第7話
ふと頭に黒羽の顔が浮かぶ。最近、彼女はよく笑うようになった。一ヶ月前、彼女はあまり笑わなかった。なんといえばいいのだろう。肩に力が入っているとでもいえばいいのかピリピリしているというか、今まで自然と思っていた彼女の雰囲気にそんな違和感を覚えた。多分、事件前はもっとピリピリしていたと感じたかもしれない。僕はその理由を知っている。祖母の死、父親との距離、伯父と伯母との関係などの抱えきれないほどの思いと感情を今にも吐き出したかったのだろう。
だからこそ、奴に───悪魔に頼ったのだろう。自らの願いを叶える為、こえられない痛みを消す為に。たとえそれが犠牲を払うものでも。彼女は心の底から願ったのだ。
『私の想いを心から受けとめてくれる人が欲しい』と。
多分、そんなのは誰だって願うものだろうし、特別な願いではない。だけど人の温もり、真実なる想いを彼女は渇望した。その願いこそ彼女にとっては特別であり、一番大切な感情だったわけで。しかし、その願いは叶ったと考えたほうがいいのだろうか?まぁ、こんなことを考えるだけ無駄なんだろう。
僕は一息つき、くだらない思考を強制的に終わらせ立ち上がる。一旦、家に帰って計画を練り変えて、ここに黒羽を連れてきてみよう。彼女がいれば一番、話が早い気がする。僕だけではやはり意味がない……。彼女の力も──
「痛っ……!?」突然、首筋に冷たくて小さな突き刺すような痛みが伝わった。すると僕の後ろに知っている誰かの気配がした。僕は後ろを振り替える。すると神社の入り口つまりは鳥居の下に誰かがたっていた。僕は目を凝らし、街灯の僅かな光にさらされた人物の顔をみる。少しうつ向いて顔全体は見えないが数秒前まで頭の中で出てきた人物、黒羽だとわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます