第3話

結婚前夜 そして…


 ハナ、ハル、イルナム、タロはごく普通のファミリーレストランに集まっていた。イルナムとタロは挨拶もなく、視線を合わせようともしないので場の空気は重かった。それを良くする為、ハナが明るくタロに話しかけた。


 ミスタータロお久しぶりです。お元気でした

 か。 タロの表情が一変した。


 そりゃ、元気ですよ。それで商売してるよ

 なもんですからね、ハハハ。ハナさんこそ

 体調の方はどうですかね。


 元気です、とても。


 イルナムはハナとタロが賑やかに会話している事が気にいらないのか表情がどんどん険しくなっていたので、ハルが気を使いイルナムに話しかけた。

 

 マスターイルナム、お久しぶりです。お元気

 でしたか。


 まあまあだね。イルナムが短くそう言った


 何か美味しいもの食べましょう!ここの

 ステーキ、以前食べた時、美味しかったわ

 

 ハナがハルをカバーした。タロはその提案を快く引き受けた。

 

 そうしようか、ハナさん。ハル、ウェイターを呼べ。


 四人は運ばれて来たステーキを無言で食べた。四人とも食べる時は話さないタイプで食事に集中していたため、場の空気が少し軽くなった。ほとんど同じタイミングで四人とも食事を終えると、ウェイターが空いた皿を下げ、デザートを運んで来た。四人とも甘いものは好きではなかったので、ハナだけ一口食べて、残りの三人は全く手をつけなかった。

食事が終わると再び沈黙が訪れた。イルナムとタロはどう道場の事を聞けばよいのか悩んでいた。空気がどんどん重くなっていた時、

ハナが先手に出た。


 実は今日この場を借りて、お二人に報告

 したい事があります。


 何をだ、また。イルナムの声が少し震えた


 お父さん、まだ何も話してないでしょう

 少し落ち着いてよ、ハルさん、あとは

 お願い。 

 

 ハナはハルにバトンタッチした。タロはハルの目を見た。

 

 実は、私たちこれから独立しようと思って

 います。


 独立? 独立? イルナムとタロは同時に聞き返した。


 はい、ハナと僕と二人で新しい武道フィッ

 トネスクラブを作ろうと準備中です。

 

 武道フィットネスクラブ?また、二人の父は同時に聞き返した。


 ダメだ! タロがハルの話しをさえぎってこう言い続けた。


 いいか、よく聞け!お前は日本人の魂を

 持って生まれたんだから、ちゃんと、

 家業を継がなければならない。何百年と

 受け継いだものなんだぞ!その魂と誇り

 というものがお前さんにはないのかね。

 そんな息子に育てた覚えはない、結婚

 する前から嫁の尻に敷かれよって、

 このバカ息子が!


 イルナムもハナを諭し始めた。


 ハナ、君の考えも素晴らしいと思うよ、

 しかしな、ハナ、よく聞くんだぞ、

 時代の流れなんかよりはるかに大切な

 事がある、それはな、民族の魂だ。

 テクォンドはな、我が韓民族の武芸として

 …

 

 嘘つけ、空手のパクリだろうが タロが

叫んだ。

  

 なんだと、君らが我らを先にパクったんだろうが。 イルナムはこう言いながら、こう

続けた。

 何千年も前に半島からそっちに人が渡って

 行ったから、今の君達がいるんだろがよ。

 その恩を仇で返すのか、この恩知らずの

 片玉ヤロが! 

 タロも負けじとこう返した。

  

 何をバカな、そっちが何でもかんでもパク

 ってんだろうが、世界中のみなが知ってい

 るわい、この詐欺師の整形ヤロが


 そして、イルナムとタロは同時に立ち上がった。

 

 あの時は運が良かったな、ドロで終わって

 ミスタータロよ、その立派に生き残った片

 玉も割ってやるよ!


 上等だ!あれの続きをしようぜ、場所は

 駐車場でいいな、イルナム。また折って

 やるぜ!その立派に直して高くした鼻を。

 

 









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