第006話 我が作戦に狂いなし!


 俺は翌日、朝からネットで必要な物を注文していく。


「ふんふーん、金があるって素晴らしい!」


 まだないけど……


 俺はネットで色々と注文すると、腕を伸ばす。


「んー! こんなもんかなー」


 俺はネットでの注文を終えたので次の作業に入る。


 まずはキッチンに行き、コップに水を入れ、そこに小麦粉を投入する。

 昨日はテーブルで作業を行っていたが、小麦粉が散らかって、片付けがめんどかったのだ。


「金ができたら引っ越しして、錬金術用の部屋でも作るかねー」


 沖田君のアトリエだね。


 俺は材料を合わせると、スキルを使い、性転換ポーション、略して、TSポーションを作成した。


「さて、女になるかね」


 俺は昨日、どうせ翌日は女での作業だから女のままで寝ようとしたのだが、長い髪がうざくて寝られなかった。

 なので、男に戻っているのだ。


 俺は作成したポーションを一気飲みで飲み干す。

 すると、昨日と同様に視線が下がった。


「おー! 女になったぞ。ホント、すげーわ」


 俺は洗面台の前まで行き、鏡を見る。


「うーん、髪が伸びるし、身長も縮んでいる」


 俺の身長は170センチある。

 だが、女になると、身長が155センチまで下がってしまう。


「なんでこんなに変わるんだろうか? これ、本当に俺と同じ遺伝子か?」


 よーわからん。

 もしかしたら俺の好みが反映されているのだろうか?

 でも、俺の好みは昔は黒髪だったが、昨日から茶髪に変わっているはずだ。


「うーん、わかんね」


 まあ、いいや。

 出かけよう。


 俺は当然、女の着替えを持っていないため、ジャージのままで玄関に向かう。

 そして、靴を履こうとしたが、サイズが合わなかった。


「これもか……まあ、サンダルでいいや」


 俺は靴を諦め、サンダルで外に出ると、ちょうどお隣さんも家を出るところだったらしい。


「こんちゃーす」


 俺はいつものように挨拶をする。


「お、おう……」


 お隣さんが困惑していた。


 あ、俺、女だったわ。


 俺は説明のしようがないので、頭を下げると、そそくさとその場をあとにした。


 俺はそのまま歩いていくと、目的地である美容院に到着する。

 ここは来たことがない美容院だが、男の時と同じ美容院にすると、ぼろが出そうなので避けたのだ。


 俺は美容院のガラス扉を開いた。


「いらっしゃいませー。ご予約のお客様ですか?」


 美容院に入ると、女の店員さんが声をかけてくる。


「違います。予約が必要ですか?」

「いえ、今は空いてますので大丈夫ですよ。カットですか?」


 まあ、平日の朝だし、予約はいらないだろうと思っていた。


「カラーリングです」

「わかりました。どうぞ、こちらへ」


 俺は勧められるがまま、奥に行き、大きな鏡の前の椅子に座る。


「どの様な色を考えておられますか?」


 美容師さんがヘアーカタログを見せながら聞いてきた。


「金で。全部、金に染めてください」

「全部ですか? かなり長い様に思いますが、カットします?」

「いえ、このままでいいので全部、金に染め上げてください」

「この長さだと、ロング料金がかかりますけど……」


 そんなんがあるんか……

 いや、この毛量とショートの人の値段が一緒なわけないか。


「大丈夫です」

「わかりました。まずはシャンプーしますね」

「お願いします」


 それから美容師さんは大変だった思う。

 いくらなんでも腰まである髪は長すぎだ。

 だが、これも変装のためなので仕方がない。


 美容師さんは苦労をしながらも髪を洗ってくれたし、髪を染め上げてくれた。

 そして、3時間近くも時間をかけてもらい、完成した。


「どうですか?」

「問題ないです。ありがとうございます」

 

