待ち望んだスローライフ
「キレイで流れの穏やかな川だな、うーん水の流れる音が気持ちいい!」
目の前を流れる川を前に、僕は喜びの声をあげていた。
たまたまエブリバーガーを通りがかっただけという旅商人のオザムから、ファインは100頭+2頭ぶんのハイオークの代金として、キャンプに使う道具や生活用品をたんまりいただいたのだ。
あとはスローライフと言えば「農業」ということでファインは農業に使う道具や野菜の種なんかをあるだけもらって、午後になるまで農作業にいそしんでいた。
土作りや肥料に使う葉っぱなんかは「カレハ・ザイ」のおかげで大量に手に入る。僕のスローライフの農業部門は、実に順調だ!!
ファインは囲いの中で土を起こして種をまいて、そう言えば水が無いな?という事に気が付いて、今はエブリバーガー領を流れる川にやってきたのだ。
・
・
・
「水をとりに来たけど……せっかくきた河原だし、魚釣りなんかしてもいいかもなあ。スローライフって言ったら、やっぱり釣りだもんね」
うーん、でも釣り道具がないぞ……どうしよう。
オザムさんからは、釣りの道具まではもらってなかったな……。
僕は水を汲みにきた河原で、バケツしか持っていないことに絶望を感じていた。
なんてことだ、あまりにも迂闊だった。
しかし、こういう時こそ考えの転換が必要なのだ。
あれが無い、これが無いという文句は、工夫が足りない時に出る者だ。
なので落ち着いて何をすべきか考える。
そう、河原での理想的なスローライフとは何か?
河原での理想的なスローライフ、つまり川岸で焚火を囲んでいて、そこに川魚が串に刺さって置いてあればいい。うむ、実にシンプルなことだ。
釣りをするのには、釣竿が必要だ。これは当然だ。
釣竿がないのに釣りをすることはできない。
しかし先ほど思い浮かべた理想のスローライフに釣竿はない。
そう、スローライフに魚は必須だが、釣竿は要素として必須ではないのだ。
うんうん、よくできたぞファイン。
我ながら冷静で的確な判断だ。
つまり、どうにかして河原で魚を獲ればいいわけだ。
せっかくなのでスローライフらしく、NBC兵器魔法で魚を獲るとしよう。
そうだ、たまにはB兵器も使って見るか。
C兵器魔法で時間をかけずに魚をとるのもいいけど、せっかくだ、釣りっぽく時間をかけるのもスローライフっぽくていいじゃないか。
僕はB兵器魔法から「ボーツリヌス」を選んで川面に叩き込む。
「はぁぁぁぁ!!ボボボーボーボーボボ!!!」
B兵器魔法は威力はともかく時間がかかる。川面ともなればなおさらだ。
これだけ食らわせば、明日には大量の魚が打ち上がるだろう。
……いや、それはさすがに遅いな。
それだと今日食べるものが無いじゃないか。
そう言えば、川にある石に大きな石をぶつけて魚をとる「石打ち」なんていう漁の仕方を聞いたことがあったな。そうだ!それを試してみよう!
早速N兵器魔法を……おや、また新しいのが増えている。
ふぅん、「トーフゥ」か、妙な名前だな?なんか雰囲気が違う。
よし、これを早速試してみよう。
といっても、どうにもN兵器魔法と言うのは違いが分かりづらいんだけどね。
正直な話、すごい光と爆発以外、何が違うのかよくわからない。
きっとよく見ると細かいところは違うのだろうけど、使っている僕でさえ、どれも同じ魔法に見える。まあそれを気にしてもしょうがない。
「いけっ!『トーフゥ』!!」
カッ!っと閃光が放たれ、衝撃波と熱球が川面を干上がらせた後、荒れ狂う熱波が周囲を襲う。「カレハ・ザイ」の効果で丸裸になった木は一瞬で蒸発し、石は表面が泡立ちガラスのようにキラキラと光った。
トーフゥでの石打ち漁の効果は絶大だ!!
目の前にあった穏やかな流れの川の上に、キラキラとヒスイ色のうろこを持つ、巨大ウナギが浮いていた。
そう言えば地図に何か書いてあったな。
なるほど、これが地図に描いてあった、エブリバーガー領名産のウナギか。
うん、これだけ大きければ、干したり干物なんかして、名産品にできるかも!
僕は喜び勇んでさらに何発もの「トーフゥ」を放った。
・
・
・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます