こーがいーきょーいくー
今日は待ちに待っ……てない。別になくてもいいとすら思っている校外教育の日だ。これからバスで長時間移動になる。
途中で美奈ちゃんと合流。お揃いのハードケースに少しにやける。
学校に着くと半数以上の生徒が来ていた。うちの組だけ数人楽器を持ってきている。
「あっ、えっと、ちゅ、チューリップさん?」
「
頭お花畑とかじゃないからね。
「聞いてくれてありがとうね。私も楽器やってて、先生に少しでもいいから毎日必ずやりなさいって言われてたの」
「わたしもー……あと美奈ちゃんも、先生にそう言われててね。まだ始めたばかりのへたっぴなんだけど、だったら余計毎日触れって怒られちゃって」
「あはは、わかる」
どこも一緒なんだ。それだけ重要ってことなんだね。
「ちなみになに持ってきたの?」
「これ? デジタルサックスだよ」
えーっ、なにこれかっこいい! メカだメカ。ボタンが多すぎて理解できない。
「サックスなの?」
「うん。デジタルだからこのままじゃ音出ないけどね」
世の中にはいろんな楽器があるなぁ。
あーでもピアノだって88鍵盤だっけ? ボタンが88個あるようなものだし、更にペダルもある。ギターの場合は……モズライトもスタインバーガーも22フレットだ。それに6弦あるからえっと、132かな。あーでも別の弦で同じ音も出せるから、それは引くのかな。いくつだ?
それは今度調ちゃんに聞こう。それより先生がみんなを呼んでるから行かなくちゃ。
あれ? 茶山さんがいない……あっ、来た。ギリギリだなぁ。そしてやっぱりギターを背負っている。
みんなが集まったところで軽く説明、そしてバスへ移動。楽器も荷物と一緒でトランクに入れるよう言われたんだけど、茶山さんは荷物を置くとギターごとバスの中に入ってしまった。ほんとなんなんだろう、あの子。
郊外教育は山奥の校舎っぽいところで行われた。体育館とか教室みたいなものあるけど、そんな頻繁に使わない場所なのに豪勢だなぁ。いろんな学校で使いまわすのかな。
体育館で校長の挨拶、そしてクラスごとでガイダンス。夕食が終わってからまたクラスで集まった。
「えっ、また自己紹介なの?」
「先日は軽く名乗っただけだったでしょ。今度はもっとみんなと仲良くなるための自己紹介よ」
なるほど。なに話そう。
「トップバッターは難しいと思うから、先生がするわね。先生の名前は天塩羊子。今年でここの先生5年目で、趣味は料理。家庭部に興味がある男女諸君、よろしくね」
家庭部に興味がある生徒にしかよろしくしてくれない先生ということはわかった。いや冗談だけど。
「それじゃあ次は……」
「はーい、出席番号1番、合川
元気っ子だなぁ。わたしはぱるちゃんって呼ぼうかな。
こんな感じで自己紹介が進んでいった。叫人くんは声が小さかった。
そして我がクラスの問題児(予定)の番だ。
「えー、茶山心。富山から来ました」
「……えっ? あ、終わり?」
茶山さんは先生の問いに頭を下げて座ってしまった。クラスに馴染むつもりはないのかな。
まあいいや。次はわたしの癒し、美奈ちゃんだ。
「え、えと、さ、参平美奈です。馬事中学校から来ました。えっと、趣味は最近始めたベースです」
美奈ちゃんの紹介を聞いた茶山さんは美奈ちゃんを一瞥した。そっちには興味あるんだ。
美奈ちゃんの後に数人挟み、ようやくわたしの番だ。
「わたしは忠烈布しずくです。ちゅうれっぷですよ、チューリップじゃないからね。しずくは雨垂れ石を穿つとかって意味です。駒中から来ました。趣味はギターで、美奈ちゃんと一緒に習ってます!」
うっわ、茶山さんがすっごい睨んでる。なんでよ。
もしや自分以外のギタリストは敵だとか? おお怖い。
「先日楽器持ってきていいか聞いたわよね。持ってきたの?」
「はいっ」
おニューである。まあ中古だけど、ほぼ新品だからおニューだ。
「他に持ってきた子はいるの?」
すると4人手を挙げた。わたしと美奈ちゃん以外に4人は多いな。
こらこら茶山さん、あなた超持ってきてるでしょ。挙げないの?
ひょっとして中身ギターじゃないとか? デスペラード?
「結構いるのね。でもうちの学校、吹奏楽はあるけど軽音はないわよ」
そっか、部活としてやるひともいるのか。
「わたしと美奈ちゃんは先生がいるんで部活とか入らないですよ」
「あー、そういう子もいるのね」
「私はジャズ志望なんで、一般的な軽音のひととは違います」
おおデジタルサックスの子……
一応ジャズも軽音なんだけど、確かに軽音部っていうとバンドみたいなイメージあるよね。クラシック以外の音楽は全て軽音楽ってちょっと乱暴な分類法だ。
ジャズもかっこいいよね。わたしも弾いてみたいかも。
あーでもジャズってアコースティックなイメージあるなぁ。だけどエレキでもフェンダーでジャズマスターってギターあるし、いけるかな。
「一応楽器の練習は大事だってことを知ってるから許可したけど、他の子の迷惑にならないよう練習してね」
はーい。
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