第6話 お休み

「そっか。お弟子くん、死んじゃったのか」

 朝の光が小さな窓から射し込む薄暗い部屋。白いシーツの上で絡み合うように混じり合う赤と黒の長い髪。突っ伏していた女は顔をあげ、ニッコリ笑った。

「じゃあさ、また髪の毛切ってあげようか。今度はバッサリ短めに」

 女の言葉に応えず、立ち上る紫煙をただ眺める男。不意に何かを思い出したようにパチンと指を鳴らす。


「あら、綺麗」

 彼の手には氷の花が一輪。

「先生、氷の魔法も使えたのね」

「……いや」

 男は何か呟き、ぼんやりそれを見つめた。そして、

「お腹減らへん?」

「は?」

「ミートローフが食べたいねんなぁ。ボクが作るし、あとでキッチン貸してや」

 そう言うと、男は女が返事をする前に彼女のことを押し倒す。煙たい部屋にしばらくの間、甘い嬌声が小さく響いた。

 よく晴れた穏やかな朝。花瓶に挿された氷の花は部屋の片隅でカランと静かに音を立てた。

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炎使いと氷の弟子 おくとりょう @n8osoeuta

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