第6話

 俺は、数日の静養をとった。

 八人分のバフとなると、体がついて行かない。鈍っているな。


「昔は、回復魔法で強制的に働かされていたな……」


 苦い記憶を思い出す。

 限界以上に働いたけど、『つかえない』と言われて、パーティーを追放された過去……。メンバー構成次第だと、俺のスキルは死んでしまう。それに、レベルが違い過ぎる人がいると、開放リリースも上手く使えない。


 その後は、一人で静かに生きて来た。スキルの意味を伏せたまま……。


「食事でも買って来るか」


 鬱々としていても、気分が悪いだけだ。

 気晴らしに外へ出る。

 体中が痛いけど……、もう少しで回復するだろう。


 買い食いをしながら、迷宮ダンジョンの前に向かう。

 封鎖はされていなかった。

 衛兵たちは、帰ったみたいだ。


「冒険者にとっては、迷惑な話だったよな……」


「そうだよね……」


 背後から声をかけられた。

 リナリーさんだった。


 その後、強制的に馬車に乗せられる……。


「俺を拘束する意味は? 何処に連れて行くつもりですか?」


 おかしい……。俺に関する記憶は、消せてはいないけど混濁させたはずだ。

 なのに、この対応……。


「うふふ。記憶に関するデバフ魔法かな? 無効化できる魔法もあるんだよ?」


 バレて~ら。

 そして、今俺はソロだ。スキルの使えない俺は、かなり無力と言っていい。

 魔法は使えるけど、魔力量がほぼない。抵抗は無意味だな。

 今は、従っておこう。


 馬車が止まった。馬車から降りると、壁が見えた。


「城……。王城?」


「騎士団の砦よ。知らないの?」


 俺はこの街に流れ着いて、まだ日が浅い。それに、貴族が住む地域など俺が調べてどうすんだって話だ。


 その後、砦の中へ。

 衛兵たちは、皆敬礼してくれる。王族は、偉いんだな。改めて認識する。

 広場に着いた。そして、木刀を渡される。


「何ですか、これ……」


「君の実力を知りたいんだってさ。数人相手にしてみてよ。衛兵への推薦と考えて。評価高かったら私の護衛にって話もあるんだ」


 周囲の衛兵が、睨んでんだけど。

 さて、どうするか……。


 木刀で撃ち合うけど、数合で木刀を落としてしまった。

 全員が怪訝そうな顔をする。


「ねえ……。本気出してよ。そうしないと、帰せないよ?」


 困ったな、これが今の俺の全力なんだけど……。

 対戦相手もパーティーを組んでいないので、ステータスが見えない。

 俺の最も苦手とする状況だ。


「姫さま。もうよろしいかと……。その青年も本気を見せるつもりもないようですし」


「むぅ~……」


 リナリーさんは、俺をどうするつもりなのか。いや、もうリナリー様か。


「そんじゃ、これで。お世話になりました」


 木刀を置いて、広場を後にした。

 出口まで送って貰って砦を後にする。


「気が向いたら、また来てくれ」


 ここで気が付いた。俺が、衛兵Aと呼んでいた人だ。


「荷物運びで良ければ、呼んでください」

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