第101話 回復ポーションはすごい


 俺はソファーで寝ころびながら床に座っているカエデちゃんを見ている。

 何故、カエデちゃんが床に座っているかというと、カエデちゃんはヨガをしているのだ。


「何ですかー?」


 足を変な方向に曲げ、両手を頭に持っていき、胸を突き出すポーズをしているカエデちゃんと目が合うと、カエデちゃんが聞いてくる。


「お前、身体が柔らかいな」


 さっきからずーっと見ているが、よくそこまで曲がるもんだと感心する。

 俺も身体は柔らかい方だが、カエデちゃんはそれ以上だ。


「昔からやってますからねー」

「へー……」


 じー……


「別に見てもいいですけど、自慢なのは足のラインとお尻なのでそっちを見てくださいよー」


 自慢は足とお尻らしい。

 俺は突き出した胸部だと思うんだけどなー。

 というか、座ってるからお尻は見えない。


「カエデちゃん、背はそんなに高くないけど、スタイル良いね」


 カエデちゃんは運動用の動きやすい薄着の格好をしているため、身体のラインがよくわかる。

 カエデちゃんの身長は155センチ程度で全体的に小柄だが、足はスラッとしているし胸もそこそこある。

 非常にセクシーでかわいらしい。


「でしょー。これが24年間の努力の結晶です。先輩というかエレノアさんもやったらー?」

「フロンティアで冒険してるから」


 そもそもエレノアさんのスタイルなんかどうでもいいわ。


「油断は禁物ですよ。30代になったらお腹が出るかもです」

「暇な時に走ろうかな……」


 メタボは嫌だ。

 元会社の先輩曰く、ある時を境に一気に来るらしい。

 気を付けよう。


「良いと思います。食生活の乱れがすごいですからねー」


 総菜や外食、そして、酒か……


「俺、ポーション健康法ってやってるんだけど、カエデちゃんもやる?」

「まーた変なことをしてますねー。どんなんです?」


 カエデちゃんがヨガを続けながら聞いてくる。


「寝る前に回復ポーションを飲むっていうやつ」

「贅沢ですねー」

「昨日はレベル3の回復ポーションを飲んだ」

「もはや、バカですねー」


 まあ、俺もそう思う。


「代謝が良くなりそうじゃない?」

「まあ、そうかもですねー。効果はあります?」

「朝起きた時に快調だね。寒いから布団から出られないけど」


 これはしゃーない。


「ふーむ、じゃあ、私もやります」

「そうしよう。あ、そうだ。ポーションソープを作らないと」


 そういえば、それを作ろうとしているところにヨシノさんが来たんだった。

 というか、オートマップをサツキさんに渡すのを忘れてた。

 しゃーないからカエデちゃんにでも託そう。


「まーたアホなことでも思いついたんですか?」

「思いついたのはアホのナナポン。ポーション風呂は寒いし、ボディーソープに回復ポーションを混ぜたらいいんじゃないかってさ」

「ふーん、じゃあ、シャンプーやコンディショナーに入れたら髪質が良くなるかもですね」


 なるほど。

 さすがは女子。


「やってみるか……少なくとも、ポーションで皿とかを洗えば汚れが良く落ちたし、効果があるかもしれん」

「上手くいったら教えてくださーい」

「わかったー」


 カエデちゃんのために頑張るか……


 俺は自分の部屋からカバンを持ってくると、ソファーの前のローテーブルに回復ポーションとボディーソープ、そして、100均で買ってきたボトルを出した。


「ここで作るんです?」


 いまだにヨガをしているカエデちゃんが聞いてくる。


「うん、せっかくだしね」

「まあ、いいですけど……」


 俺はカエデちゃんをチラチラと見ながらもボトルに回復ポーションとボディーソープを入れ、混ぜた。


「出来たー。これが錬金術!」

「錬金術って……小学生の工作でももっとやりますよ」


 カエデちゃんが半笑いで言う。


「カエデちゃんはシャラップ! よし! 試してみようかな」

「お風呂に入るんです?」

「そうそう。ちょっと身体を洗ってくる」

「だったら一緒にポーションシャンプーとポーションコンディショナーも試してみてくださいよ」


 確かにどうせ風呂に入るんだから手間は一緒か……


「カエデちゃんのやつをもらってもいい?」

「いいですよー」


 俺はカエデちゃんの許可を得たので風呂場に行き、カエデちゃんが使っているシャンプーとコンディショナーを持ってリビングに戻った。

 そして、カバンから回復ポーションとボトルを取り出す。


「レッツ、錬金術ー」

「絵具で遊ぶ子供ですね」

「カエデちゃん、シャラーップ!」


 俺はニコニコのカエデちゃんを黙らせると、容器にポーションとシャンプーやコンディショナーを混ぜていく。


「あっという間に完成!」

「そらね」


 まあ、混ぜるだけだし。


「さて、試してくるか……」

「先輩、やるならエレノアさんでやってくださいよ。そっちの方が効果がわかりやすいです」

「エレノアさん? どっちみち、もちもち肌だよ」


 言っておくが、デブという意味ではない。

 ポーション風呂のおかげですべすべでもちもちなのだ。


「私だってそうです。だから効果がわかるんじゃないですか」


 なるほど。

 男でやるより、同性の方がカエデちゃんが使った時の効果がわかりやすいか。


「じゃあ、入ってくる」


 俺はカバンにボディーソープ、シャンプー、コンディショナーを収納する。


「いってらっしゃーい」


 俺はカバンを持って脱衣所に行くと、服を脱ぎ、TSポーションを飲む。

 すると、すぐにエレノアさんに変わった。

 そして、俺は一度、自分の腕をさする。


「ふむふむ。ビフォーはこの感触ね」


 俺は腕を触り終えると、風呂場に入り、シャワーを浴びることにした。




 ◆◇◆




 シャワーを浴び終えた俺は身体を拭き、ながーい髪を何とかドライヤーで乾かした。

 そして、バスタオルを身体に巻き、リビングに戻る。


 リビングに戻ると、すでにヨガを終えたカエデちゃんがソファーで休んでいたので隣に座った。


「見て見て。結構、良くない?」


 俺は長い髪を掴むと、カエデちゃんに見せる。


「おー、すごいサラサラです…………いや、服は?」


 カエデちゃんがバスタオルだけの俺を見て、ツッコんできた。


「どうせ、すぐに戻るし」

「クレアさんに電話するんじゃないんです?」


 そういえば、そうだった。


「服は後で着るよ。それよりか、肌も結構、いい感じだわ」


 俺は髪を離し、自分の露出した腕をカエデちゃんに見せつけながら撫でた。


「どれどれ…………ほう! 良いですね!」


 カエデちゃんが俺の腕や太ももを撫で、笑顔になっている。

 微妙にセクハラっぽいが、相手がカエデちゃんなので気にしない。


「でしょー。カエデちゃんもやってみなよ。撫でてあげるから」


 ヨガで汗をかいただろうし、ちょうどいいと思う。


「…………あのー、もしかして、先輩がバスタオル一枚で出てきたのって、私にもその格好で出てこいっていう意味です?」


 まあ、そうだね。

 そうだったんだけどね……


「いや、服は着た方が良いよ。実は寒い」


 いくら昼間でも11月にやることじゃねーわ。


「先輩、さっさと服を着てください」

「そうする…………」


 寒い……


「じゃあ、私も入ってきますよ」

「うん。俺はその間にクレアに電話するわ」

「そうしてください」


 俺は立ち上がると、服を着るために自室に向かった。

 カエデちゃんもお風呂に入るために自分の部屋に向かった。


 さすがに日課の廊下待機はやめた。

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