第26話
────黒暗堂から飛び出し、目指す場所へと駆ける。
十九時を回ったからなのかいつの間にか陽は落ち、、暗くなっていた。
空が曇っているせいかやけに暗く感じる。
目的の場所まで一時間もかからない。
けれど立ち止まらずに走り続けることはできるだろうか?
思考しつつも身体を動かすことは止めない。
僕が行動に出たのは約三分ほど前。
そのさらに前、行動に移すきっかけが起こった。
こんなことが急に起こるなんて想像してなかったし、事態は簡単に変わるということを思い知らされた。
けれどさすがにこれはあまりにも唐突すぎる。
とにかくこの状況の全体像を掴まなければ話にならない。
まずきっかけからだ。
─────いつの間にか握っていた携帯が振動し誰かからの着信。
携帯を開くと画面には柊の文字。
僕は思わず刹那の方を見てしまう。
刹那はただ笑っているだけ。
通話ボタンを押し、受話口に耳を当てる。
「もしもし…」
「──────」
「もしもし?」返答がない。
いたずら電話か?
けれど柊はそういうことをするような子じゃない。
「もしも…」
「ゆ…、き…、ん」
断片的だけれど柊の声が聞こえた。
「もしもし、柊か?」
「ゆう…さ…、た…て」
電波が悪いのかたびたびノイズが走り、聞き取れない。
「柊、どうした?」
「ゆ……さ……たす……」
結城と言おうとしているのは聞き取れるがその後が聞きとれない。
「ゆう…ん、たす…」
「柊、ごめん。聞き取れない」
「ゆ……きさ…た…て」
またノイズが入る。
僕は一回、携帯を耳から離し、画面を確認する。
携帯電話は通常に作動していた。
それに不思議なことに電波を示す、アンテナのアイコンは良好に三本たっている。
普通ならちゃんと聞こえるはずだ。
機械に異常があるわけでもなく環境にも異常がない。
なぜ……?一瞬、ノイズが止まり、はっきりと声が聞こえた。
「結城さん、助けて…」
その声は、なんとか絞りだしたかのように小さかった。
そしてブッという音とともに通話は終了した。
「くそっ…、切れた」
僕は悪態をつくが意味がない。
助けてとはどういうことなのだろうか?
僕が考えるまでもなく柊はなんらかしらに巻き込まれているということは明確だ。
しかし、巻き込まれ場所を聞き出せなければ何も意味がない。
どうする?
柊とあった場所を考えてみれば出てくるかもしれない。
けれど出会ってまだ数回だ。
場所は限られるはず。
けどどこに行けば?
「ファリス女子学園よぉ」
思考し、焦る僕に刹那は間延びした声で言った。
意外な答えだと僕は思った。
けどなんでそう言い切れるのだろうか?
「運命だからよぉ」
「運命……?」
よく刹那が口にする言葉。
一体、どういう意味なのだろう?
「結城は納得しないでしょうけどね」
刹那は妖しく笑う。
「彼女も運命の歯車の一部よぉ。だから行きなさい。助けるんでしょぉ」
───この数十秒後、僕は走り出していた。そして現在に至る。
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