第7話 老ゴブリンの集落に招待されるおっさん冒険者

 老ゴブリンに招待された集落は、町といってもいいほどの規模であった。

 建物は綺麗に区画整理され建設されており、人通り、いや魔物の数が多い。


 広場に集められた魔物達はオーガやオークをはじめとして、ミノタウロスやコカトリス、ドラゴン。吸血鬼など多種多様。

 冒険者が束になり戦ったとしても、確実に討伐できるとはいえないレベルの危険な魔物達ばかりだった。


 その魔物達をまとめているのが、ディアが出会った老ゴブリンだった。


「皆の者、ワシが病を患っておるのはしっておるだろう。ようやく今日、ワシの苦しみを開放してくれるお方が現れた。この神官様が全てのワシの罪を背負い、ワシを開放してくださる」


 魔物達が涙を流しながら老ゴブリンへと跪く。


「さぁ、こちらへ」

 ディアは手招きされ、老ゴブリンの傍へと移動する。

 ディアは周りの魔物達の姿に目をやると、どれも複雑な表情を浮かべて、老ゴブリンの話を聞いていた。


「これは村の名工、ダークドワーフが作った一振りで防御無効のナイフじゃ。これでワシの核をつけば赤子でもワシを殺せる」

 

「村長、それは長の証……!」

「まさか、次の長は人間に……!?」


「さぁ、ワシを速く殺し」

 老ゴブリンは言い切る前に吐血し倒れた。ディアは軽く神官職の解析魔法を使い、老ゴブリンのステータスを確認する。

 ヒールで回復できるのは怪我のみ。病の末期には効果がない。

 魔物にも回復魔法を使える者は居る。彼らが動かないというのは、もう回復魔法をかけても無駄だという事だろう。


 「早く楽にしてやってください」

 老ゴブリンの周りの魔物達がそう、ディアに圧をかける。


「……麻痺魔法」

 ディアは老ゴブリンがせめて苦しまないように、痛みがなくなる麻痺の魔法をかけ。老ゴブリンは穏やかな顔になり、頷く。

 ディアは逆手に持ったナイフをゴブリンの胸にそっと振り下ろした。


 ありがとう……。

 そういって老ゴブリンは消えていった。


 消えていく老ゴブリンの身体に、ディアに流れ込んでくる大量の経験値。

『レベルアップ』

『レベルアップ』

 レベルアップにより、ディアはいろいろなスキルを取得していく。

 レベルアップにより、ディアのステータスが底上げされていく。


 基本的に取得できる経験値は強さによる。


 人とゴリラが殴り合えばどちらが強いか。

 基本的にゴリラの方が強い。

 大きな身体、強い力、敏捷で瞬発力のある筋肉。どれも人間にはないものだ。


 群れからはぐれ、ゴリラの中でも最弱と皆からバカにされるゴリラと人間の冒険者が戦っても基本的に勝つのはゴリラだ。

 ゆえに人間は経験値が低く、ゴリラは経験値が高い。


 だが、戦う相手が毎日訓練をし続けた、大きな体躯の格闘家なら。

 国で一番剣の扱いにたけた剣士がゴリラと戦ったら。

 

 彼らはゴリラよりも経験値が多い事になる。


 基本的には、ゴブリンの経験値は低い。

 だが長く生き抜き、多くの魔物を統率してきた老ゴブリンの経験値はとんでもなく高くなっていたのだろう。

 老ゴブリンの傍にいた吸血鬼の男性が集まった魔物達に声を張り上げる。

「リブン様の魂は開放された!これより、我ら一同は長の剣を持つディア様に従う。異議があるものはいるか?」

「リブン様が次の長を選んだのだ、異論はない」


 リブンって名前だったんだ、老ゴブリンさん。

 そんな事を思いながら、ディアは魔物達の集団を眺めた。

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