まだまだお子様だなぁ
みなさん、メリークリスマス!イヴの、長谷川理玖だよん。いやぁ、こないだ文化祭だと思ってたらもうはや年末ですね。去年のクリスマスは(部活の野郎どもと)ケーキを食っていたけど、今年の僕にはコワイモノなど何もない!
何せ、彼女(彼氏)である雪兎くんと絶賛ラブラブな仲ですからね!しばらくご無沙汰だったし、聖夜の天使の過ちか何かが奇跡になっちゃってもいいんじゃないかなぁ?だけど、これまた試験勉強やら練習で忙しくて予約とかし損なった。今から、どこのホテルもネカフェも空いてないよなぁ…と思っていると。
「りっくん、イヴの予定は空いているかなぁ?良ければ、俺と付き合って欲しい所があって…。元々は、トオイ君からのお誘いなんだけど」
まさかの、雪兎くんからお誘いが!予定空いてるも空いてないも、空けないでかい!もしや、ラブホやらネカフェの一室を抑えていらっしゃるとか?いや…伊勢嶋家の財力からすると、ちょっと下界を見下ろせるような高層ホテルの最上階かも知れんぞ。そこで、「見ろ、人がゴミのようだ!」とか言いながらのプレイとか!?
しかも元々は、トオイからのお誘いですと…。そうかそうか。女の子みたいな顔しといて、君もそう言うのに興味があったんだな。これは、いつか妄想した3Pが実現するのか…?こないだ雪兎くんとは一晩で○発ヤったし、一人あたり○発は余裕でしょ。よっしゃここは放置プレイとかケチくさい事言わず、精も根も尽き果てるまでヤったるで!
そう意気込んで、誘われるがままホイホイと雪兎くんに着いて行った所…。
神の御子は今宵しも
ベツレヘムに生まれたもう。
いざや友よ、もろともに
いそぎゆきて拝まずや、
いそぎゆきて拝まずや。
うん。近所のカトリック教会で、キャンドルサービスのイベントがあったんだって。だいたい、予想しないではなかったよ。トオイは母親の影響で、幼少期から教会の活動に関わる機会があった。ってかむしろ一時期は、聖歌隊にいた経験もあるらしい。道理で、クッソ歌上手いなとは思っていたわ…。
ちなみに両親の離婚で母親とは離れて住んでいたけど、今日ははるばる仙台からいらっしゃったとか。これから、トオイと二人水入らずで食事なんだってさ…。どうぞ、ごゆっくりお楽しみ下さいね。
オレも、雪兎くんと二人きりでゆっくりお楽しみと行きたい所だけど…。言ったように、どこを予約している訳でもない。こんな日だから、どこもかしこも人でいっぱいだろうな。だけど、こんな風に二人で歩いているだけでも楽しいもんだ。雪兎くんも、同じ事を考えてくれているんだろうか。心なし、いつもより嬉しそうな表情で話してきた。
「あ、雪だ…。素敵、ホワイトクリスマスだね。俺、名前の通り冬生まれだからかなぁ…。雪を見ると、何だかテンションが上がっちゃって」
オレもオレで、こうやって二人で見る雪だからかなぁ…。すごく綺麗に感じたし、柄にもなくテンションが上がってきた。だけど、どうしてだろう…。この白い雪と共に、雪兎くんまでがどこか遠い世界に行ってしまいそうな気がする。どうしてだろう。一体、どこに消えてしまう訳でもないだろうに。何だか変な沈黙が続いてしまったので、雪兎くんの方から気を使って話題を変えてきた。
「今年も、残す所あと何日かだね。今年は、りっくんに会う事が出来て…。再会出来て、なのかな?どっちみち、本当に良かったと思う。りっくんは、来年の抱負とか何かあるのかなぁ」
「そうだな。抜かずの3連発?」
「そっちかよ!?せっかくいい話風に振ってるんだから、そこは野球関連にしとこうよ!?それに、抜いての3連発だったらもう…。いや、何でもない。とにかく、今日はそっち方面の話はやめようよ。おごそかな夜なんだからさぁ…」
「そうだな。それじゃ、雪兎くんの来年の抱負を聞かせてよ」
「うーん、来年って言うのか…。小説サイトのBLコンテストで何作品か投稿したから、いずれか入賞したらいいなぁ。コンテストに限らず、自作品が何らかの形で認められればね」
あぁ。同い年の受験生が必死こいて勉強してる間に、デジタルメモだか何だかで書いてた作品ね…。どうあれ、雪兎くんの文章力ならきっと為せば成ると思う。
「出来るよ、雪兎くんなら…。言うて、練習が忙しくて未だに作品読んでないや。今度、時間が出来ればじっくりとね。ところで、オレの抱負を言い直させてほしいんだ…。来年ではないけど、高校進学と同時にロサンゼルスまでスポーツ留学しようと思っている」
「そうなんだ?いい事だと思うけど、本当に突然だね」
「ごめんね。本当は、ずっと前から決めていたんだ。だけど、言い出せなくて。オレだって、雪兎くんと一秒たりとも離れていたくはないよ…。だけど、日本の学校ではオレの素質が認められない気がして」
「うん。俺も、野球の事はカケラも分かんないけど…。薄々、そうじゃないかなぁって気はしてた。いいんじゃないかなぁ。あのねぇ、聞いてりっくん。小学生や中学生の頃って、学校が世界の全てだって思うよね。だけど、それって長い人生の中では本当に些細な…。狭い、狭ーい世界なんだと思う。りっくんには、そんな狭い世界の中で満足してほしくないよ。どうか、この広い世界で羽ばたいてほしい」
「雪兎くん…うぅ。もし海外に行ったとしても、どうかオレの事を忘れないでいてほしいんだ」
「もちろん、ちょいちょい会いに行くから。ロサンゼルスなんて、家族でしょっちゅう行ってたからね。近い近い」
おぉ、流石は伊勢嶋家。ちょっと熱海に行ってきます、くらいの勢いで言い切ったぞ。実際、子供の頃から海外旅行なんて慣れたもんらしいからね…。重ねて、彼氏が金持ちで本当に良かった。そして、嬉しかった。広い世界よりも何よりも、目の前の雪兎くんに認められたって事が本当に嬉しかったんだ。
「なぁに、りっくん…泣いてるの?大きな図体して、まだまだお子様だなぁ」
「泣いてねぇっ」
そうして二人、どちらからともなく手を繋いで…。雪の降る、イヴの町を彷徨い歩いた。雪兎くんの言う通り、今日はおごそかな夜。たまにはこうして、エロとか抜きなのも悪くないんじゃないかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます