第11話

「で、結城くんはそのままツンちゃんとイチャイチャしたと」

「なんでそんな流れになるんですか!?」カラカラと笑うモッチーに僕は思わずお笑い芸人のように素早く突っ込んでしまう。神社での出来事から夜があけてまだ一日もたっていない翌日の夕方十六時頃、放課後。ここは学校。モッチーがよくいる部室に僕はいた。記憶力の悪い僕は部活の名前を覚えていないが部屋だけは覚えていた。この部屋はもともと生徒会室だったらしいが僕が入学する以前の話だからどうでもいいが。部室にはモッチーと僕、そして同学年で一年の白石優がいた。白石優はいつもパソコンに何かを打ち続けていてその上、無口で何を考えているのか読めない女の子だ。何処のクラスに所属しているのか知らないが放課後の部室にいるのはしっていた。

「冗談だよ。どうだった、結界の方は?」

「わかりませんでした」結局、結界の件はわからなかった。黒羽が気を失った後、僕も一時間ほど気を失っていた。ようは二人で神社の境内で雑魚寝をしたということ。起きたとき僕に襲われそうになったと勘違いした黒羽に顔面を平手打ちされ、もう一度気絶したが。僕と黒羽は意識が戻るとすぐに神社から離れ、話し合った結果、もう一度、情報を整理してから出直すことにした。

「そうかい。それは残念だったね」モッチーは窓の外をみながらだるそうに言った。「それにしてもツンちゃんはなんで神社に来たんだい?」

「ああ、それは黒羽の散歩コースだったみたいです」

「散歩コース?」

「そうです」モッチーはよくわからないという顔をしたが僕は気にしない。あの後、黒羽に聴くと『夜はよく散歩するの。結城くんは知ってるとおもうけど私はあの場所にいたくないのよ。あそこにいると考えすぎてしまって気持ちが整理できないの。多分、現実逃避をしてるのかもしれないけれどあの場所にいるより外に出て何も考えないほうが楽だから』とのことだ。まったく黒羽らしい答えだと思う。自分の住んでいる場所をあの場所と呼ぶのだ。彼女のストレスの一部であり一ヶ月前の出来事の原因でもある。今回も遠回しに関係してくるとは。

「ふーん。偶然とでも言ったほうがいいかい?いや、偶然にしちゃタイミングが出来上がりすぎて変だけど」モッチーは皮肉っぽいことを言うと鼻で笑う。

「そうですね……」

「とにかくそのデビルスターだっけ?そんなふざけた名前のものが原因なんだよね?」

「断言できるわけじゃないですけど、多分そうです」

「断言できないって、どういうことだい?」モッチーはニヤニヤといやらしく何かを探るように笑う。「もし黒羽がおかしくなる原因の魔力があったとしたら僕は具体的ではないですけど何となく違いに気付くんです。けれど魔法陣が書かれた紙を最初、手にとってみても一切、何も感じられなかったんです。ということは僕の勘違いで他に原因がある可能性だって考えられます。だから断言できないんです」

「自信がないんじゃなくて確信できる証拠がないわけだ。確かにこれはめんどうな一件だね」モッチーはカラカラと笑った。

「部外者の僕が口を挟むのはなんだけど魔法陣が書かれた紙を持っていた女の子はなんなんだい?」

「それは僕も知りたいくらいですよ。起こしてあげたらびっくりして逃げちゃうし……」「神社の裏手で居眠りするなんて年端のいかない中学生の女の子がすることじゃないね。ワケありって感じがするけどね。でもデビルスターが書かれた紙を作ったのはその子じゃないだろうね、多分」モッチーは笑う。この表情は何度か見たことがある。笑っているのだけれど何かを企むような笑い方で僕はこの表情がなんとなく苦手だ。

「そんな不幸で可哀想な結城くんと変わってあげたいけれどあいにく魔法なんてオカルト染みた非科学的な力は僕にはないからねぇ」彼はため息をつきいつもの雰囲気になりわざとらしく両手を広げやれやれといわんばかりのようすで首を横にふりながら言った。

「まぁ、一ヶ月前みたいに酷くなければいいですよ」

「そうかい。僕は結城くんに必要と思う情報があったらいつでも伝えるよ」

「了解しました。協力に感謝します」面白がりながら言う彼に僕はさらりという。

「嬉しくなさそうだね?」

「そうですか?」そんな会話するなか白石のパソコンのキーボードを打つカタカタという一定のリズムで部屋の中に鳴り響いていた。

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