第143話 帰ろ


 俺はエレノアさんを探ろうしたユニークスキル持ちに釘を刺した。


「…………怖いですよ」


 ナナポンが不満そうに見上げてきた。


「お、し、お、き……というか、あっちが悪いわ」

「別にいいですけど、挑発のスキルが上がっても知りませんよ?」


 あ、やべ。


「コホン! 地図作成に戻ります」

「はいはい」


 俺達はその後も地図を作るために鉱山の中を歩き続けた。

 その間、何度もハイドスケルトンが出てきたが、すべて自衛隊の2人が倒してくれている。

 柳さんもだったが、前田さんもかなりの剣の腕前であり、これなら地下遺跡のじごくのきしも倒せそうだった。


 俺達が一つの坑道を歩き、行き止まりまでやってくると、ナナポンが後ろに見えないように手でオーケーサインを作った。

 俺はそれを見て、もう終わったのかなと思い、カバンにしまっているノートを取り出し、開いて見てみる。


 おー!

 アリの巣みたいな地図が出来てるわ。

 このアイテムは結構、楽しいな。


「地図が出来上がったし、戻りましょう」


 俺は地図を確認すると、自衛隊の2人に声をかけた。


「もう出来たのか!? 早いな!」


 柳さんが驚く。


「偉大なる魔女の魔法よ」

「うーむ……と、とにかく、了解した。地図を確認したいし、小屋まで戻ろう」


 地図を作成し終えた俺達は鉱山を出ることにし、来た道を引き返すことにする。

 帰りはハイドスケルトンが出なかったため、特に問題なく鉱山を出ることができた。


 鉱山から出て、小屋の前のテーブルまで戻ってくると、全員が一息つく。

 なお、ナナポンはいつの間にかサングラスを装着していた。


 俺はノートを取り出すと、作成したページを破き、テーブルに置いた。


「こんな感じね」


 俺がそう言うと、柳さんが地図を取り出し、前田さんと共に地図と俺が作った地図を見比べ始める。


「すごい……まったく一緒です」


 前田さんが感心しながら驚いた。


「ああ……予想以上の精度だ」


 柳さんも感心したように頷く。


「これでいいかしら?」

「ああ。十分すぎるほどだ。ちなみにだが、紙は変えられるか? 出来たらこっちで用意する方眼紙が良いのだが……」


 別にその場で作ればいいか……


「いいわよ。用意しておきなさい」

「わかった。これは貰っても?」


 柳さんが俺が作った地図を手に取り、聞いてくる。


「どうぞ。どうせ捨てるだけだし」


 ダイアナ鉱山に来ることなんてほぼないし、地図も既に持っている。


「ありがとう」


 柳さんはそう言うと、地図を折りたたみ、ポケットにしまった。


「こんな感じでいいかな?」


 ヨシノさんが柳さんに確認する。

 どうでもいいけど、この人、何もしてねーな……


「ああ。クーナー遺跡の地下遺跡でもこんな感じで頼む。早速だが、地下遺跡に行く日取りを決めたい。我々としてはなるべく早くがいい」

「私はいつでも大丈夫だね。エレノアは?」


 ヨシノさんが俺に聞いてきた。


「私も問題ないわ。ナナカさん、あなたが決めなさい。予定があるのはあなたよ」


 予定というか、大学。

 出席日数の調整がある。


「明日の午後なら大丈夫です。明後日は丸一日ダメです。明明後日以降の土日は授業がないので丸1日オーケーです」

「だそうよ?」


 ナナポンの予定を聞いた俺はそのまま柳さんを見る。


「だったら明日の午後からにしよう。初日だし、半日で様子を見てみたい」


 まあ、それがいいかもしれない。


「わかったわ。待ち合わせ場所は?」

「地下遺跡の入口がある建物で待ち合わせしよう…………ここだ」


 柳さんが紙を取り出し、渡してくる。

 紙はクーナー遺跡の地図であり、とある場所に赤い丸で印がつけてあった。


「了解。昼一にここでいい?」

「ああ。頼む」

「それと先に言っておくと、5時以降は働かないからね」


 夜はカエデちゃんと一緒に過ごさないといけない。


「それでいい。こちらも夜になるのは避けたいし、早めの帰還にしよう」

「よろしい。では、今日はこの辺でいい?」

「そうだな。我々はこの後もここの警備の仕事があるので先に帰ってくれ」


 まだ働くのか……

 大変だわ。


「そう……じゃあ、お疲れ様」

「うむ。お疲れ様。今日はありがとう。では、また明日」

「はいはい。あなたもまた明日ね」


 俺は前田さんにも挨拶をする。


「はっ! お疲れ様でした!」


 前田さんが敬礼をしながら挨拶を返した。

 まだ恐怖が残っている目だ。


「ふふっ……帰るわよ」


俺は踵を返すと、ナナポンとヨシノさんに告げる。


「はーい。お疲れ様でしたー」

「明日もよろしく」


 ナナポンとヨシノさんも自衛隊の2人に挨拶をしたので俺達はゲートに向かっていく。


「エレノア、後でサツキ姉さんのところに行くから待っていてくれ」


 ゲートに向かう途中でヨシノさんが声をかけてきた。


「そうね。明日の打ち合わせもあるし、前田さんのこともあるしねー」


 俺はそう言うと、振り向き、前田さんを見る。

 前田さんは表情を変えずにずっと俺を見ている。


「…………外してもらおうか?」


 ヨシノさんが提案してくる。


「いや、実力はあるし、急には変えられないでしょ。あの人で良いわ。というか、こっちが指名したのにやっぱりダメはマズいでしょ」


 前田さんはカエデちゃんが指定した俺より年下の女性隊員だろう。

 今さら、やっぱり変えてとは言いにくい。


「まあ、そうかもな……」

「問題ないでしょう」


 俺達は話しながら歩いていると、ゲートに到着した。


「じゃあ、後でな」


 ヨシノさんはそう言うと、ゲートをくぐっていった。


「私達も戻りましょうか」

「ですね」


 俺とナナポンもゲートをくぐり、ギルドに帰還した。


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