第6話










  『なまくら刀殺人事件』


「ああ。それに、この別荘にマスターキーがないという事は、犯人がオーナーの顔見知りで、オーナー自ら、部屋の内側からカギを開けたという事。

加えて凶器は、リビングにあった、被害者の横に落ちているなまくら刀」

 翼は、そう説明し、

「以上の事から、外部犯の可能性は極めて薄い。よって犯人は、あんた方四人の中の誰かだ!」

 と、木下、花森、福住、亀井の四人を指差して叫ぶ。

「私達の中に犯人がいる?」

「そんなバカな……」

 木下に続いて、福住の顔が真っ青になる。

「さすが、いつも警察の事件に協力してるだけあるわね。推理の筋が通ってるわ」

 亀井が、笑いながら言う。

「フン、面白い」

 花森は、得意気にそう笑い、坂田の方を見て、

「おい、あんた警部だろ! こんな高校生にばっかり推理されて、あんたは黙ってんのかよ!」

と、詰め寄る。

「いえいえ、私も黙ってはいませんよ。今から、皆さんのアリバイ検証や話を聞かせて頂きます」

 坂田は、すぐにそう花森に返し、亀井の方を向いて、

「では、まずは亀井さん、昨日の二十三時頃、どこで何をしていたか聞かせて頂きましょうか?」と聞く。

 それで亀井は、

「私はその時間、部屋で、本宮君の歯の治療に使った道具を洗っていたわ。二十三時半頃に洗い終えて、その後すぐに寝ちゃったわ」

 そう平然と答える。

「なるほど」

 坂田は、メモを取りながら肯く。

肯いた後、福住に向かって、

「次、福住さん」

「僕は、その時間は部屋で寝ていました。二十二時頃にお風呂に入って、二十二時半から朝まで、ずっと部屋で寝ていたと思います」

 福住が証言する。

 次は、花森が聞かれる前に、

「俺は、この子にキシリトールのガムをあげた後から、二十四時頃まで煙草を吸いに、外でブラブラしてたよ」

 と、ニヤつきながら、翼の方を見て答える。

「花森さんは、二十四時まで外をブラブラしていたと」

 坂田は、花森の証言をメモする。

「私は皆さんの為に、今日のタイムスケジュールを部屋で作っていましたよ。

ほら……」

 木下はそう言って、紙に書いたタイムスケジュールをポケットから出し、広げて、翼と坂田に見せる。

「ん?」

 坂田は、そう線の歪んだタイムスケジュールを見つめ、

「このタイムスケジュール、ちょっと汚いですねえ。線がグダグダしてるというか、歪んでいるというか……。

普通、こういうスケジュールみたいな物ものって、ものさしか何か使いませんか?」

 と聞く。

「あっ、これ、いつもは自分の愛用のものさしを使っているんですが、なくしてしまったんですよ。

昨日は、きちっと自分の手元にあったのに」

 木下が、頭を掻きながら答える。

 すると翼が、

「ものさしって、これじゃないんすか?」

 そう言って、部屋の机の上に置かれている、〝木下〟と書かれたものさしを指差す。

「どれ?」

 木下は、翼が指差したものさしを見て、

「おお、それですそれです。よくぞ見つけて下さいました」

「さすが翼ちゃん」

レイナが褒める。

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