????サイド

~どこか遠い、自由と平和を愛する(笑)国で~


 ダークブルーのダブルのスーツを着た白髪の男は、机の後ろに立ち上がり、窓から部屋の外を眺めていた。彼はこの国の大統領だ。


 彼は昨日に信じがたい報告を受け、その真偽の調査を命じた。

 そして今はその調査結果を待っているところなのだ。


 部屋の静寂を破るように、コンコンと部屋のドアが叩かれた。

 大統領が「入れ」と短い言葉を発すると、部屋のドアを開いて、ダークグリーンの軍服を着た男が入ってきた。


 彼は大統領に深く一礼をすると、手元の紙を読み上げて報告を始めた。


「閣下、スパイからの報告です。北夜鮮のテッポードン消失、ロチアがイクラ・イナ国境に配置した『聖なる核兵器』の消失は事実のようです」


「にわかには信じられんな……」


「ですが、さらに指示難い報告も入って来ています。内戦中のチリアに対して化学兵器「サリン」を提供していたイルンの化学兵器工場から――」


「まさか、消えたのか?」


「はい、そのまさかです」


「神の御加護か、悪魔の業か……世界から大量破壊兵器が次々と消えているな。どこかのシンジケートが入手しているという可能性は?」


「あり得ません。『テッポードン』も『聖なる核兵器』も、国の威信をかけて作られ、管理されている大量破壊兵器です。ひとつの国ならまだしも、複数の国を相手取ってそれを行うなど不可能です」


「彼らは我々の陰謀だと思っているのではないか?」


「思っているかもしれませんが、表立って行動には出ないでしょう。危険な兵器を管理出来ていない自分たちの無能をさらけ出すだけです」


「ふむ……神の御業としか思えんな。ならず者国家の兵器が――」


「閣下、それは違います」


「なんだと?」


「我が国の……大陸間弾道兵器、『ミニットマン』もいくつか消失しています」


「な、何だと……?それではこれは、世界的現象というわけか?」


「そうとしか思えません。人類を何度滅ぼしてもお釣りがくる数の大量破壊兵器。それがどんどん、どこかへ消えているのです。」


「一体何が起きている?まるで人類の争いを止めようとする、神の御業ではないか。主よ……」


★★★


「ねーニャルー、こんなことになってるみたいだけど、なーんでワザワザつなげてこんなことしてんの?」


背にコウモリのような羽をもち、目というよりは何かの宝石のような目を持つ女性がそこに居た。


 彼女は退屈そうなものを見るように、狭間で起きていることを見据え、触手のような巻き髪をいじってかたわらの不定形のかおを持つ存在に話しかけた。


「んー?だってほら、ポンッとはじけたら全部終わる戦争なんてつまんないじゃん。英雄の無い戦争はロマンがないよ。マイも人間無くなったら嫌っしょ」


「まあそうだけど。でも何で『つなげた』の?何とか兵器をどっかに飛ばすなら、さっとやれるじゃん」


「だって楽しくないじゃん。個人があれだけの力を手に入れて、息を吐くだけで使える様になったらどう使うのか、興味あるじゃん?」


「あー、あの子の認識いじったのはそういう?」


「そうそう、ちょっと早回しにはなったけど~あっちも順調に消化中」


「あっちは全部ダメになっちゃうんじゃないの?」


「それならそれで眷属の巣にしちゃえばいいし。もともと同じようなワチャワチャしかしなくて、つまんなかったんだよね。だからこれは……展開のテコ入れ!」


「ニャルは我が従兄弟いとこながら真面目だねー」


「でしょ?もっと褒めてもいいんだよ?っても全部ついさっき考えたんだけど」


「雑ぅ!」


「そんなもんでいいんだよー!どうせ裏も表も見るまではわからないんだから。さて、こっからどう動くのか、見ていこうよ、マイノグーラ」

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