滅んだ。この地下遺跡はその時の遺産だろう。そして、滅んだ文明の後に上の町を作ったのではないか、だそうだ」
滅んだ後に滅んだわけね。
理由はわからないのが地味に怖い。
上の建物の損傷具合からして火山や地震ではないだろう。
「滅んだ原因は戦争? それとも飢饉?」
「町が残っているし、戦争の可能性は低い。飢饉か疫病か、利便性で他の土地に移ったかだな」
疫病は怖いわ。
レベル3の回復ポーションで対処できるかね?
「どっちみちわかんないか……フロンティア人が譲ってくれたってことは価値があんまりないところって感じかな?」
金の延べ棒があるけどね。
ふふっ。
「フロンティア人にとって価値がなくても私達にはあるかもしれない。そのための調査だ」
「ふーん、じゃあ、その調査を始めましょうか。あそこが入口でいいのよね?」
俺は建物の中央にある門を指差す。
「そうだ」
「まあ、行ってみましょうか……」
俺達は俺とナナポンを先頭に門に向かって歩いていく。
「出てくるモンスターはスケルトンだったわよね?」
俺は歩きながら柳さんに確認する。
「ああ。ただし、出てくるのは建物の中だ。外でモンスターを確認したことはない」
普通、逆じゃね?
まあ、フロンティアのことに深く突っ込んでもどうせわからんからいいか。
「ふーん」
「それとスケルトンを確認したのはあくまでも浅いところだけだ。奥は未調査だからわからん」
八腕のスケルトンが出るよ。
「了解。まあ、戦闘はあなた達に任せるわ」
俺達が話しながら歩いていると、門の前に到着した。
門は木製であり、薄汚れてはいるものの朽ちている感じではない。
「これ、普通に開くの?」
「ああ」
「鍵は?」
「ない」
RPGゲームだと鍵が必要な気がするんだけどなー。
「不用心ね」
「こちらとしては都合がいい。あまり壊したくないしな」
壊すのは躊躇するか……
「じゃあ、入りましょう。ナナカさん、大丈夫?」
これはナナポンを心配している風に見せているが、中に敵がいないかの確認である。
「大丈夫です」
ナナポンがそう言って、頷いたため、俺は入口の門を引いた。
すると、ぎーっという音と共に門が開く。
「暗いわねー」
中は真っ暗で何も見えない。
「これが測量会社が断った要因の一つだ」
何も見えなかったら測量もクソもないか…………
「うーん……まあ、入りますか」
俺はナナポンと共に建物の中に入っていく。
そして、カンテラで周囲を照らしながら観察していった。
建物の中は吹き抜け構造の広間になっており、右端には上に上がる階段が見える。
そして、1階の左右に通路があった。
神殿というより、中世の貴族の家?
よくわからないな……
それにしても暗い……
「その辺に電灯をつけるスイッチない?」
「あるわけないだろ」
俺の問いにヨシノさんがツッコんだ。
「わかんないわよ。ここは私達とは文明が違うんだし。それにこんな地下にこんなものを作ったのにロウソクの燭台もないじゃない」
何の施設かはわからないが、明かりがないと何もできないだろ。
「魔法じゃないか?」
「魔法を使えない人もいるでしょ」
知らねーけど。
「あるとしたら入口の近くか?」
ヨシノさんはそう言って、門の近くの壁を観察する。
「スイッチでもいいし、何か不自然なものでもいいわよ」
俺はヨシノさんが見ている壁をカンテラで照らした。
「うーん、何か出っ張りがあるな……」
ヨシノさんがそう言ったので俺も壁を見てみると、ヨシノさんの目の前に不自然な長方形の出っ張りがあった。
「それよ、それ。押しなさい」
「怖くないか? 自爆スイッチだったりして」
「どこの世界に入口に自爆スイッチを設置するバカがいるのよ」
「じゃあ、まあ、押してみるか……」
ヨシノさんはそう言って、出っ張りを手のひらで触れる。
すると、出っ張りがちょっと光りだした。
そして、周囲が急に明るくなった。
「は?」
「え?」
柳さんと前田さんが呆けながら周囲を見渡す。
「私の名推理ね」
さすがは俺。
もう浮かれていた初期ノアさんではないのだ。
「本当にライトのスイッチだったんですね。さすがはエレノアさんです」
ナナポンは素直に褒めてくれるからかわいいわ。
もっとも、エレノアさんの時だけだけど。
「うーん、でも、電灯がないぞ。これは…………壁が光ってるのか?」
ヨシノさんが壁をじーっと見る。
「そういう材質なのかもね。もしくは蛍光塗料的なもの。どっちみちわかんないし、そういう調査は後の人の仕事でしょ」
こんな謎の現象を理解できるわけがない。
大事なのは金の延べ棒だ。
「さて、私のファインプレーのおかげで調査がしやすくなったし、行きましょうか」
俺はナナポンの頭をポンポンと叩いた。
「そうですね。どこから調査します?」
ナナポンはそう言いながら視線を一度下に向けた。
これは昨日、決めた合図の1つである。
昨日、俺が頭を叩いたら金の延べ棒がある位置を見ろと伝えてある。
つまり、ナナポンの視線から金の延べ棒は地下にあるっぽい。
うーん、お宝は見える位置には置かないか……
地下への隠し通路でもあるのかな?
さて、どうしようか……
最初に金の延べ棒を得るのはどうかと思うが、さっさと確保するべきとも思う。
よし、そうしよう。
「1階からね。ナナカさんは右と左のどっちが好き?」
「右左に好きも嫌いもないですよ…………じゃあ、右で」
地下への階段は右にあるわけね。
「じゃあ、行くわよ」
俺はそう言って、ナナポンと共に右にある通路に向かって歩いていった。
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