第112話 透視lv2
俺とナナポンはレベル上げを中止し、街道を行ったり来たりしていた。
要は散歩である。
「どう?」
俺はとあるパーティーとすれ違った後にナナポンに聞く。
「普通でした。いやまあ、レベル20もありましたし、私達よりは強いんでしょうけど」
街道を歩いていると、いくつかのパーティーとすれ違ったが、ほとんどがレベル20前後だった。
中にはレベル30越えのおっさんもいたが、それでもユニークスキルを持っていなかった。
「私の方が強いとは思うけど、ミレイユ街道はそのあたりのレベルのエリアなんでしょうね」
俺達のレベル的にはまだ初心者用のエリアで頑張る方がいいのだろう。
だが、俺達にはユニークスキルがあるし、俺は素人じゃない。
「はいはい。エレノアさんは強いです。それよりも年齢が高めの人はレベルが高い傾向にありますね」
ナナポンは俺を軽く流し、観察結果を言う。
「まあ、それだけやってるってことなんでしょうよ」
「逆を言えば、年齢の割にレベルが高いというか、強そうだった場合はユニークスキル持ちの可能性が高いってことです。私達のように」
なるほど。
ナナポンの言いたいことがわかった。
「年齢が低いくせに儲けて、良い武器を持っていたり、難易度の高いエリアにいる冒険者が怪しいってことね」
「ですね。それにランクでわかります。例えばですが、20代前半でAランクの人は高確率で持っていると思います」
「わかったわ。ナナカさん、そういう人を見つけたら透視して。すべての人間は疲れるでしょ?」
「そうですね。それにモンスターへの警戒ができません。正直、歩きながらステータスカードを覗くのは大変です」
そりゃそうだ。
ナナポンにはモンスターへの警戒をしてもらわないといけないし、難しいだろう。
「ナナカさん、嫌かもだけど、明日、沖田君と冒険に行ってくれない?」
「…………なんでですか?」
ナナポンはちょっと嫌そうな顔をする。
「ヨシノさんのステータスカードを見てほしいの。それとリンさんも」
「…………疑っているんです?」
「そういうわけではないけどね。確認したいの。嘘をつく人間に背中は預けられないでしょ」
ヨシノさんもリンさんもそういう人ではないのはわかるが、安心が欲しい。
「エレノアさんで行く気はないんです?」
「ヨシノさんが本部長の子飼いであることは知っている人は知っている。あまり接触しているところを見られたくないし、手を組んだって思われたくないの」
沖田君とナナポンなら問題ない。
初心者2人が面倒を見てもらっているということで済む。
「わかりました。じゃあ、明日はご一緒します」
「悪いわね」
「いえ、たまには普通の格好で冒険がしたいです」
わかるわー。
ものすごくわかるわー。
すれ違った時にジロジロ見られるし、何よりもこの格好は動きにくいのだ。
「ちなみにだけど、他所のギルドに行って、保管されているステータスカードを見れる?」
「遠すぎて見えませんから無理ですね。私の透視は多少、視力は上がりますが、それでも数十メートル先の物は見えません。なので、明日、沖田さんは2人の気を引いておいてください。今日はサングラスをしているので視線がバレませんが、明日はサングラスをしませんのでバレます。カードの文字を見るためにはある程度、凝視しないといけませんので」
カードに書かれている文字は小さいもんな。
「わかった。ユニークスキルだけでいいわ。ヨシノさんが本当に完全記憶なのか、それとリンさんがユニークスキルを持っているかね。他は見なくてもいい」
「わかりました」
ナナポンは頼りになるなー。
「よろしい。明日の9時だから遅れないように」
「…………やっぱり遠慮してもいいですか?」
「ダメ。たまには早起きしなさい」
まったく……
これだから大学生は。
「ハァ……わかりました」
「昼ご飯を用意しなさいよ」
1日だし、昼ご飯を忘れると悲惨なことになる。
「コンビニで買うか……沖田さんはどうするんです?」
ナナポンが俺の昼ご飯を聞いてくる。
「カエデちゃんが愛妻弁当を作ってくれる」
「ああ……丸いおにぎり」
なんで知ってんねん!
「カエデちゃんが早くに起きて握ってくれるんだからそれで十分よ」
「良かったですね」
「あなたの分は私が握ってあげましょうか? 私は三角に握れる」
えっへん!
