第2話

 物資は、ポーションと昼食だけだった。

 俺は、予備の武器と罠用の魔導具の提供を申し出た。使う場合は、後から請求するという内容で合意してくれた。

 それと、報酬の話だ。先に決めないといけない。

 俺の一日の稼ぎは、銀貨5枚前後だと言うと、了承してくれた。


『何かあるんだよな……。まあ、危険のないエリアに連れて行けば、今日は終わるだろう』


 俺の通常の荷物と、彼等の荷物を持って、初心者用の狩場へ向かった。





「ここは、猪の魔物がメインになります。それと、魔人が出る場合があります」


「了解です」


 護衛の二人は、なにも話さない。

 この女性に経験を積ませるつもりだな。そして、危なくなったら介入するのだろう。

 俺は、〈索敵〉を展開した。この三人の中で誰かが持っているみたいだ。


「北東に、猪が三頭いますね。一匹だけ連れて来ます」


「いや、一人一頭を引き受けよう」


 ここで、護衛Aが、口を開いた。この人が、〈索敵〉持ちだな。

 まあ、大丈夫かな。

 俺は、道案内をした。


 猪の魔物が視認できる距離まで近づいた。猪側もこちらに気が付いたみたいだ。

 数秒の対峙の対峙の後、猪が突進して来た。

 護衛Aと護衛Bは、剣で迎撃を行う。

 リーダーの女性は、魔法で迎撃だ。

 護衛たちは、問題なく猪を仕留めたけど、魔法は、掠めただけだった。

 リーダーの女性に、猪の突進が襲いかかる。


『……しょうがない』


 俺は……、魔法を展開した。猪の動きが止まる。俺の魔法は、本当であれば秘密なんだけどね。

 その後、女性の魔法の再発動で、猪を仕留めることができた。



「何の魔法を使ったの?」


 猪の解体と、血抜きをしていると質問された。

 ここは誤魔化す。


「アイテムですよ。魔法じゃないです」


「……そうなの?」


 まあ、魔力を使ったので、誤魔化しても信じてくれないのかもしれない。でも、魔力量はごく少量だ。アイテムの発動に魔力を使ったと思わせよう。

 俺の……、生命線でもある。こればかりは、誰にも教えられない。


 血に誘われたのか、その後、断続的に襲撃が続く。

 護衛たちは、問題がないけど、リーダーの女性の動きが硬いな。


「ちょっと、バフを付与しますね」


 俺は、INTを上げる魔導具を差し出した。魔法命中率の補正だ。それと、緊張をほぐす薬草だ。

 これらは初心者冒険者と組むこともあるので、必需品として持っている。


 護衛たちが、反対して来たけど、最終的に受け取ってくれた。



 その日は……、10匹の猪を狩れた。

 それと……、低級の魔人が1匹狩れた。これは大きいな。

 マジックバッグに素材を入れて、日暮れ前に街へ帰って来た。

 そのまま冒険者ギルドへ。


 素材の売却を行う。その様子を三人が観察していた。

 珍しいというより、誤魔化しを警戒されている?

 テーブルにギルド受付から受け取った貨幣をそのまま置く。


「銀貨60枚ですね。俺は、契約通り5枚貰います」


「ありがとう、君は優秀なんだね」


 あなた達のレベルが高すぎるんですが……。口には出さないけどね。

 お礼を言って、その日は分かれる。

 俺は、宿屋に帰って来て、明日の準備だ。


「まあ、王族貴族の遊びだったかな? 楽な仕事だった」


 適当に夕食を済ませる。

 その日は明日に備えて、早めに就寝した。





 次の日に、何時もの広場の何時もの場所へ。時間も同じだ。


「あ、ウォーカー君。今日も頼めるかな?」


「あ、昨日の……」


「今日はさ、もっとレベルの高い狩場を紹介して欲しいんだ」


 護衛たちは、何も言わない。

 王族の護衛か……。経験を積ませるつもりなんだけど、大丈夫なのかな?

 余り関わり合いたくないというのが、本音だった。

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