第7話

 数日後、仕事を探している時に噂話を聞いた。


「金の猛牛が、生きているかもしれない? 迷宮ダンジョンに籠って、もう数日連絡がないんだろう?」


「そうなんだが……。情報が入ったんだ」


 なんでも、斥候スカウトが一人保護されたのだとか。詳細を聞こうとするも、分からずじまいだった。詳細は、誰も分からないらしい。ギルド直轄案件なのか?


 俺はスキルを使った。目をつぶる……。彼等の現状を確認する。

 これは、俺のみのスキルだ。

 一度でも組んだことのある、パーティーリーダーを起点として、その現状を知ることができる。


 パーティー名:金の猛牛(一人離脱中)

 HP:110/162

 MP:98/152

 STR:81/110

 DEX:51/52

 VIT:67/70

 AGI:19/20

 INT:50/64

 MND:30/34

 CHR:25/50


『生きてはいるな……。このステータスだと、出口が分からずに迷っている感じかな。物資は豊富に持っていたから大丈夫と仮定して……。やっぱり、移動に問題があったのか?』


 ため息が出た。仕事を請け負わなくて良かったという安堵感と、俺ならば今の彼等を救えたかもしれないという罪悪感。

 罪悪感は、抱く必要はないかもしれないけど、顔見知り程度でも死者が出るのは、気分が悪い。


「助けたいけど、俺では二次災害にしかならないよな……。どこまで潜っているのか……。ダイソンの判断次第だよな。それと、救援に向かう高レベル冒険者に期待かな」


 これからしばらくは、迷宮ダンジョンに入らない方がいいだろうな。

 危険すぎる。それに救援部隊が組まれるかもしれない。

 俺は、呼ばれる可能性は少ないが、全くないとも言い切れない。

 ……ドブ攫いでもするか。


「そうかな~? 私たちは、救援に誘おうと思ってるんだけど? 誰かサポーターをしてくれないかな~」


 俺の独り言に、誰かが反応した……。

 背後を見る。リナリー様だった。


「そんな嫌な顔をされると、心が痛むんだけどな~」


 あ……。顔に出ていたか。

 俺はサポーターなんだ。笑顔かポーカーフェースを心掛けないとな。





「衛兵でパーティーを組んで、救援に向かうのですか?」


 話を聞くと、迷宮ダンジョン内での行方不明者が増えているのだとか。

 "金の猛牛"は、消息を絶って五日みたいだ。ギリギリ間に合う可能性があるのだとか。


「新しい階層が見つかったの。だけど、戻って来る冒険者が少なくて、救援隊を組むことになりました。それで、どうかな? ウォーカー君にも同行をお願いしたいのだけど」


 テーブルに金貨を置かれる。

 俺にとっては、高額だ。だけど、安全を取りたいのもある。


「俺は……、役に立ちませんよ?」


 俺のスキルは、理解されていないと思う。隠し続けているんだし。

 それでも、俺に拘るのか。興味を持たれたか?


「何か秘密があるみたいだけど、サポーターでいいからさ。一緒に来てよ」


 これ……、断ったら街にいられなくなる依頼と言うか命令じゃないか。

 護衛も睨んでいる。俺は天を仰いだ。

 本当に困った、お姫さまだ。

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