第13話

柊稔は実にシャイな女の子だ。いや、シャイというには遠すぎるようで近い感じであって人見知りと呼んだほうが、いちばんいいのかもしれない。五段階のレベルで言えば六段階目だ。すでに五段階じゃないな。それは冗談として、彼女の人見知り度はとにかく度を超えているのだ。確かに僕も人見知りをするほうだからなんとなく知らない人に話しかけられたら萎縮してしまうのもわかる。しかし柊稔は知らない人に話しかけられたら百メートル走を九秒台で走れるんじゃないかと思うほどの駆け足の速さで逃げてしまうくらいだ。それだけではない。人に顔を見られたくないために前髪を伸ばしている。どんだけ人見知りが激しいんだよと突っ込みをいれたくなるほどだ。だけどそれには当然、理由がある。そしてそれを知ったとき彼女が心に抱えるものもまた僕の予想を越えていたのは確かだ。────柊は中学二年生。

ファリス女子学園の生徒。

彼女の通うファリス女子学園はこのあたりでは中学、高校と一貫のエレベーター式をとっている私立の女子校でセレブと呼ばれる人種が多く通うことで有名だ。

しかし、そんな有名な学校を僕は柊に関わるまでうろ覚えでしかなかった。

けどいつもクラスメイトの名前を間違えるほど記憶力の悪い僕がうろ覚えするとはかなり耳に入っているのは確かか……。

とにかく柊と関わるきっかけになったのは四月の第二週目の事件から一ヶ月くらいたった五月の二週目のある日。

とある事情で立ち寄った神社で初めて柊に出会った。

そのときは神社の境内で寝ていた彼女を心配して声をかけたら会話もなくびっくりされ逃げられるというよくわからない状況だった。

そんな意味のわからない出会いをして、どうして関わることになったのか。

それは彼女が落とした手帳に入っていたものが僕と柊を運命的に引き寄せた。

引き寄せたと言ってもロマンチックな関係、状況じゃなく最悪な状況にへと。

今回の事件の結末はハッピーエンドではない。

いやバットエンドとも言えない。

今回の事件の結末をどう捉えるかは柊実自身だろう。

上手く話すことは出来ないが話すとしよう柊稔の物語を。

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