第3話
『なまくら刀殺人事件』
4
十九時。リビングに、翼達や、織田の友人達が集まっていて、翼は、遠慮なく夕食を食べている。
「うわー、うっめー! ここの料理最高だ」
翼が、料理を見境なく口に入れる。
「もおー、翼ちゃんったら」
レイナが、呆れた顔になる。
「ここの料理、木下さんが全部作ったんすか?」
翼がそう聞くと、
「ええ、昔、シェフをやってましたから」
と、木下が笑顔で答える。
「さあ、そろそろみんな自己紹介をせねばならんな。こちらが今まで見つけた財宝は数知れず、冒険家の福住だ」
織田が、福住を指差す。
「どうも、福住亮と申します。僕はいろいろな場所、危険な場所に行き、宝やロマンを探し続けているんだ」
続いて花森が、
「俺は、証券会社勤務の花森英樹。成績は社内トップのエリート社員さ」
と、自己紹介する。
「こいつは何事にも負けず嫌いでね」
花森の向かいに座っている織田が、花森を指差す。
「ああ、学業もスポーツも、高校時代、常にトップ。
唯一、負けた思い出といっちゃ、高校時代に居合いの決勝で、オーナーと当たった時ぐらいだよ」
「あの時、俺が優勝で、お前が準優勝だったな。あれが唯一、俺がお前に勝った出来事だったな。ハハハ」
花森に、織田が笑いながら返す。
「お二人は居合いでは、ライバルみたいな関係だったんですね」
レイナが、花森と織田の顔を見渡す。
「ちょっと、そろそろ私言わせてよ。私は歯科医をやっている、亀井綾子よ。どんな虫歯でも治せる、腕利きの歯科医よ」
亀井が、自信に満ちた様子で話す。
「うわー、美人なお姉さん」
翼はデレデレする。
「ちょっと翼ちゃん、美人の人を見ると、いつもすぐそんな事を言うんだから」
レイナが叱るように言う。
「そういう君達は?」
亀井が、翼とレイナに聞く。
「あっ、俺、高校生で本宮翼って言います。
この警部の知り合いで、よく事件に協力してるんで、旅行がてらに俺ら二人、連れてきてもらったんすよ」
翼が、横にいる坂田を指差しながら話す。
「私は、翼ちゃんの幼馴染で、クラスメイトの光木レイナと言います。
翼ちゃんはいつも人に迷惑ばかりかけちゃうんで、お世話係みたいなもんです。オホホ……」
そう言って、レイナは少し照れる。
「へえー、高校生で警察の事件に協力してるなんてすごいわね」
「いやー、それほどでも」
翼は、又も、亀井にデレデレする。
「ハハ、光木さん、お世話係なんて言っちゃって、君達二人、実は付き合ってるだろ? きちっと顔に書いてあるよ」
福住が、レイナと翼の二人を見て、冷やかす。
「そっ、そんな、バカ言わないで下さい。付き合ってるなんて、だっ、誰が翼ちゃんなんかと……」
レイナは慌てる。
「翼ちゃんなんかって……」
翼は顔が引きつる。
その翼の横で、坂田が、
「オホン、私は警部の坂田と申します。皆さんよろしくお願いします。
オーナーの織田さんとは以前、事件の依頼に携わり、そのお礼として、今日ここに招待してもらいました」
と、自己紹介する。
「ハハ、どうだみんな、本物の警部さんの話が生で聞けるなんて、貴重な事だと思ってここへお呼びしたんだ」
織田が、坂田を持ち上げる。
「ふーん、貴重な話ねえ……」
翼が、坂田を見ながら、皮肉ったように呟く。
二十時、引き続き――リビング。皆、ほとんど料理を食べ終わって、雑談している。
「へえー、それはすごいですねえ。その時、どうやって解決したのか詳しく聞かせて下さい」
福住が、坂田に、興味津々に訪ねる。
「あっ、そっ、その時はですねえ、たっ、確か……」
坂田がそう返答に困っていると、翼が、
「いたっ!」
と、右頬を抑える。
「翼ちゃん大丈夫? もしかして……」
レイナが、心配そうに聞く。
「ああ、虫歯だよ虫歯。いてててて」
翼は、そう頬を抑えながら痛がり、
「あー、やっぱり今日、歯科医に行っといた方が良かったかなぁ。でも、レイナの誘いは断れなかったし……」
「当たり前でしょ!」
レイナが怒鳴る。
「フフ、それは丁度良い事。私が後で、その虫歯を治して差し上げますわ」
亀井が、高飛車な態度で言う。
「本当っすかあ? 超ラッキー」
「もおー」
デレデレした態度で喜ぶ翼に、レイナが又も呆れる。
「ハハハ、良かったね、本宮君。
私はもう食べ終わったから、一階の自分の部屋に戻るよ」
織田は、左手を上げて部屋に戻っていく。
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