第134話 ナナポンはロマンを知らない
クーナー遺跡で地下遺跡が見つかったらしい。
地下遺跡という言葉は俺の少年心をすごく刺激する。
「そんなもんがあったのかよ…………」
「とある建物を調査している時に偶然、地下への入口が見つかったんだ。そこで内部調査のために測量会社に依頼した」
「へー、根本的な話だけど、それって大丈夫なん? フロンティアから借りてるんでしょ? 禁止エリアでは?」
「いや、フロンティアに確認したらしいんだが、問題ないそうだ。好きにしていいらしい」
いいの?
うーん、太っ腹というか、興味がないように感じるな。
いまいち、フロンティア人がどんなのなのかわからん。
「それで調査ねー……測量できるん?」
「できないと断られた」
「地下だから?」
「色々と理由があるが、まあ、そんなところだろう。社長曰く、何があるかわからん地下遺跡に社員を送ることはできないそうだ」
そら、そうだ。
モンスターはともかく、罠とかもありそう。
昔、そんな映画を見た。
ミイラとか聖杯のやつ。
「それでオートマップを売り込んだわけ?」
「と思っていたのだが、これはマズくないか? その辺で売ってるノートだろ」
サツキさんはそう言って、俺があげたオートマップノートをテーブルに置いた。
「うーん、スライムからドロップ…………ねーわ」
スライムからオートマップがドロップするとしても、このノートはねーわ。
「違う紙にする? 古くせーのならバレなくない?」
「素材を調べられると困る。オートマップに限っては素材の紙がまんまっぽいし」
そうかもしれない。
アイテムを作ってることがバレそうだわ。
「じゃあ、ダメじゃん」
「そこでなんだが、お前のスキルか魔法ってことにしないか?」
「どういうこと?」
イミフ。
「簡単に言うと、お前はオートマップというユニークスキルを持っている。それで地図を作れると言い張るわけだ」
本当はオートマップというアイテムが地図を描いているんだけど、エレノアさんのスキルか魔法で地図を描いたということにするわけか。
「つまり、俺にその地下遺跡に行けと?」
冒険者の仕事か?
いや、まあ、本当の意味で冒険者っぽいけど。
「別に行きたくなかったら無理にとは言わん。あくまでもこういう依頼があるぞってことだ」
「依頼なん?」
「測量会社に断れたことで自衛隊や民間に調査の委託をする話が出てる。その内、告示されるだろうが、今なら私がエレノアを売り込んで指名依頼にできる」
なるほどねー。
「報酬は?」
「地図の買い取りかな? あと、見つけたアイテムは好きにしていい。一応、規定で一度、ギルドに提出しないといけないけどな」
まあ、それは今回に限ったことじゃない。
フロンティアで入手したアイテムは必ずギルドに提出する必要がある。
俺だって、ちゃんと守ってる。
しかし、地下遺跡ねー……
お宝……
ロマンだなー。
「俺の中の少年心は行きたいって言ってるね」
「男の子だなー」
サツキさんがうんうんと頷く。
「でも、危なくね?」
「これが良いのか悪いのかはわからんが、自衛隊の付き添いになる」
うーん、微妙……
自衛隊の冒険者は強いから頼りになるけど、変なことができないな。
「カエデちゃんはどう思う?」
俺はアドバイザーに聞いてみる。
「正直なことを言えば、反対ですね」
「だよねー」
カエデちゃんはそう言うだろうね。
「ただ、ナナカちゃんがいれば問題ないのでは? あの子の透視で罠も看破できますし」
そういえば、あいつがいれば罠は回避できるな。
モンスターの奇襲も防げる。
というか、あいつの透視はこういう依頼に向いてるわ。
「ちょっとナナポンに聞いてみる」
俺はカバンからスマホを取り出すと、スマホ画面を見る。
『エレノアさーん』
『暇です』
『もう終わりました?』
『大学、辞めようかな……』
あいつ、めっちゃ暇してるし……
俺はすべてスルーし、用件を書き込む。
『クーナー遺跡に地下遺跡が見つかったらしいんだけど、行く?』
かなり端折ったけど、これでいいだろ。
俺がメッセージを送ると、すぐに既読の文字がついた。
『あれって、見つかってなかったんです?』
ん?
『あなた、知ってたの?』
『そら、下を見れば見えますもん。てっきり、見つかっているものかと思ってました』
透視、すげーな……
「ナナポン、地下遺跡のことを透視で知ってたらしい」
俺はナナポンのメッセージを見ながらサツキさんとカエデちゃんに伝える。
「あいつ、すごいな……」
「しかも、それを今まで言わなかったこともすごいです」
2人共、呆れ混じりに感心している。
正直、俺も透視のすごさを感心すると共にナナポンの地下遺跡に対する興味のなさ加減に呆れている。
俺は呆れながらもナナポンに返事をする。
『知っていたのなら話が早いわ。そこは見つかったばかりでね、調査の仕事が入ってるの。私のオートマップとあなたの透視があれば楽でしょ』
『まあ、モンスターもスケルトンが大半ですからエレノアさんなら大丈夫だとは思います。でも、腕がいっぱいのスケルトンもいましたけど、大丈夫です?』
こいつ、モンスターまで把握してるし……
「腕がいっぱいのスケルトンって何?」
俺は聞いたことがないので経験豊富なサツキさんとカエデちゃんに聞く。
「八腕スケルトンかな?」
「通称アシュラスケルトンです」
ネーミングセンスがないね。
じごくのきしでええやん。
「強い?」
「腕がいっぱいだからそこそこ強い。逆に言うと、腕が8本のスケルトンだ」
「魔法はないですしね」
よし、勝てるな。
俺はスマホに目を落とし、書き込む。
『要はスケルトンが4体よ。私の華麗な剣技を見せてあげるわ』
『ですかー……』
乗り気じゃないな……
『報酬は地図の売却代ね。それと見つけたアイテムは好きにしていいらしい。何もなかったら無報酬になっちゃうけど、ロマンがあると思わない?』
これぞ、冒険!
『へー……金の延べ棒がいっぱいありましたよ』
こいつ、なんなん……
さっさと言えよ……
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