第2話

   『なまくら刀殺人事件』


      3


 翼とレイナと坂田の三人は、山形の別荘に到着する。

 そして織田が、翼達を出迎える。

「いやー、豪華な別荘だなあー」

 翼が、喜びながら別荘内を見渡す。

「ちょっと翼ちゃん」

 レイナが、恥ずかしそうに言う。

「ええ、それなりにお金はかけてますから。私は貿易会社の社長で、この別荘のオーナーの織田と申します。

以前、坂田警部には依頼でお世話になりまして」

 織田が、翼達に自己紹介をする。

「ああ、俺、坂田警部の知り合いの本宮翼って言います」

「翼ちゃんと同じ高校で、幼馴染の光木レイナと申します」

 翼とレイナが、頭を下げる。

「なんか悪いですねえ、以前、事件に携わったとはいえ、お礼にこんないいところに招待してもらって……。

本当は妻と娘と三人で来たかったんですが、あいにく、娘のコンクールで、妻と娘は九州に出掛けてましてねえ……。

代わりに、この二人を東京から連れて来たんですよ。たまには、都会の高校生に田舎なんてのもいいかなと思いまして」

 坂田は、翼とレイナを指差しながらそう話し、

「それで、この翼ってやつには、警部ながら事件解決の為に、度々お世話になってるんです」

と、翼を見て照れた様子を見せる。

「ほおー、こんな高校生の子が警部さんの手助けを……。

そりゃ凄いですね。

今日は私のパーティーで高校時代の友人が集まる。毎年同じメンバーだが、是非、警部さんや本宮君も、今までの事件の話なんか聞かせてやってくれ」

 織田が感心する。

「ええ、是非とも」

 坂田が返す。

「警部、なんか自慢できる話でもあんの?」

 翼は、坂田に揚げ足を取るように聞く。

 するとレイナは、

「ん?」

そうリビングに飾ってあるなまくら刀を見つけて、

「これは、刀?」と驚く。

「ああ、それはなまくら刀だよ。昔から居合道をやっていてね。高校時代は全国優勝してるよ」

 織田が答える。

 翼が、刀の前まで歩いて行き、

「どれどれ」

 と、なまくら刀を手に取って、

「うわー、本物の刀って初めて持ったっすけど、結構重いんっすねえ」

「こら翼ちゃん! 勝手に」

 興奮する翼に、レイナが怒る。

「ハハハ、いいんだよ。夜十九時に夕食のだから、それまで各自、リビングなり部屋なりでゆっくりしていてくれ」

 織田は、翼達にそう促し、大きな声で、

「木下、この方々に部屋のカギを渡してあげなさい」と言う。

「はい」

 織田に呼ばれ、リビングの奥の方から、執事の木下が来る。

 木下は、白髪頭で、六十歳ぐらいの男性である。

「この別荘の執事の木下です。明日まで皆様のお世話をさせて頂きます。

これが別荘のカギです。スペアーキーはございませんので、なくされないようにご注意下さい」

そう言って、手を広げてカギを見せる。


 翼は、部屋に案内されて、ドアを開ける。

「うおー、別荘のわりに豪華な部屋だなー。これなら一泊二日、気分良く過ごせるぜ。来て正解かも。

大型テレビに綺麗なベッド。そして、ドアの上に小さな窓」

 そう室内を見渡した後、

「ドアのカギはちゃんと閉めとかなきゃな」

 部屋のドアのカギの、サムターンを真横にし、内側からカギを閉める。

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