途方にくれる
「追放、されちゃったなー……」
勇者パーティを追放された。僕はそれがショックで、道端に仰向けに寝て、なにをするでもなく、暗黒魔大陸特有の、ムラサキ色や緑色をした、カラフルな雲が空を流れるのを見ていた。
僕は教会で神様からスキルをもらった時の事を思い出した。
そう、あれは村で生まれた子供が数えて10歳になったとき、教会に行くと、『スキル』という神さまからの贈り物がもらえるのだ。
僕の前の子は何をもらったんだっけ?たしか、「原始共産主義」とか、「主体思想」とか、ちょっと難しい名前のスキルをもらってたっけ。
神様はたまにそう言った感じの、レアなスキルをくれる。
「剣術」とか、「鍛冶」とか「裁縫」みたいなわかりやすいスキルが大多数だ。
でもごくまれに、「~~主義」とか「~思想」みたいなスキルがもらえる。
でもそういうレアなスキルは、大体使い方が難しいので、役に立たないと思われがちだ。
僕の【NBC兵器魔法】も、最初はそう思われていた。
魔法という名前が付いているのに、普通の魔法と名前も体系も全然違ったのだ。
村に居た魔法の先生も匙を投げるくらいには意味不明だった。
なので僕のスキルは、ハズレスキルだなんて思われていた。
でも王都の魔法の研究所に行って、あれこれ魔法研究者というひとたちに使い方を教わって、ようやく使い方がわかったのだ。その場所は何故かその後、無くなっちゃったけど……。
ともかく、ぼくの魔法は、一般的な魔法とは違う、凄い威力を発揮するものばかりだったのだ。
あまりにも、威力が高すぎるのだ。「テッポードン」ではかまどに火をつけることができない。
なので、勇者パーティで火を起こすのは、アレスの役目だった。
いや、他にもいろいろアレスの役目だった気もするけど……。
僕は初めて「テッポードン」を使った日の事を思い出した。
あの時はまだ子供でそれほど魔力が無かったから、精々村ひとつを包むくらいの範囲だった。
川で練習すると、鳥や魚がいっぱい浮いてきたものだった。
あっそうだ。
お魚がや鳥がたくさん獲れるなら、スローライフってやつをやってみてもいいんじゃないかな?
網を使う漁師さんでも、流石に川一杯浮いた魚を取ることはできないだろう。
鳥だってそうだ。ハンターも小山みたいな鳥を集めることはできない。
とくにテッポードンは撃った後も何かの効果がその場に残って、動物が倒れてたりする。
きっとあの魔法は罠猟としても使えるはずだ。
僕の魔法は全てをチリにしたりするだけじゃない。
きっと使い方次第で、もっといろんな発展があるはずだ。
なんて名案を思い付いてしまったんだろう。
勇者パーティに入って戦うだけが人生じゃない。別の道だってあるはずだ。
特に僕はまだ20になったばかりで、これからの人生はまだまだ長いんだ。
「うん、スローライフ。いいじゃないか!」
僕は意を決して立ち上がった。
どこかの田舎に行って、スローライフを始めよう。
僕はひとり暗黒魔大陸を後にして、人里に帰ることにした。
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