 美容院の大きな鏡に映るの金髪ロングヘアーの女だ。

 美人だし、まず俺ではない。

 俺要素と言えば、ジャージくらいだ。


 俺はかなり高いお金を払い、店を出ると、あちこちで買い物をした。

 そして、夕方に家に帰ると、TSポーションで男に戻る。


「ふむ、やはり髪の色は黒に戻ったな……」


 俺は昨日、これをマジックを使って検証していた。

 女の状態で髪にマジックを塗り、男に戻ったのだが、マジックはついていなかった。

 だが、さらに女に戻ると、マジックが髪についていたのだ。


 これで男の状態では黒髪、女の状態では金髪となった。

 あとは明日には届く商品で完璧だ。


「あとはキャラ付けだな。さすがに俺口調はない」


 うーん、女口調は難しいような気もする。

 まあ、寡黙でミステリアスな感じでいくかな。

 しゃべるとぼろが出そうだもん。


 色んな作業を終えると、この日は早めに休むことにした。


 俺は金が入ったら絶対に引っ越そうと思いながら狭い部屋でせんべい布団を敷き、就寝した。




 ◆◇◆




 翌日、俺は朝から大量の荷物を受け取ると、広げていく。


「ふふふ。お金を儲けて、ニート生活作戦の始まりだぜ」


 俺はすべての荷物を整理し終えると、不敵に笑った。

 そして、キッチンに行き、TSポーションを作る。


「コップを大量に買ってよかったわ」


 俺はTSポーションを作り終えると、キッチンの隅に重ねてある大量のコップを見る。


「しかし、これでいよいよ金がヤバい」


 俺はカラーリングを始め、多くの物を買ったため、貯金が20万を切っていた。

 家賃に光熱費、さらに食費や雑費を含めると、来月は越せそうにない。


「よし! 次だ!」


 俺はTSポーションを作った後に純水を10個作り、並べていく。

 さらにそこにネットで買った薬草を投入し、回復ポーションを10個ほど作成した。


「これでオッケー! さて、お次はっと……」


 俺は作成したTSポーションを飲むと、女に性転換する。

 もちろん、髪は金色だった。


 俺は次に部屋に戻り、ジャージを脱ぐと、素っ裸になる。


「うーん、カエデちゃんとどっちが大きいかなー?」


 素っ裸になると、一応、自分の胸を揉んでみるが、特に何の感情も沸かない。

 股間のモノがない影響もあるのだろうが、自分の裸を見ても何とも思わないのだ。


「この辺もわからんな……まあ、どうでもいいか」


 俺はさっさと作業をするために、ネットで買った黒ローブを着込んだ。

 そして、カラコンを持って、洗面台に行き、目に装着する。


 経験のないコンタクトに悪戦苦闘しながらも装着し終えると、鏡を見た。

 そこ映っているのは金髪碧眼で黒ローブを着た美女だった。


「ふっふっふ。どう見ても俺ではない」


 魔女っぽいし、俺には到底見えない。

 上手くいけば、日本人とも思われないかもしれない。


「よっしゃ! 完璧!」


 俺は準備を終えると、通販で買った肩にかけるタイプの白いカバンに回復ポーションを詰めていく。


「うーん、10個作ったんだけど、持っていけるのは5個かなー」


 せっかく作ったが、カバンの容量的に10個は難しい。

 ガラスの瓶に入っているし、無理に持っていくと割れそうだ。


「残りは今度でいいか…………とりあえず、250万もあれば当分は遊べる」


 金が尽きそうになったらまた売ればいい。


 俺はカバンに5個のポーションを詰め終えると、カバンを肩にかけ、部屋を出た。

 そして、電車に乗り、目的の店に向かう。


 電車の中では結構な人が乗っていたが、無事に座ることができた。

 なお、周囲の人とは目は合わないが、俺に関心があるのはわかった。


 まったくこっちを見てこない人やチラチラとこちらを気にするそぶりを見せる人がおり、不自然なのだ。

 まあ、黒ローブを着た腰まである金髪ロングヘアーの女がいれば、コスプレイヤーか何かと思うのだろう。


 俺は気にしないようにし、駅への到着を待つ。

 そして、駅に着くと、まっすぐ目的の店に向かった。


 そこはフロンティアの素材を買い取ってくれるらしい店だ。

 俺は店に入ると、すぐに買取カウンターに向かう。


 カウンターには若い女性がいた。


「買取でお願い」


 俺はカウンターにカバンを置くと、女性に声をかける。


「いらっしゃいませ。こちらですか? 中身はなんでしょう?」

「回復ポーションが5個。レベルは全部1だけどね」

「5個!? そんなにですか!?」


 女性の店員はものすごく驚いている。


「そうよ」


 俺はカバンからフラスコを5個取り出して、カウンターに置いていく。


「しょ、少々お待ちください! あの、これをお預かりしてもよろしいでしょうか? 鑑定にかけます」


 さすがに貴重なポーションを5個も売りにくると、偽物を疑うのだろう。


「どうぞ」

「少々、お待ちください!」


 女性の店員はポーション5個をカゴに入れると、慎重に奥へ運んでいった。


 さーて、いくらになるかなー?

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