「いいです。エレノアさん、ポーションを混ぜそうですし」
何故、わかった?
「色とりどりのポーションおにぎりは嫌?」
「嫌に決まってるでしょ。しかも、ポーションって、熱したら効果がなくなるんですよね? ただのマズそうな見た目をしたおにぎりじゃないですか……」
カラフルで映えないかなと思ったんだが、食べ物で遊ぶのは良くないようだ。
「じゃあ、やめとく。あ、そうそう。あなたが前に提案したボディーソープポーションを試してみたけど、良かったわよ。あと、シャンプーポーションも良かった。あなたもやってみるといいわ。カエデちゃんの髪がサラサラで肌がぷにぷにになってた」
いつまでも触っていたかった。
でも、沖田君でやりたかった。
今度、しよ。
「あー……あれはそういう…………いえ、私もやってみますよ。この時期にポーション風呂はきついですからね」
ナナポンは何かを思い出すようなそぶりを見せたが、すぐに我に返った。
「そうしなさい。じゃあ、今日は帰りましょうか。明日も来るし、早めにあがりましょう」
「ですね。ギルマスさんに透視のことを報告しないとですし」
「そうね」
俺達はまだ4時前だが、帰ることにした。
俺とナナポンはゲート前まで戻ってくると、ゲートをくぐる。
そして、ギルドに帰還すると、カエデちゃんのもとに向かったのだが…………
「留守?」
「そうですね。支部長は外出しています」
カエデちゃんが業務用の笑顔で頷く。
「仕事?」
「ですね」
あの人もやることはやってんだな。
でも、どうしようかな……
俺が悩んでいると、ナナポンが俺の肩を叩いた。
「私が後で電話して報告しておきますよ」
それがいいか……
本人が説明した方が良いし、わざわざ帰ってくるのを待ってまで話すことではない。
「じゃあ、おねがい」
「任せてください」
俺は説明をナナポンに任すと、ちょっと早いが、家に帰ることにした。
◆◇◆
家に帰った俺はカエデちゃんが帰ってくるまでの間にヨシノさんにナナポンも連れていくことを電話で説明した。
ヨシノさんは快く、受け入れてくれたため、明日は女3人と俺1人というハーレムパーティーでの冒険となった。
しかも、巨乳と人妻と未成年という属性コンボだ。
なんかすごい。
しばらくすると、カエデちゃんが帰ってきたのでご飯を食べながらこのことを説明した。
「へー、ナナカちゃんが先輩とねー」
カエデちゃんが感心している。
「嫌がってたけどね」
「どうしてナナカちゃんを連れていこうと思ったんです? ヨシノさんに面倒を見てもらいたかったんですか?」
「実はさ、今日、ナナポンのレベルが10になったんだよ」
「おー! ついに2桁になりましたね!」
くっ!
俺も早くレベル10にしてやる!
「そうそう。そしたらあいつの透視のレベルが上がったんだよ」
「あれってレベルがあったんです? 私は見えないので知りませんでした」
俺は見たけど、覚えていませんでした。
「らしいよ。それでレベルが上がったことでアイテム袋の中身まで見えるようになったんだってさ」
「すごいですねー。あの子には秘密を作れませんね」
早くエロ雑誌を隠さないと!
「透視はホントすごいわ。それでさ、明日、ナナポンにヨシノさんとリンさんのユニークスキルを見てもらおうかと思ってる」
「ユニークスキルですか? リンさんは持ってるかの確認ですよね? ヨシノさんは完全記憶じゃないんですか?」
「それの確認。嘘ではないと思うけど、一応ね」
「まあ、そのくらい用心深い方が良いとは思いますけど……」
カエデちゃんは元からの知り合いだから嘘をついてないと思うのだろう。
「あくまでも確認だよ。あと、ナナポンの練習。今後、強そうな人を見る時にバレないようにしたい。あの2人ならバレても許してくれる」
サングラスをかけている時はいいが、普通の状態ではバレるかもしれない。
「ああ、なるほど。確かに不自然に思われるかもしれませんね」
「そうそう。特にユニークスキル持ちは警戒してるしね。ナナポンも透視には慣れてるだろうけど、ステータスカードの文字は小さいからちょっとやってみてもらう。俺は気を逸らす担当」
俺とナナポンのコンビネーションを見せてやるぜ。
「微妙に不安な2人ですけど、頑張ってください……」
こらこらー。
信用しなさい。
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